アメリカ・グラミー賞に“日本音楽界を背負う存在”と評され、今月、世界35都市で、40万人規模の世界ツアーを終えた日本人アーティストがいます。その名は『XG』。
舞台裏では、同世代の若者たちと何一つ変わりません。5万人が待つステージに立つと、その姿は一変します。
2022年にデビューした『XG』。
規格外という意味を“X”の文字に込め、J-POPでもK-POPでもない“X-POP”を掲げる7人組です。
先月、アメリカ最大級の音楽フェスに『Coachella Valley』に出演。日本人アーティストとして初となる“トリ”を務め、世界の音楽シーンで日本の存在感を示しました。
去年5月、ワールドツアーをスタートさせると、わずか3年前にデビューしたにもかかわわらず、人気は世界中に広がっています。
平均年齢21歳の若者たちが、なぜ、いま、世界を魅了しているのでしょうか。
ワールドツアーの海外公演、最後の場所となったメキシコ。この国でライブを行うのは、初めてです。それでも会場には、多くの人が集まり、なかには、自作したグッズを交換し合う人たちもいました。
メキシコのファン 「ブレスレットとステッカー、タトゥーシールをもらった。ファンの熱狂を示すカルチャーです。ファンの結束を示したい」
ライブが始まると、6500人が大熱狂。日本人の姿はほとんどありません。
これまで、日本人アーティストの海外公演は、日本で知名度を上げ、海外に挑戦する場合や、アニメ主題歌などが注目され、大型イベントに参加することがほとんどでした。
そんななか、XGは、デビュー当初から、楽曲の歌詞をほぼすべて英語にし、活動の主戦場を海外に定めています。
そのカギを握るのが、プロデューサーのSIMONさん(38)です。日本人の母と韓国人の父のもと、アメリカで生まれました。育成期間から8年もの間、メンバーと苦楽をともにしてきた人物です。
XGALX代表 エグゼクティブ・プロデューサー SIMON 「たとえ赤字になっても、数多くの場所で、まずはXGを、直接、行って、直接、お見せするというところにフォーカスした。そういう部分では、戦略でもあるのかなと思う」
事実、音楽市場は、海外を中心に成長を続けています。その規模は、この10年で167億ドル、約2兆3900億円、増加するほど。
XGALX代表 エグゼクティブ・プロデューサー SIMON 「海外の“進出”とか“世界は世界で、母国は母国”という区別をやめた方がいい。言語や文化が違っても自分が作り、売っていく何かを日本だけで考えない」
XGの初のワールドツアーでは、アジアから北米、そしてヨーロッパなどをめぐり、35都市で約40万人を動員しました。
この活躍は、アメリカのグラミー賞が「XGの活躍が日本のポピュラー音楽の世界進出に貢献した」と評価したほどです。
そして、世界から注目される理由はもう一つ、あります。それは、メンバーが歩んできた時間にありました。
8年前に始まったメンバーの育成時代の映像。当時は、まだ11歳から15歳の子どもたちです。
参加者をひそかに集め、選考の様子を公開することなく、歌やダンス、英語や韓国語の勉強まで、徹底的にトレーニングしました。その期間、実に5年。
XG JURIA(当時12) 「高い歌唱力を持ち、世界に通用するアーティストになる」
この映像をデビュー後に、YouTubeで無料公開。夢に向かい努力を続けるメンバーが、サイモンさんとともに、さまざまな困難を乗り越えてきた姿をファンと共有しました。
海外のファンは、こう受け止めていました。
メキシコのファン(20代) 「目の前に障害があっても、あきらめずに続けようと刺激を受けている」
メキシコのファン(30代) 「僕たちの人生でも家庭や学校などで、似たような状況に置かれたとき、逆境に全力で立ち向かうことが必要がある。彼女たちに自分を重ねることができた」
メキシコのファン(30代) 「前に進もうという気にさせてくれる。夢を見つけ、困難があっても、実現するまで努力するように」
当時を振り返り、メンバーは、こう話します。
XG JURIA(20) 「私の悩みだったり、苦戦していた部分だったり、課題だったり、壁だったりを、メンバー一人ひとりが向き合ってくれて、助けてくれて、いろんなアドバイスをくれて、みんなのアドバイスが私を成長させてくれた。みんなに感謝してるし、 大好き、本当に。話すとあふれちゃう」
