日本初の月面着陸へ!探査機「SLIM」があす未明に挑戦 着陸技術に世界が注目

[2024/01/19 15:00]

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日本初の月面着陸を目指す無人探査機の「SLIM(スリム)」。
JAXAはまず19日夜、SLIMを高度15キロまで降下させ、20日未明に月面着陸に挑戦します。目標地点への誤差を100メートル以内に抑える「ピンポイント着陸」に注目が集まっています。
(テレビ朝日社会部 生田目 剛)

■世界5カ国目の月面着陸 「ピンポイント」なるか 

SLIM着陸後のイメージ
SLIM着陸後のイメージ

無人探査機「SLIM」計画は、JAXAが将来の月惑星探査に必要な着陸技術と小型で軽量な探査機システムの実現を目指すものです。

JAXAによりますと、SLIMは現在、高度150キロの月の円軌道を周回していますが、19日午後10時40分ごろに進路を修正し、高度約15キロまで降下させる予定です。

そして、20日午前0時ごろから最終降下を始め、約20分後、月面着陸に挑戦します。

着陸が成功すれば、日本では初めてで、1966年の旧ソ連とアメリカ、2013年の中国、2023年のインドに続いて世界5カ国目となります。

SLIMは目標着陸地点への誤差を、他国の10分の1以下となる100メートル以内に抑える「ピンポイント着陸」を実証する計画で、月探査をめぐる国際競争が熾烈になるなか、より高い技術が必要となる月面着陸が成功するかどうかに世界中から注目が集まっています。

SLIMは去年9月にH2Aロケット47号機で、種子島宇宙センターから打ち上げられた
SLIMは去年9月にH2Aロケット47号機で、種子島宇宙センターから打ち上げられた

SLIMは去年9月7日にH2Aロケット47号機で、鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられ、12月25日に月を周回する軌道への投入に成功し、月面着陸に向けて段階的に降下していました。

■カギは軌道の“自動修正”と“2段階”での着陸 

高度15キロから約800キロ先の半径100m円内へ(着陸降下開始時)
高度15キロから約800キロ先の半径100m円内へ(着陸降下開始時)
SLIMが日本時間12月25日に撮影した月面
SLIMが日本時間12月25日に撮影した月面

着陸降下を開始する時点でのSLIMの速度は時速約6400キロで、減速しながら目標から100メートル以内を狙って着陸します。

月面への着陸に向けて鍵となるのは、飛行中に撮影した画像を使って軌道を修正する「画像照合航法」と、前後の5本の脚を活用する「2段階着陸」の技術です。

最終降下を始めた後、着陸までの20分間で月面の画像を数回撮影、目印となるクレーターの位置を抽出し、月面の地図データと比較して探査機の現在位置を推定することができます。

また、着陸目的地点は傾斜地となっているため、小型で軽量なSLIMが安全に着陸することが重要となります。

SLIMの動力降下シーケンス
SLIMの動力降下シーケンス
SLIMの垂直降下シーケンス
SLIMの垂直降下シーケンス

これまで着陸シミュレーションなどの検討を重ね、始めに後部の脚で接地した後、機体を前方に回転させて前部の脚でも接地する「2段階着陸」方式が採用されています。脚は月面に接触する際に潰れることで衝撃を吸収することができます。

月には重力があるため、一定の高度以下になると後戻りはできず一発勝負の着陸となります。

着陸成功後、SLIMはいまだ謎が多い月の起源の解明のため、月面の岩石の組成分析を行う予定です。

■「アルテミス計画」…日本人宇宙飛行士が初の月面着陸へ

一方、月への有人着陸を目指す「アルテミス計画」では、少なくとも2人の日本人宇宙飛行士が月面活動に参加する方向で最終調整が進められていて、今回の月面着陸が成功すれば、日本の月面開発に向けた大きな一歩となります。

  • 無人探査機「SLIM」
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  • SLIMが日本時間12月25日に撮影した月面
  • SLIMの動力降下シーケンス
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