“変化球の達人”ダルビッシュ有 マネできない…松坂大輔の“サークルチェンジ”[2023/03/01 17:00]

侍ジャパン宮崎合宿でも、グラウンド内外で大きな役割を果たしていたのが、ダルビッシュ有投手です。WBCを前に、松坂大輔さんとダルビッシュ投手の対談が実現しました。

■松坂さんの記憶語る「レベル違う人いるんだ」

WBCを前に実現した松坂さんとダルビッシュ投手のスペシャル対談、第1弾。

実は、2009年のWBC開幕前にも、当時キャスターの栗山英樹監督がインタビューを行ったのが、日本のエース・28歳の松坂さんと22歳のダルビッシュ投手でした。

あれから14年、再び語り合う2人。ダルビッシュ投手が話し始めたのは、平成の怪物・松坂さんの記憶でした。

ダルビッシュ投手:「中学2・3年生ぐらいの時に、今の京セラドームに西武対近鉄を見に行って、松坂さんが初めて156キロを投げた試合だった。それをレフトのポール際ぐらいから見ていて、友達と。それまで(松坂さんの)最速が155キロだったんですよ。156キロってなった時『最速ちゃうんか?』みたいな感じになって、その後ずっと何週間も見たっていうのを自慢していた。『本物の156キロ見た』って言って。周りの同級生も、その当時って、松坂さん一色だったので、影響を与えてもらった」

松坂さん:「きっかけになってくれたと思えば、うれしいですよね」

ダルビッシュ投手:「(自分の)プロ1年目とか、本当にまだ覚えています。札幌ドームで『148キロの今の何?』みたいになって、チームメートにカットボールだよって教えてもらって。変化球でその当時そんな球速で投げる人はいなかったので、レベルが違う人っているんだなって、すごく感じた」

松坂さん:「ダルビッシュ投手から、僕も言われたら。ありがとうございます!」

ダルビッシュ投手:「ありがとうございました!」

■メジャー屈指“変化球の使い手” 球種は10種類!?

松坂さんのピッチングに衝撃を受けていた若き日のダルビッシュ投手。14年前のインタビューでは、松坂さんの左バッターへのシュートについて、次のように話しました。

ダルビッシュ投手:「すごく曲がっていますね。日本のボールだったら難しいと思うんですけど、このボール(WBC公式球)なら意外にできちゃう」

栗山キャスター(当時):「すごく使える球になるかもしれないですね」

ダルビッシュ投手:「ちょっといい球だなと、使おうと思って」

松坂さんの変化球を、その場で吸収しようとしていました。

その後、報道ステーションで行ったインタビューでも話題の中心はいつも“変化球”でした。

ダルビッシュ投手:「変化球の曲げる場所も変えられます」「カットボールとかスプリットが投げやすいフォームだった」

工藤公康キャスター(当時):「たぶん誰も理解してないと思う」

そして今やメジャー屈指の変化球の使い手となりました。

今回の合宿でも、変化球のアドバイスを求める後輩が後を絶ちません。

松坂さんが聞きたかったのも、やはり変化球についてです。

松坂さん:「メジャーに行く前から、変化球を投げるのがうまいピッチャーだなと思って見ていた。今持っている球種を聞いてもいいですか?」

ダルビッシュ投手:「試合で投げるのはフォーシーム、ツーシーム。普通の速いカットボール、カットボールって呼んでる小さいスライダー、スイーパー(横に大きく曲がるスライダー)、ななめのスラープ、スイーパー(斜め上のスライダー)、スプリット、チェンジアップって感じですかね、あとカーブ」

松坂さん:「10種類以上ですよね。そんなピッチャーいないですよね?」

ダルビッシュ投手:「そんなことをしようとする人もいないので」

■変化球の達人もマネできない“サークルチェンジ”

松坂さんが驚くほど多彩な変化球を操るダルビッシュ投手。変化球の話は、さらに熱を帯びていきます。

ダルビッシュ投手:「今になって思う松坂さんのすごかったところ。スライダーもその逆もできたじゃないですか。これってできないですね。自分もスライダー方向ばっかりで、こっちができる人は、逆側は苦手なんですよね」

