■冬季うつとは
1年を通して最も寒いといわれる時期ですが、今年は3月並みの暖かさとなり、比較的過ごしやすい日が続いています。とはいえ朝の冷え込みの中「起きれない」「外に出たくない」など毎年この季節になると、そう思う人も多いのではないでしょうか。
実は寒さが増す11月から2月ごろにかけて「冬季うつ」になる人が少なくありません。
「冬季うつ」という言葉を聞いてピンとくる人は少ないのではないでしょうか。
「うつ」と聞くと重く受け止める方も多いかもしれませんが、一般的な「うつ病」とはなにが違うのか、専門家に詳しく聞いていきます。
立川院長:「冬季うつ」というのは11月頃から春にかけて発症する季節性感情障害の一種で、日照時間の減少や体質などが発症する要因としてと考えられています。一般的なうつ病と同じように、意欲の低下などの症状があるんですが、「冬季うつ」では一般的なうつ病とは異なる症状が特徴です。
■真逆の症状「過食・過眠」が特徴
立川院長:一般的なうつ病では、食欲不振や不眠などの症状がありますが「冬季うつ」の場合はそれとは真逆の過眠や過食といった特徴があります。そのため毎年この時期になるとやる気が出ないけど、食欲はあるし、眠いたいから「うつ病」じゃないと考える方が多いです。
実際患者さんの中には、「一般的なうつ病と症状が違うから私自身に問題があるんじゃないか」と思い悩む方もいらっしゃいます。
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■何個あてはまる?「冬季うつ」セルフチェック■何個あてはまる?「冬季うつ」セルフチェック
最近2週間、次の項目のどちらかに当てはまる
□常にではないが多くの時間なにも楽しいと思えず、興味がわかない
上記のどちらかに当てはまり、その上、下記に当てはまる項目が多いほど
「冬季うつ」の可能性が高くなります。
すべてに当てはまった方は「冬季うつ」である可能性が非常に高いです。ですが、治療が必要なレベルの方はそこまで多くありません。生活に支障がないようであれば、春になるにつれて症状が軽減していくため、病院を受診するほどではありません。
■対策は「45分間の日光浴」
立川院長:やっぱり「冬季うつ」というのは、日照時間が非常に大切で、午前中に45分間程度の日光を浴びていただくことで病気の予防、治療になります。ですので通勤時に少し歩く時間を増やしていただいたり、普段より早めに家を出て近くの公園で朝食をとってみたり、テレワークの方だとご自宅でカーテンを開けて窓越しに日光を浴びるだけでも効果があります。
■食べ物は「ビタミンB6」を含むもの
立川院長:食べ物としては、うつ状態全般に言えることですが、セロトニンの原料となるトリプトファン、ビタミンB6を多く含む食事を心がける。トリプトファンを多く含む食べ物としては、大豆製品、鶏肉、バナナ、牛乳、チーズ、玄米などがあります。ビタミンB6を多く含む食事として豚肉もいいでしょう。
食べ物に関しては、とりすぎは良くないので、心がける程度がいいかと思います。
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■親から「サボってるだけ」と言われたけれど…■親から「サボってるだけ」と言われたけれど…
立川院長:「冬季うつ」で当院を受診する方は多くなく、ほかの適応障害や摂食障害など別の要因で来院された方が「冬季うつ」だったということがあります。
また学生の方など若い患者さんの中には、秋口になると学校に行けなくなる方がいらっしゃいます。そうなったときに親御さんから「サボっているだけじゃないか」「うつなのに食べれているし、寝れているじゃないか」と言われてるケースもあります。
今後「冬季うつ」というものを知っていただくことでそういった状況の患者さんや親御さんに、もしかしたらサボっているわけではなく「冬季うつ」という選択肢があれば、少しでも思い悩む方が減ってくのではないか。
■どう向き合えばいい?
立川院長:例えば、仕事に行けないとか家事が全くできない、もしくは学校に行けないとか、生活に支障をきたす場合は受診をお勧めします。また、1日中ずっと、24時間気持ちが落ち込む場合、あるいは、以前は楽しめたことがまったく楽しめない。この状態が2週間続く場合は、精神科や心療内科に行くことをお勧めします。
思い悩んでしまう方も多いと思いますが、「冬季うつ」は日照時間が増えてくれば自然と良くなっていくものなので、そこまで極端に心配しなくても大丈夫です。