2024年、SNSなどを使った詐欺の被害額は、約1990億円で、過去最悪となりました。単純計算で、1日平均5億円を超える被害です。前の年と比べて、投資詐欺は3倍以上。ロマンス詐欺は2倍以上。特殊詐欺は約1.6倍です。
■「トクリュウ」過去最悪の被害額「ド派手生活」トップ逮捕か
犯行には『トクリュウ』(匿名・流動型犯罪グループ)が、深く関与しているとされています。『トクリュウ』は、闇バイトを使った強盗事件にも関わっています。2024年、闇バイトによる強盗事件は、東京都国分寺市、埼玉県所沢市、横浜市青葉区、千葉県市川市など首都圏で、相次ぎ発生しました。ただ、逮捕者の多くは、末端の実行役でした。
こうした中で、2月18日、逮捕されたのが、斎藤大器容疑者33歳です。
警察によると、斎藤容疑者は、『トクリュウ』のトップとみられています。
「(今回の)指示役トップの逮捕は、『ピラミッドの電源』を引っこ抜いたようなもの」ということです。
斎藤容疑者のものとみられるYouTubeには、派手な暮らしが公開されていました。
公開されていた映像の中には、高級外車、高級腕時計、高級バッグ、などが映っていました。
斎藤容疑者は、リフォーム会社の社長らと共謀して、訪問営業役を、SNSの闇バイトで集めていたとみられます。
SNS上には、
『営業職 勤務地 関西/関東 寮完備 年収1億円可能』
『人生本気で変わります』など書かれていました。
犯行の手口です。
高齢者らの家を訪れ、「屋根が壊れている」などと不安をあおり、工事の契約を結ぶ『点検商法』というものです。
被害総額は、少なくとも2億8000万円と見られています。
この訪問営業役の訪問の後に、リフォーム会社の社長らが登場し契約を結びますが、クーリングオフの説明などを行わなかったとして、『特定商取引法違反の疑い』で逮捕されました。
そして、手書きの“勧誘マニュアル”も押収されました。
ノートの表紙には、『スクリプト(台本)』と書かれています。
「すいません!近くで作業している職人なんですけど、お家の屋根の鉄板が外れかけてるんですけど気付いてますか?」などと声がけする。
『注意喚起』として、
「本当ですか!?非常に危険な状態ですよ!場所教えるので、確認しに来てください」と不安をあおる。
想定問答もありました。
住民が『塗装屋』と答えたら、
「塗装屋は塗る専門。棟板金(むねばんきん)が浮いてても気づかなくて、塗っちゃう」
住民が『大工』と答えたら、
「大工さんは木材の骨組みを作る専門。棟板金をつけるのは別の職人」と話すよう、指示されていました。
こうしたセリフ以外にも、
「次の雨の日や強風はもたないですよ、{苦笑}」というように、感情も指示。
さらに、[間](相手に委ねる)と、“間”も指示していました。
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■「下水管点検」もちかける不審な電話相次ぐ■「下水管点検」もちかける不審な電話相次ぐ
埼玉で起きた道路陥没後に、不審な電話です。
1月28日、埼玉県八潮市で、道路の陥没が起きました。
約30km離れた東京都小金井市で、1月末から、市の職員を装い、下水などの検査をもちかける不審な電話が相次いでいて、市に100件以上の相談が寄せられています。
小金井市によると、市の職員をかたる人物が、
「ご自宅の汚水ますの清掃に立ち会ってほしい」
「マンホール点検をするので、在宅の日時を教えてほしい」といった電話をしてくるといい、小金井市は、市民あてに注意喚起のメールを配信しました。
そして、中国地方でも、一人暮らしの90代の女性の家に下水作業の業者を名乗る男性が、
「下水の点検をしたいのですが、玄関の中、入っていいですか」と訪ねてきました。
女性は怪しく感じて、被害には至りませんでした。
「汚水ますが汚いとか、しどろもどろな感じで、説明があった(と聞いた)」ということです。
■警察官かたる特殊詐欺が急増『劇場型』も 国際電話に注意
警察官をかたる特殊詐欺が急増しています。
