社会

2025年6月14日 21:00

【池上解説】外免切替って何?国際免許と何が違う?ニュースの意味どこまでわかってる?

2025年6月14日 21:00

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ニュースをみていると、え?これはどういうこと?と思うこと、よくありますよね。もっとよくニュースを理解するために、基礎から説明してまいりましょう。

■不起訴って無罪と何が違う?

今年になってから、殺人未遂や詐欺、傷害容疑などで逮捕されたものの容疑者が結果不起訴になるという事件がいくつかありました。皆さんは「不起訴」と聞いてその意味、わかりますか?不起訴=無罪、と思っていませんか?

実は違うんです。

まずは逮捕されてからの流れを確認しておきましょう。

容疑者が逮捕された後は警察で取り調べを受け、次は「送検」、検察へと身柄を送られます。そして検察官による取り調べを受け、「起訴」、裁判にかけるかどうかが決められます。起訴された場合は「裁判」で無罪か有罪か、さらに量刑などが決まります。つまり起訴か不起訴かを決めるのは検察、ということになりますね。

一方で、「無罪」というのは裁判の結果、決まるものです。不起訴の場合はそもそも裁判をしていないわけですから、無罪ではありません。もし何も悪いことをしていなければ無実、となるわけです。

ではどんな人が不起訴となるんでしょうか。先ほどの無実の人、他に犯人が見つかったよ、などという場合は「嫌疑なし」として文句なしの不起訴となります。

不起訴の主な理由

それに対し、悪いことはしているんだけど、初犯で微罪だし、本人も反省しているのでわざわざ起訴するまでもないよね、という場合は「起訴猶予」として不起訴となることがあります。また、どうも怪しいんだけれど証拠が不十分で裁判で有罪にすることは難しいだろうな、という場合は「嫌疑不十分」として不起訴になります。

ニュースで「容疑者が不起訴になった」、と聞いたらこのどれかなんだな、どうしてかな、と一度考えてみるとさらにニュースの意味がよくわかると思います。ちなみに2023年で見てみると、検察によって不起訴と判断されたのは60%以上にもなります。意外と多いですよね。実は起訴された後、有罪となる確率は日本ではなんと99%以上。自信がないと検察も起訴しない、ということです。

■示談すると無罪?

示談の模様

ニュースをみていると「被害者と加害者の示談が成立したため…」なんていう言葉、たまに出てきますよね。では犯罪を起こしても、示談が成立すれば無罪となるのでしょうか?示談が成立すると罪が帳消しになる、と思っている方もいるかもしれません。でもそうとは限らないんです。

もちろんあまり重い罪ではない場合、被害者と加害者で示談が成立すると検察も「起訴するのはやめましょう」と「起訴猶予」になる可能性はあります。

示談の例

でも罪の重さによっては示談が成立していても起訴されるケースはあります。その場合でも罪の言い渡し、量刑が軽くなるケースが多いです。つまり示談=無罪では決してないということです。

■外国免許切り替え制度って何?

最近外国人ドライバーが高速道路を逆走して事故を起こしたり、住宅街でひき逃げを起こした、そんなニュースがありました。逮捕された外国人はいずれも「外国免許切り替え制度」を使っていました。皆さんはこの制度のこと、理解していますか?

まずは国際免許と比べてみましょう。こちらはご存知の方も多いのではないでしょうか。

国際免許

国際免許とは短期間、海外で運転できるようにするためのもので、日本の免許を持っていれば運転免許試験場などで取ることができます。

海外旅行のために取ったことがある方もきっといらっしゃるかと思います。

有効期限は1年です。何度でも取れますが、日本での手続きが必須です。

外国免許切り替え制度、いわゆる外免制度とはこれとは全く違います。

これは日本に来た外国人が、自国の運転免許証があれば日本で知識と技能の試験を受けるだけで日本の免許に切り替えられるという制度です。日本に住民票がなくても、滞在先のホテルの住所でも取得することが可能です。

外免切替免許

でも普通に国際免許で運転すればいいのに、と思いますよね?実はこの制度を利用しているのはベトナムと中国の人が圧倒的に多いんです。

上位3国

というのもこの2か国はジュネーブ条約という国際免許の条約に加盟していないんです。この条約には100以上の国と地域が加盟していて、その国の中では国際免許証が使えますが、それ以外の国では使うことはできないんですね。ですから、中国やベトナムの人が日本で運転しようと思ったら外免切替制度しかない、というわけです。そして外免切替で日本の免許さえ取れてしまえば、国際免許証もとることができます。そうすれば世界100以上の国や地域で運転できる、そういうからくりなんです。

そもそもなんでこんなに「ゆるい」制度があるんでしょうか。この制度が始まったのはなんと昭和8年。海外にいた日本人が一時帰国をした時などに、日本でも運転できるように、として始められた制度なんです。多くの外国人が日本に来て切り替える、なんてことは想定されていなかったんですね。

でもこうして事故を起こすなど問題も起きています。現在この制度を見直して、観光のために短期滞在している外国人は申請できないようにするなど、厳格化することが検討されています。

池上彰さん

こうしてみてくると普段何気なく見ていたニュース、見逃していたニュースには実はこんな意味があるんだ、ということがわかっていただけたのではないでしょうか。是非これからはこうした基礎的な知識を持ったうえで、ニュースを見ていってほしいなと思いますね。

(池上彰のニュースそうだったのか!! 6月14日OAより)

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