【日航機炎上】元CA語る…乗客の命救った「90秒ルール」
スーパーJチャンネル
[2024/01/05 20:33]
日本航空と海上保安庁の機体が衝突した事故。乗客の命を救った裏には、「90秒ルール」と呼ばれる緻密な乗務員の訓練があったことがわかりました。
■ 日航機炎上 元CA語る
乗客乗員379人が無事脱出した、日本航空516便。それは“奇跡”とも評されていますが、元日本航空の客室乗務員と機長が語った「脱出のカギ」は“奇跡”ではありませんでした。
「決して奇跡ではない。『私は何をすべきか』とCA一人一人が考えたことの成果が出た」
客室乗務員として30年間勤務し、チーフも務めた江上いずみさんは、脱出のカギとして3点をあげます。
1つ目は「パニックコントロール」です。
事故発生時にはー
「荷物は持たないで!大丈夫!落ち着いて!」
客室乗務員が強い口調で呼びかけました。
「乗客に自信を持って普段の勉強・訓練していることが、いかせることを自信を持ってパニックコントロールして『大丈夫、私たちを信じてください』と心づもりで声をかけた」
乗客がパニック状態になるのを防ぎながら誘導する声掛けは、訓練によるものだといいます。
「L1OK」「こっちへ来て!急いで!」
客室乗務員が年に1度、必ず参加する訓練。
「教官にあたる人がチェックをして、大きな声が出ているか、適切な指示が出来ているかをチェック」
筆記と実技の両方に合格しなければ即、乗務停止となります。
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■乗客の命救った「90秒ルール」■乗客の命救った「90秒ルール」
「機体が完全に停止したら、CAはベルトを外して、すぐに乗客のパニックコントロール」
「『大丈夫落ち着いて』『Stay calm!』日本語と英語で言っていく。乗客のパニックコントロールをすると同時に窓の外を見て、火が起きていないか、障害物がないか、海に不時着していないか、状況判断をほぼ同時に始める」
念頭に置くのは「90秒ルール」と呼ばれるものです。
「何か緊急事態が起きました。ドアが開いて脱出するまでに、90秒で脱出することができる」
「『90秒脱出』は繰り返し頭の中に入っていく言葉」
「それに向けて勢いよく滑り台を滑っていけるように。『ジャンプ!ジャンプ!脱出!』『こっちへ来て!ジャンプ!』と声掛け」
こうした訓練が今回も、いかされたといいます。
■ 乗客救った非常時の“選択”
さらに、2つ目のカギは「非常扉を開く判断」。
窓の外にオレンジの煙が見える緊迫した状況の中、8カ所の非常扉のうち、開けられたのは3カ所。
機長と連絡がつかなかった最後部の客室乗務員は、自らの判断で、非常扉を開放しました。
「外を見た時に火が上がっていることで『このドアが使えない』って判断をしたら『何とかならないか』ではなくて『ここは絶対、使えない』と即座に判断して前後に振り分けた」
緊急時に備え「担当の非常扉」を持つ客室乗務員らが、迅速な判断を下したといいます。
「自分は、このドアの担当なんだ。何かあった時にはこういうことをしようと意識を持って乗っていく」
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■ 逆らうことなく…荷物置いた乗客■ 逆らうことなく…荷物置いた乗客
そして、3つ目が「荷物を置いた乗客」でした。
「荷物、出すな!」
客室乗務員
「荷物、持たないで!」
乗客も、客室乗務員も必死に呼びかけていました。
脱出時の映像でも、荷物を持っている人の姿は見えません。
「(荷物を)持って逃げたいという方は、たくさんいらっしゃると思いますが、『荷物を持たないで』と言った客室乗務員の声掛けに逆らうことなく荷物を持たないで置いたまま。自分の体だけが生きていればいいと脱出してくださった乗客の協力による。そういったことが、今回は大きかったんじゃないか」
3つのカギの背景にあるのは、“奇跡”ではなく“積み重ね”だといいます。
「奇跡という言葉がイギリスの新聞でも言われているが、私はそうは思わない。普段の積み重ね、普段の心づもり。乗客に対して私たちはどうあるべきか、普段ずっと訓練していることをいかせた成果。決して奇跡ではない」
■ 前例ない中で…完璧な“着陸”
一方、コックピットでは何が“カギ”となったのでしょうか。元日本航空機長の小林宏之さんがあげたのは、「滑走路での停止」でした。
「今回の避難が成功した一番の重要なところは、滑走路で停止できたこと」
「緊急避難は機長が完全に飛行機を停止して脱出を決断するので、停止できなかったりそれたり海に落ちていたら避難はできないので」
現場を上空から見てみると、すぐそばには海がー
衝突の衝撃で、海に落ちる危険性もありました。
「相当難しかったと思う。ただでさえ離陸・着陸の時に、センターレーンをキープして走るのはかなり難しい。色々な状況が悪かったと思うが、その中でしっかりセンターラインをキープして滑走路内で停止させたのは機長の技術だった」