日中関係の緊張が続いている中で、この3連休は紅葉の名所に多くの中国人観光客が訪れていました。観光地のホテルや飲食店に話を聞くと、この日中関係の冷え込みが、観光業に与える影響に差がみられました。
「香嵐渓」紅葉ピークで大混雑
燃えるように真っ赤な紅葉が鮮やかなコントラストをつくりだす、紅葉の名所「香嵐渓」。
眼前には飯盛山に植えられたおよそ3000本の真っ赤な紅葉が広がりますが、飯盛山の散策コースに入ると印象が一変。頭上に広がる黄緑や黄色、オレンジのグラデーション、色鮮やかな景色を楽しめます。
「全部赤いし、びっくり。ちょうどこの紅葉がきれいな時期にこの子が生まれるってことで、『楓』って漢字を(名前に)付けてたので。やっと会えたみたいな」
飯盛山の中腹にあるのは、香嵐渓の「香」の字の由来ともなっている香積寺。参拝客が長い行列をつくった先にある山門では、多くの人が足を止める様子が見られました。
その理由は、山門の先にある紅葉の美しいグラデーション。手前から見ると、山門がまるで額縁のように鮮やかな紅葉を切り取ります。
さらに夜になると紅葉がライトアップされ、昼とはまた違った表情に。あたたかな光に照らされた紅葉はオレンジ色に輝き、川に映し出された光り輝く姿はまさに絶景。
黄金色の紅葉のトンネルが続き、まるで光に囲まれているような幻想的な景色が広がります。
絶景を写真に収めようと、橋の歩道には人が殺到。歩道は歩きにくい状態に。
紅葉の見ごろと3連休が重なり、多くの観光客でにぎわった香嵐渓。23日午前6時、まだ空が薄暗い中、香嵐渓には続々と車が入っていきます。
すでに200台入る駐車場が満車に。早朝に来る理由は…。
「もう大渋滞で動かないので、道が」
「去年7時くらいに来たら、もう混み混みで大渋滞で。反省を踏まえて早く来ました」
周辺の道路では、駐車場に入れない車で4キロの渋滞が発生。香嵐渓までの4キロにかかった時間は1時間半でした。
夜、ライトアップの時間になると、より一層観光客が増え、橋は写真を撮る人と移動する人で混雑。通りは人で埋め尽くされ、進むことも戻ることもできない状態に…。
渡航自粛でも日本へ…本音は?
大混雑の香嵐渓を訪れていたのは、日本人だけではありません。
ここ数年、海外からも観光客が増えているという香嵐渓。中国人観光客の姿もありました。
「RED(中国のSNS)から知りました。(紅葉は)今まで見た中で一番規模も大きく面積も広いです。突然、一面の紅葉が目に入ってきて、とてもよかったです」
「渡航自粛」の中、個人旅行で紅葉を見に日本を訪れたといいます。
観光バスを降りた先には、雄大な富士山を一望することができる河口湖。富士山は中国人にも人気のスポットで、24日も多くの観光客の姿がありました。
河口湖の湖畔には400本以上の紅葉が植えられていて、今紅葉のピークを迎えています。中でも人気を集めているのが、60本ほどの紅葉の古木が川の両岸およそ150メートルに渡って立ち並ぶ「もみじ回廊」。川底も真っ赤な落ち葉で埋め尽くされています。
さらに日が暮れると、闇夜に浮かぶ紅葉が幻想的な光景を作り出していきます。
「きれいです」
「夜見るの初めてなんで、また何か違った感じでいいかもしれません」
その美しさがSNSで世界中に拡散した結果、もみじ回廊は日本の秋を代表する観光地の一つとして有名になりました。今では来場者のおよそ7割が外国人だということです。
一方、中国人観光客にお馴染みのこちらのスポットでは…。
コンビニ越しに富士山が見られるということで、SNSで話題になったいわゆる“コンビニ富士山”。相変わらずの人気ですが“ある変化”もありました。
「(Q.きょう撮った写真はSNSにアップします?)親戚や友達に見せるだけだと思います」
「(Q.友達だけにしか見せないのはなぜ?)日本と中国の関係が良くないから」
日本を訪れる中国人観光客は、日中関係についてどう思っているのか。インタビューを試みましたが、メディアに対し警戒を強めているのか、ほとんどの人が取材を拒否。そんな中で話に応じてくれた人も…。
「(Q.日中関係の悪化についてどう思う?)それは答えにくいです」
「(Q.日中関係がよくなく、これについてどう思いますか?)この質問は飛ばしていいですか」
