壊れたのはほとんどが『非耐震管』 被災者を苦しめる「長期断水」いつまで?
[2024/02/02 16:00]
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「自宅でお風呂もトイレも使えないのが不便。あとは断水だけなんですが」
「子どもは金沢に避難させようと思います。水が出る環境で落ち着いて勉強させたいですから」
能登半島地震から約3週間経って私は被災地に入った。避難者や自宅に戻った住民、子どもを集団避難させる親など、私が取材したすべての人が困っている事として、最初にあげるのが「断水」だった。
石川県によると、1月31日時点で8つの市町で4万戸以上の断水が続いている。輪島市や能登町では仮復旧が2月末から3月末になる見込みだ。珠洲市の遅い地域では4月以降になる可能性がある。なぜ、断水の解消にこれほど時間がかかるのか。原因として見えてきたのは作業環境と地震に弱いタイプの水道管だ。
(テレビ朝日社会部 秋本大輔)
「気の遠くなる作業」総距離は550キロ…時間かかる断水の解消
取材してみると、背景には震度7の激しい揺れで水道管の破損が広範囲になったことや全国から作業員が集まったものの周辺に宿をとれず作業時間を確保できないことなどがあった。
1月22日、ほぼ全域で断水が続く輪島市で、水道管工事をする東京都水道局の作業員を取材した。作業員らは周辺に宿がなく、毎日、金沢市からところどころで土砂崩れや陥没している道路を通って100キロ離れた輪島市に通っていた。担当者は作業の状況をこう説明する。
輪島市では浄水場の復旧は進んでいたが、その水を各家庭に届ける水道管の復旧が追い付いていないのが現実だった。
と作業員が話すように、復旧作業は地道な工程の繰り返しだった。地中にある水道管に水を流して、流れる音を聞いて漏水の有無を確認する。そして漏水が確認されれば穴を掘って水道管を取り換える。
輪島市によれば、確認が必要な水道管の総延長は約550キロメートル。現場では数メートル単位での確認・修繕作業が繰り返されていた。最後に作業員の男性はこう話してくれた。
破損のほとんどが『非耐震管』「4メートルごとにつなぎ目が抜けたり破断」
今回の長期・広範囲の断水では、水道管の老朽化などによる「上下水道の耐震化の遅れ」も問題として浮上した。輪島市で破損した水道管のほとんどは「非耐震管」で経年化でさらに地震に弱くなっていた。
輪島市内では「耐震管」が3割ほど。5割が「非耐震管」で、残り2割が周辺の地盤を勘案すれば耐震性ありと評価できる「耐震適合管」だ。
「耐震管」とは接続部分が伸縮することで鎖のように大きな揺れにも対応できるようになっている水道管だ。これに比べ「非耐震管」は伸縮性に乏しく接続部が抜けやすい。
輪島市下水道局の担当者は「市内の破損のほとんどが非耐震管で4メートルごとに管と管のつなぎ目が抜けたり破断したりする状態」と話す。
一方、地震に強いはずの耐震管でも破断が確認されたという。
市内では現時点で少なくとも2カ所で耐震管の破断が確認された。長さにすると約300メートル。
輪島市の中心部・河井町にある耐震管の損壊現場について、担当者はこう説明する。
「耐震管でも破断してしまうとなると正直戸惑うところ。対策といってもこれ以上の水道管はないですから」
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「耐震管でもダメと言うべきではない」『非耐震』から更新を「耐震管でもダメと言うべきではない」『非耐震』から更新を
耐震管でも破断してしまったことをどう見るか。災害による水道被害に詳しい金沢大学の宮島昌克名誉教授は原因をこう指摘する。
一方で、現在わかっている範囲では、ほとんどの耐震管が損壊を免れているとし、水道管の損壊の対策としては耐震管への更新率を上げることが不可欠であると強調する。