「あなたを容疑者としている。極秘の捜査になっている。犯罪グループに口座が使われていたようですが」
というような電話がかかってきます。
警察官を名乗ったのは、宮代祥平容疑者で、沖縄に住む男性に、カンボジアから国際電話をかけ、3000万円以上だまし取った疑いで、逮捕されました。
電話には、『警察署の警察官』『本部の警察官』『検察官』などが登場して、警察無線のやりとりを聞かせるなど、劇場型の手口です。
警察官をかたる特殊詐欺の件数は、2023年は3件でしたが、2024年は806件。
被害額は、約1600万円から、約70億円と437倍になっています。
オレオレ詐欺の被害総額の約64%が、警察官をかたる詐欺です。
警察庁は、国際電話に注意を呼びかけています。
特殊詐欺の犯行に利用された番号は、国際電話が約60%です。
国際電話の番号は、『+××』で始まるので、着信番号に注意してください。
『国際ワン切り詐欺』と呼ばれる、折り返しの電話を狙うものも、継続的に発生しています。
『+81』は日本の番号ですが、知り合いかどうか確認してください。
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■日本人高校生が海外『特殊詐欺拠点』で詐欺に加担も■日本人高校生が海外『特殊詐欺拠点』で詐欺に加担も
ミャンマーを拠点とした詐欺です。
2月、タイで保護されたのが、愛知県の16歳の高校生です。
ミャンマーの特殊詐欺拠点で、警察官をかたる詐欺に加担させられていたとみられています。
なぜ、日本人高校生が、海外の特殊詐欺拠点にいたのでしょうか。
発端は2024年11月。
高校生は、
「海外で特技を生かせる仕事がある。半年くらいの仕事だ」と、インターネットで海外の仕事を紹介されました。
やり取りしていた相手から、ある男性を紹介され、実際に会うと、その男性は「頑張れば稼げる」と話し、渡航の段取りを教え、パスポート取得を指示しました。
そして、高校生は、2024年12月、タイ経由でミャンマーに入りました。
「(現地で)人々が強制的に働かされ、拒否した人は腕立て伏せをさせられたり、電気ショックを受けていた。自分も一度、足に電気ショックを受けた」と話しています。
なぜ、高校生まで、特殊詐欺に加担させられていたのでしょうか。
「特殊詐欺要員を集めるリクルーターは、会社員などより、時間の自由がきく若者を狙っている。若者は時間もあるし、SNSも使いこなせるので、犯罪組織にとって使い勝手がいい」ということです。
高校生は、タイ当局によって保護され、2月16日に帰国しました。
渡航に関しては、不可解な点もありました。
窓口での未成年のパスポート申請には、親権者などの法定代理人の署名か同意書が必要です。
ただ、本人と親の筆跡が一致しているなどの不審な点がなければ、親の同意の有無は確認しない、ということです。
今回、少年の親は、「(パスポート申請の)同意はしていない」ということで、同意を示す書類が偽造された可能性もあります。
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■ミャンマー詐欺拠点 なぜ『野放し状態』?■ミャンマー詐欺拠点 なぜ『野放し状態』?
ミャンマーの詐欺拠点です。
タイとの国境付近にKKパーク、泰昌パークと呼ばれる拠点があります。
こうした詐欺拠点の一部は、2017年の中国の巨大経済圏構想『一帯一路』で、中国系企業が2兆円以上を投じて開発し、ホテルやカジノを建設しました。
しかし、その裏で中国系犯罪組織が流入して、犯罪都市へと変わりました。
タイとミャンマーの国境沿いは、『特定の武装勢力』が支配していて、ほかの地域より政府や軍の統制が届きにくく、犯罪グループが活動する自由度が高いということです。
さらに、国境警備隊が後ろ盾となっているという指摘です。
中国企業のトップが、ミャンマーの国境警備隊のトップに、土地リース料などを名目に資金を支払う密月関係にあったということです。
(「羽鳥慎一モーニングショー」2025年2月27日放送分より)