卓球・張本智和 パリ五輪へ“トップ独走” 快進撃の理由は…「地に足をつけた強さ」[2023/02/14 16:00]

卓球の張本智和選手(19)。全日本選手では惜しくも3冠を逃しましたが、去年から始まっているパリオリンピックの先行レースではトップを独走しています。この1年間大きく成長しました。

■一人暮らし始め「すべて自分で決めるように」

去年の張本選手はすごかった!中国トップの3選手に勝利。世界ランキングも日本史上最高の2位です。

そんな去年の快進撃について聞くと、頼もしい答えが返ってきました。

張本選手:「今は勢いよりも地に足つけて、しっかりと勝ちたいという気持ちが強い。13歳や14歳の時に中国人選手に勝ったのを思い出しても、あの勝ち方では五輪では絶対に勝てない」

松岡さん:「どういうことですか?」

張本選手:「勢いだけで中国に五輪で勝つというイメージは全くつかめなくて、緻密に戦術を練って試合でしっかり対応して、すべてにおいて上回ることで五輪でも勝てる。だから今、目指してる方向は絶対間違っていない」

「地に足をつけた強さ」。一体、それはどのように身につけたのか?

張本選手:「自分で決断する」

松岡さん:「決断?」

張本選手:「1人で暮らし始めたりとか、やっぱり1人ですることが増えてから、例えば何もしないとご飯も出てこないし。食事に行くという小さなことでも、練習環境を変えるという大きな決断だったり。高校生までは、お父さんお母さんが決めた場所で練習したり、お父さんお母さんが作ってくれたご飯を食べたり、それもすごく良いことではあったけど、すべて自分で決めるようになった」

■“自立”意識…ドイツ・プロチームでしのぎを

去年、張本さんは大学進学を機に一人暮らしを始めました。元卓球選手の両親に英才教育を受けていた時と生活は一変、練習場所もメニューも自分で決めるようになりました。

中でも大きな決断は、ドイツのプロチームに志願して加入したことです。言葉も通じない未知の世界に1人で飛び込み、ヨーロッパのトップ選手たちとしのぎを削りました。

チームメイトで、元世界1位のオフチャロフ選手(34)は次のように話します。

オフチャロフ選手:「プロのアスリートにとって周囲のサポートは必要不可欠ですが、卓球台の前では自分一人しかいません。競っている重要な場面でどう戦うか、決断するには自立が必要です。張本はドイツで自立の重要性を学んでいます」

“自立”すること。それをずっと意識してきたことで、考え方が大きく変わったといいます。

張本選手:「以前は、周りの言ってることを鵜呑(うの)みにしてそれが自分の決断だと思っていた。自分の本当の意志ではなかった。その意見が本当に合っているかは、最終的に自分が決断しないといけないし。そもそも、自分がゼロから始める必要がある。1を与えてもらった後に、それを10にするのは自分の力ではないし、1を10にするよりも0から1にする方が難しい」

松岡さん:「以前と違って、失敗もあるかもしれませんが、自分で決断するというのはどんな感覚?」

張本選手:「自分で失敗しても納得できるし、今までなんとなく親が作ってくれた道を歩いて、失敗せずに歩んできたなかで、試合で困難になった時に分からなくなってズルズル負けてしまう。小さい失敗を普段から繰り返すことで、試合で失敗に直面した時に自分で決断して作戦を考えたり変えたりできるようになった」

松岡さん:「大人になったってことですか?」

張本選手:「そうなんですかね」

松岡さん:「19歳ですからね。まだね」

張本選手:「今までは正解や成功だけが(五輪の)金メダルに近付くと思っていたけど、失敗だったり卓球に関係ないこと、すべて金メダルにつながっている」

■パリ五輪へトップ独走「中国選手に怖さない」

これまで味わうことのなかった失敗を繰り返すことで、成長していった張本選手。試合での不利な状況も自分で打開策を考えられるようになりました。

それが最も表われた試合が、7月の国際大会。中国トップ選手との決勝です。

試合は劣勢で進み、第6ゲーム。相手にマッチポイントを奪われます。しかも点差は5点。それでも、ここからが今までと違います。

驚異の追い上げで大逆転勝利。1年4カ月ぶりの国際大会優勝を果たしました。

さらに、世界選手権の団体でも中国の世界王者に逆転勝利。今までにない勝ち方が増え、去年の快進撃が生まれたのです。

来年のパリオリンピックへ、代表の選考レースでは、トップを独走しています。

張本選手:「東京五輪の時よりもメダルを狙える可能性が高い。中国選手に対して怖さはあまりない。まだまだ判断や決断を間違える時はあるし、あと1年間もっと失敗と成功を繰り返していくなかで成長していける」

(「報道ステーション」2023年2月13日放送分より)

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