松坂さん:「自分自身は得意なボールでしたけど、サークルチェンジとか」

ダルビッシュ投手:「(松坂さんのサークルチェンジは)ひねる感じ。それが難しいです、僕はできないです」

松坂さん:「スタッフ的には『何それ気になるよ』って。多分その説明したら話が長くなる」

ダルビッシュ投手:「そうそうそう。30分くらいなっちゃうと思う」

変化球の達人・ダルビッシュ投手でも、マネできないという変化球。それが松坂さんのサークルチェンジです。

サークルチェンジとは、親指と人差し指で円(サークル)を作り、反時計回りにひねりながら投げるチェンジアップで、利き手方向に曲がりながら落ちるボールです。

ダルビッシュ投手:「スライダーは、(右投手の場合)時計回りに手首を曲げると思うんです。こっちが得意な人はカーブであったりもやりやすいんですよ。時計回りが強い人は肩のひじとかの可動域もそっちに寄ってくるんですよね。だから、反時計回りの可動域が出づらいってことです。チェンジアップとかは、反時計回りなので。だから、こっちのスペースがないというか、やろうと思ってもうまいこと横回転かけられなかったりするんですけど。だから、逆に時計回りが得意な人は、反時計回りが苦手なんすよね、スライダーとか。両方できる人は、ほんとあんまりいないというか。フォームを変えないといけないってことですね。松坂さんは同じフォームで、両方投げられる。自分は何でもできると思われがちですけど、意外と反時計回りは苦手で、意外と松坂さんが何でもできる」

松坂さん:「うれしいっすね」

ダルビッシュ投手:「何で両方できるんだろう」

松坂さん:「考えたことない」

ダルビッシュ投手:「両方ができるって本当にいないです。何年目くらいから投げられたんですか?」

松坂さん:「2005年(7年目)ぐらいからですかね。ストレートと同じように投げられるようになったのは。初めて聞かれた、こんなこと」

ダルビッシュ投手:「札幌ドームの日米野球で投げている映像でも、チェンジアップが結構ありますけど」

松坂さん:「あの時は2004年。(チェンジアップの感覚が)よくなり始めてきたころ。確かにあの日米…よく覚えていますね」

ダルビッシュ投手:「全部見ています、ちゃんと」

松坂さん:「キャッチボールの延長で“使えそうだな”からですかね、きっかけは」

ダルビッシュ投手:「練習では遊びでやったりしますけど」

松坂さん:「今のところは練習とかで試すぐらい」

ダルビッシュ投手:「試す、遊びでやってますけど、いつか投げたいな、なんて思うんですけど」

松坂さん:「ダルビッシュ投手の新しい姿が、いつかは見られるかも」

ダルビッシュ投手:「それを目指しています」

松坂さん:「この時間じゃ絶対終わらない」

ダルビッシュ投手:「終わらないですね」

松坂さん:「ないところで、ほんとは喋りたい」

■「理想とするピッチャーに近付いていきたい」

飽くなき探求心で、36歳となった今もなお、歩みを止めないダルビッシュ投手。昨シーズンは自身最多に並ぶ16勝をマークしました。

先日、パドレスと42歳まで契約の延長を交わしました。

松坂さん:「メジャーで結果を出すために大事にしてきたものはありますか?」

ダルビッシュ投手:「アメリカって日本に比べて時代が進んでいくのが早いというか、すごくオープンマインドで色んな国籍の方がいる。色んな情報も入ってくるので、時代の変化についていくことがすごく大事だと思ってます。というのでは、時代の変化をちゃんと感じ取る、ちゃんと勉強するというのは一番大事にしているところです」

松坂さん:「これは日本の選手だけじゃなくて、指導者にも聞いてもらいたい話だと思います。今後ダルビッシュ投手が思い描くピッチャーの理想像は?」

ダルビッシュ投手:「理想像としてはいつも思うんですけど、やっぱり170キロぐらい投げて、すべての変化球投げられて、コントロールも完璧でっていうところだと思う。そこはずっと目指したいというところでは、ずっとあります。今回、長い契約していただきましたけれど、松坂さんも分かると思うんですけど、シーズン中って精神的にすごくきつい。なので、とにかく一日一日、きょうを一生懸命頑張るというところを心掛けながら、理想とするピッチャーに近付いていきたいなと思います」

(「報道ステーション」2023年2月28日放送分より)

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