日中関係の話は答えたくないといいます。さらに、インタビューを始める前から、くぎを刺す人もいました。
「(Q.すみませんが)政治問題を聞かないでください。政治的な質問には一言も答えませんので」
ただ、インタビューの最後には、日本に対し友好的な言葉を残していきました。
「日中友好、代々伝承(日中の友好が代々続きますように)」
日中関係の話がタブーになるほどの状況でも、日本に観光へ来た理由はさまざまです。
「彼氏が日本にいるので、遊びに来ました」
「(Q.来る時に、親から行かないほうがいいと言われましたか?)言われました」
「(Q.止められても来たのは彼氏のためですか?)(うなずく)」
周囲から心配されつつも、日本に住む恋人に会いに来た女性や、旅行を決める前の自粛要請であれば来なかったという人もいました。
「先にスケジュールが決まっていたので、まだ日本旅行が決まっていない時だったら、来ていなかったかもしれません」
「(Q.中国からの渡航自粛を知って迷いませんでしたか)迷いました」
「(Q.それでも来たのはどうしてですか?)スケジュールが決まっていたので」
「ホテルはキャンセルできないのです」
「ホテル代を損するのはもったいない」
日本へ来ることに迷いを感じる人がほとんどの中、唯一はっきりと「気にしていない」と答えた、個人旅行できた女性。
「ツアー客には影響が出るかもしれませんが、個人旅行には何の影響もありません。どこで何をしたいかは、誰にも指図されない。見たいものがあれば見ればいいし、来たければ来ればいい。自分たちは自由だから、誰にも影響されません」
人気ホテル、キャンセル増も「限定的」
さまざまな思いで紅葉シーズンの日本を訪れている中国人観光客。受け入れる観光地側の心境も複雑です。
河口湖で、おはぎなどを販売する和菓子店。抹茶ブームもあり、店には中国からだけではなく全世界から観光客が訪れるといいます。
「中国の方がちょっと少なくなっているかなという、そんな印象です。お客様がいらっしゃるのが制限されるというのは、すごく悲しいことではあります。難しい問題ですけれども、一時的なものではないかなとも思うんですね。また春節ですとか、そういう時には(中国からの観光客が)お見えになるような気がして」
日中緊張の影響が確実に出始めている場所もあります。
「例年よりも多くキャンセルが入りだしている。(件数は)感覚的には1.6倍、1.7倍とかっていう形ですね」
これからの時期、山頂に雪をかぶった富士山を部屋から一望することができるため、中国人観光客にも人気のホテル。
「目立った団体だと、30名が2泊の会合があったみたいなんですけど、中国人が来れなくなったから、その会合自体がなくなったっていう話で。60泊がゼロなので痛いですよね」
ただ、中国人観光客は全体の宿泊者の1割ほどで、今のところ影響は限定的だということです。
「損失2000万円」大打撃のホテルも
一方で、中国人客を積極的に受け入れていたホテルでは大打撃が…。
「11月のちょうど自粛が呼びかけられた直後くらいから、もうキャンセルがどんどん来て。今、中国のお客様のキャンセルが2000名以上になっております」
愛知県蒲郡市にある、蒲郡ホテル。
日本の主要観光地を巡る“ゴールデンルート”。富士山と京都の中間地点にある蒲郡市は、宿泊地として人気です。
「(Q.これ全部ですか?)一部なんですけど、この数日間の間に来たやつですね」
理由の欄には、すべて政治的な理由だと書かれています。
自粛要請以降、12月までの団体客の予約がすべてキャンセルされました。
日本人が観光に来ないシーズンも、団体の中国人観光客を受け入れることで、安定して客室の6割ほどが埋まり、閑散期を支えていました。
しかし渡航自粛以降、観光バスの駐車場は空いたままです。
現状、特に頭を悩ませているのが、本来なら支払われるはずの1000人分のキャンセル料です。
「(Q.国はキャンセル料払わなくていいよ)って、言ってるらしいんです」
中国の旅行会社側は「国が払わなくていいと言っているから」という理由で、キャンセル料免除を主張しているといいます。
(「羽鳥慎一 モーニングショー」2025年11月25日放送分より)






























