“クマ出没の町”相次ぐ 目の前に遭遇…「8頭同時侵入」も カメラが捉えた一部始終

スーパーJチャンネル

[2023/11/04 11:00]

5

 「毎日来る」。クマの出没が相次ぐ町を緊急取材しました。取材班の5メートル先にもクマが現れました。緊迫する遭遇の一部始終を追いました。相次ぐ出没に騒然とする町の日常を追跡しました。

■警察官も出動 騒然とする住宅街でのクマ出没

ハンターがクマの目撃地へ向かう

 岩手県花巻市で、ベテランハンターにとっても経験したことのない事態が起きていまし た。

 花巻市猟友会 藤沼弘文会長:「クマが民家に入ったということで来た。見ての通り、街のど真ん中なんです」

 現場は住宅街にある民家で、隣には病院もあり、危険な状況です。

 地元の猟友会が現場に到着してすぐに撮影した映像によると、体長1メートル以上のクマが民家の柿の木に登っていました。

 警察官も出動し、騒然とする住宅街。

 藤沼会長:「クマがいますから、いないでください。飛び出してきたら、やられるよ」

 ハンターが、クマが目撃された民家の裏庭へ向かいます。警戒しながら、クマを確認しに行くと…。

 藤沼会長:「(Q.見当たらない?)うん。逃げたな。隙間から逃げたんだね。でも、逃げてくれてよかった。居座れば、何とかしなきゃいけないから」

■クマの噛み痕も…被害者男性の証言

左腕の噛み痕 親子グマの襲撃で

 今年、岩手県はクマによる人身被害が深刻で、42人と過去最悪のペースになっています。(11月1日時点)

 番組スタッフも雫石町を走っていたところ、クマに遭遇しました。

 民家の庭先で何かを食べているクマ。すると、遭遇したのは母グマと子グマです。撮影する車内からは、およそ30メートルの距離でした。

 ツキノワグマは、 母グマは子グマを守るため人間を襲う可能性が高く、特に危険と言われています。実際、佐藤誠志さんは今年9月、キノコ採り中に親子グマに襲われました。

 佐藤さん:「これがキバの間隔ですね」

 左腕を噛まれた痕が、今も残っています。

 佐藤さん:「これ(杖)がなかったら終わり。なんの抵抗もできない。3〜5秒くらいでやられる」

■クマによる被害…住民生活の脅威

犬の散歩中にクマと遭遇

 雫石町でも、今年4件の人身被害が発生しています。(11月1日時点)

 クマに遭遇した男性は、犬の散歩中に危険な目に遭いました。

 男性:「散歩してると、いろんな動物に反応して、犬が確認することがあるんですけど、今回もそんな感じかなと様子を見たら、クマだった」

 夕方、いつものように散歩中、突然犬が何かに反応しました。しきりに薮の中を気にしている様子の秋田犬。

 次の瞬間、突然、やぶの中から攻撃態勢で飛び出してきた体長1メートルほどのクマ。男性は必死に大声を出し威嚇すると、クマはそのままいなくなり、九死に一生を得ました。

 さらに別の日も、犬を警戒し、木の上に登ったクマ。今までもクマに遭遇したことはありますが、今年は特に多いと男性はいいます。

■猟友会のパトロールでクマを発見

クマによる被害が広まる理由 専門家に聞く

 相次ぐクマの人身被害により、住民の生活も脅かされていました。

 雫石町の隣に位置する滝沢市に住んでいる白石彩矢香さんを取材しました。小学6年生の娘・詩音さんは、およそ4キロ離れた学校まで自転車で通っています。

 白石さん:「今年すごくクマが多くて、やっぱり危ないかなということで、できるだけ一緒に行っています」

 朝と夕方の登下校時、万が一の事態に備え、保護者が持ち回りで付いていっているといいます。

 今年、クマによる被害が拡大している理由を専門家は次のように指摘しました。

 岩手大学農学部 森林科学科 山内貴義准教授:「ブナというドングリが不作になって低い標高にクマの行動域がシフトしている。クマの行動自体が昔よりもかなり大胆になって(目撃・被害)件数が増えていっているのでは」

 人口の減少や高齢化により、山と人里の境界線が後退したことにより、人に慣れたクマが年々増えているといいます。

 現場でクマと対峙(たいじ)してきた猟友会の藤沼会長は、別の要因を指摘しました。

 藤沼会長:「イノシシの異常発生ですよ。イノシシが(餌を)全部掘って食べちゃう。クマの餌が全くない」

 藤沼会長は、イノシシが大量に発生していることにより、クマの餌(えさ)となるドングリやクリなどを食べ尽くしていることも要因の一つだといいます。

 取材中、何者かが食べ散らかした大量のクリを発見しました。定点カメラを仕掛けてみると、クマは映っていませんでしたが、4頭のイノシシがクリを食べていました。

 猟友会は、朝と夕方にパトロールを実施しています。すると、一頭のクマを発見しました。

 雫石町猟友会 新里幹夫さん:「あれ、クマじゃねえか」

 まだ日の高い午後4時ごろ、体長およそ1メートルのクマが田んぼの横にあるクリの実を食べていました。10分ほどとどまり、しばらくすると、山の中に消えていきました。

■被害を追跡 取材班が牛舎にカメラ設置

100キロの巨大クマとの遭遇

 被害は、人だけではありません。肉牛を育てている吉澤貞男さんに聞きました。

 吉澤さん:「今年は6月中旬から毎日です」「(Q.毎日ですか?)毎日です。1日も欠かさず」「(Q.最近見たのはいつ?)さっき」

 毎日やって来るというクマはこの時は6頭でしたが、最大でなんと8頭ものクマがいたこともあるといいます。

 クマのお目当ては、牛の餌となる飼料です。クマが好むハチミツや黒砂糖なども混ぜているため、味を覚えて毎年やってくるといいます。

 吉澤さん:「窓ガラスを割られたりするのであれば、餌を食べておとなしく帰ってもらう方が一番安上がり」

 牛を守るため、侵入を防ぐ対策を何度講じても壊されてしまい、費用にも限界があるといいます。

 取材班は被害を探るため、牛舎に定点カメラを設置しました。

 作業を終え車に乗り込んだ直後の午後5時すぎ、クマが出現しました。ネコの餌を横取りした後、牛の目の前で餌を食べるクマ。かなり大きいことが分かります。

 さらに、なんと2頭同時に牛舎に侵入しました。結局、クマは牛舎に6時間以上も居座わり、牛の餌をむさぼっていました。

 別の日、吉澤さんの仕事を撮影していると、その瞬間に遭遇しました。

 なんと目の前に、牛の餌を堂々と食べている大きなクマの後ろ姿。毎日のように遭遇しているだけあって、動じる様子のない吉澤さんですが、クマとの距離はおよそ5メートルです。

 すると、100キロはあろうかという大きなクマが一瞬、こちらを威嚇しましたが、そのまま去っていきました。

 雫石町でも、この牛舎の状況を把握しています。ただ、この地域ではクマによる人身被害が確認されていないため、積極的な駆除は行っていないといいます。町では、今後も定期的に現場を視察する方針です。

  • ハンターがクマの目撃地へ向かう
  • 左腕の噛み痕 親子グマの襲撃で
  • 犬の散歩中にクマと遭遇
  • クマによる被害が広まる理由 専門家に聞く
  • 100キロの巨大クマとの遭遇

こちらも読まれています