東京大学の大学院の男性教授ら2人から高級クラブや風俗店での接待を強要されたなどとして、共同研究を行っていた団体が大学側に損害賠償などを求めて提訴しました。団体の代表によると、暴言や多額の現金の要求もあったということです。
■共同研究の中身とは?
訴えたのは、化粧品の開発などを行う日本化粧品協会の代表理事・引地功一氏。
訴状によると、日本化粧品協会はおととしから東京大学と共同で化粧品開発の研究を開始。アトピー性皮膚炎など皮膚疾患の治療薬開発や、肌の健康寿命を延ばすことが目的だった。
「ヘルス&ビューティーですね。健康寿命を延ばすというのは、70歳の時に40歳の肌、極端に言うと。そういったものの特効薬になりえるぐらいの研究」
東大側は、大学院教授のA氏と当時、特任准教授のB氏が研究に参加。A教授は東大医学部出身で、東京大学皮膚科教室の教授を務めている。
「教授に何もかもの権限が集中しているんだなという印象」
共同研究は民間企業にとっては出資することで研究成果を自社製品の開発に生かすことができ、大学側は資金の確保で新たな研究が可能になるという双方にメリットがあるもの。しかし、両者の関係は歪なものだったという。
■すべての始まり…高級フレンチ
引地氏によると、高額な接待の始まりは共同研究が正式決定される直前のおととし。引地氏は、A教授らから高級フランス料理店に呼び出されたという。
食事の会計に際し、教授らはテーブルに置かれた伝票に手を伸ばすそぶりを一切見せなかったという。
金額を確認するため、引地氏が伝票を手に取ると、すかさずA教授らは「ありがとうございます」と言い、席を立ち個室を出ていってしまった。引地氏は、仕方なく全額の15万円を支払った。
東京大学など国立大学の教職員は「みなし公務員」で、職務に関連した接待を受けると収賄罪に問われる可能性がある。
■銀座のクラブでも 一晩で衝撃価格
引地氏によると、高級店での食事だけでなく、銀座の高級クラブでの接待も要求されるようになったという。
これは、そうした接待の場を捉えた実際の写真。飲み干した高級ワインやシャンパンのボトルがある。1本5万円ほどのドンペリや1本10万円もの高級ワイン「オーパスワン」などが並んでいる。
当時、接待の場に居合わせたクラブの従業員によると…。
「(Q.自分から財布を出したりとか、そういった様子は?)もう1ミリもないです。支払ってもらう立場が当たり前っていう感じだと思います。先生側は」
これは銀座での接待の領収書。飲食店での10万円前後の支払いが3枚、高級クラブで使われた67万円の領収書もあった。これらはすべて同じ日に支払われたもので、この日だけで100万円以上に。当然のように、すべて引地氏の支払いになったという。
さらに訴状によると、A教授は個人的な飲食代や学会への旅費交通費など共同研究とは関係のないものにまで引地氏に支払いを求めたという。
要求は、ますますエスカレートしていくことに。
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■風俗店も要求?LINEの中身■風俗店も要求?LINEの中身
去年3月、引地氏は教授らとタイに視察に行った。その際、タイの会社からA教授とB特任准教授が接待を受けたという。
「タイでの接待ということで女性を、女性による接待というんですかね。日本でいう風俗みたいな接待を受けまして」
「(教授らは)その性接待をあっせんされた方にお礼を言いたいと、感動的だったから。朝から上機嫌で、その方にお礼を言っていました」
帰国後、2人は飲食店やクラブだけでなく風俗店での接待も要求するようになったという。
「クラブ行っても手も握れないし、キスもできないという話をされたんです。じゃあ高級風俗とかにされますかって」
引地氏とのLINEでは、生々しいやり取りが…。
「ルックス・若さ・テクニック重視で選んでください」
「ありがとうございます。先にA教授に選ばせてあげることにします」
「きれいな方を指名するという予約係は私のまま、1回8万円くらいするんですけど。その8万円がお二人、16万円かける(月に)2の32万円くらいのノルマで」
訴状によると、接待は去年9月までの1年半にわたって続き、引地氏は接待交際費としておよそ1981万円を支払ったという。
■録音音声の中身「金もってこい」恐喝か
そうした高額接待疑惑が続いたなか、去年8月、衝撃的な出来事が起こった。
「(A教授は)ひじをつきながら食事を食べながら飲みながら、延々『殺すぞ』『金持ってこい』『なめてるのか』と。何かタガが外れたように、震えながらもうすごく怒ってらっしゃるような雰囲気で。具体的には1500万円」
突如、暴言と共に金銭の要求をしてきたというA教授。
「東京大学の中で、きちんと自分の立場を確保するためのお金だと」
訴状によると、A教授は引地氏に対し共同研究を続けたければ1500万円を用意するよう求められたという。
一方的な罵倒が続くなか、B特任准教授が口を開くと…。
「やっとしゃべったなと思ったら『殺すぞというのは、社会的に抹殺するということですよね』と、訳の分からないフォローが入った。もうあと延々一緒です。2時間ぐらいですかね」
この数日後、引地氏はA教授の発言を確認するためにB特任准教授を個別で呼び出した。この音声(原告側提供)は、その時の実際のやり取りだ。
「お金持って来いって言って殺すとか言ったら恐喝罪ですよね」
「そうですよ」
「えっ、(他の)人に言ったことあるんですか?」
「ありますよ」
B特任准教授自身が恐喝を認めているように聞き取れる。
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■東京大学に通報…その後の対応は?■東京大学に通報…その後の対応は?
「恐喝された時に、ちょっと我に返りまして。このまま進んでも地獄だなと。いつか潰れる」
精神的に限界を感じたという引地氏は、東京大学に通報。しかし、引地氏は大学側から正式な回答をもらえず、一方的に研究を中断させられたと主張。
「(東大のコンプライアンス委員会は)『きちんと中で調査をしなければいけない、ついては証拠をください』ということがあったので。原告、協会代表者の方が証拠を出したんですが、その後、具体的な進行等々については一切連絡がなくて」
日本化粧品協会は、研究の再開やおよそ4200万円の損害賠償を求め提訴に踏み切ったという。
引地氏側の訴えに対し、東京大学側は次のように述べた。
「訴状が届き次第、その内容を確認して適切に対応いたします。本案件については、その事実関係について、すでに本学において調査を進めております。今後、調査の結果に基づき、必要な対応をとってまいります」
また、A教授らに対し、大学側を通じてコメントを求めたが、放送までに回答はなかった。
およそ1年半に渡って繰り返されてきたとされる高額接待疑惑。引地氏は、なぜ止めることができなかったのか。
引地氏側の訴えの通りならば、「みなし公務員」のA教授らに接待を行った引地氏自身も贈賄の罪に問われる可能性もある。
それでも訴えを起こした理由は…。
(「羽鳥慎一 モーニングショー」2025年5月19日放送分より)