XG HINATA(22) 「元々、自分の好きなことがわからなくて、夢もなくて『何をしたらいいんだろう』って、私も実際そうだった。伝染しちゃった。挑戦したことで、いまこうしているし、たくさん学ぶこともあった」
XG MAYA(19) 「自分が一番自分のこと知っていると思うし、自分に自信があれば、飛び込むこともできるし、結局は、できたってなる可能性もあるじゃないですか。私もみんなも、最初から自信満タンだったわけでないので」
XG JURIN(22) 「一歩、踏み出すことで、自信がついてくるのかな」
その思いは、ステージから届けられています。
【WOKE UP】 「自分たちのために動かせたってわかるだろ。成功したけど、そのためには誰よりも努力しないといけなかった。完璧すぎて驚いた?苦しさなんて、もう感じない。目を醒ました、私たち。だから勘に触るようなことしないで。目醒めろ、私たちのように」
メンバーとサイモンさんの関係性は、いま…。若いメンバーたちの思いを受け止め、それを実現するために全力で行動する。緻密なコミュニケーションがとられていました。
XGALX代表 エグゼクティブ・プロデューサー SIMON 「基本、止めない(否定しない)ですね。なぜ、やりたいかという話がちゃんとあるので、それは尊重して。すごく悩んで考えて話してくるから、僕はオープンマインド」
メンバーは、こう話します。
XG HARVEY(22) 「お父さん的存在でもあり、私たちをイックロジュン (導いてくれる人)」
XG JURIA(20) 「ここで、こうしたらいいんじゃないとか、発想やクリエーティブの脳が宇宙人」
XG CHISA(23) 「まずは、私たちもしたいことや、こういうことを届けたいですとサイモンさんに伝えて、そこからサイモンさんが、クリエーティブや作ったり、まとめたりしてくれるボスだしリーダー。私たちもその責任感を一緒に感じて、自分たちもXGやXGALAXを引っ張っていく代表として、伝えることを積極的にしようという文化。恐れて言えないことが、なかったというのも、サイモンさんがそういう環境を作ってくれたから」
XG JURIN(22) 「伝えたことを受け止めて、『僕もこう考えていたから、こういうふうにみんなも思うら、こうしよう』みたいな、行動に移す力がものすごいエイリアンだよね」
XG COCONA(19) 「目がめっちゃキラキラみたいな。この人となら一緒に行きたいって、目でお互いわかり合って」
XGが、世界を魅了する理由。それは、これまでのやり方にとらわれず、海外に直接、届けること。そして、夢を追う姿をファンと共有すること。
5月、迎えた東京ドームでのワールドツアー最終公演。世界を回ってきたことで、海外からも多くの人が足を運んでいました。
アメリカから来た人 「カリフォルニア州から来ました。これが最終公演で、次の公演まで時間が空くから、東京行かなきゃって」
マレーシアから来た人 「XGのために日本に来ました。目的はXGだけど、富士山や東京も観光しようかと」
XG JURIN(22) 「各都市に行ってみて、直接、ALPHAZ(ファン)の皆さんと、私たちの音楽を共有して、共鳴して、音楽で国境や距離を越えて、つながれるんだなと。実際に肌で感じて、すごく驚いたし、感動したし、まだまだこれからだなっていう気持ちにもすごくなって」
XG CHISA(23) 「みんなが練習生のときから、見てきた夢っていうのは、本当に大きい夢だし、それが、いま、かなおうとしているときに『SHOOTING STAR』を聴くと、XGがコロッと変わった瞬間をめっちゃ思い出す」
デビューからわずか3年。ワールドツアーを異例のスピードで達成し、次なる夢の実現へ。
ライブ終了後。
XG CHISA(23) 「うちらのハングリーな気持ちや、やるぞって決めたら、絶対やる。そういう強い思い。思いの強さが実現に近づけていると思う」
XG MAYA(19) 「これからが始まりっていう気持ちにもなったから、XGはこれからまだまだ続きます。ALPHAZ(ファン)とXGです」