バレーボール男子日本代表キャプテンで、イタリア1部リーグ・セリエAのペルージャに所属する石川祐希選手(29)。松岡修造さんがインタビューしました。
チャンピオンズリーグ日本男子初、チームとしてはヨーロッパ26カ国35チームの頂点に立ちました。石川選手にとっては、かつてない1年の挑戦がありました。その中で、集大成ともいえる最高のプレーが一番大事な場面で出ました。
■強豪へ移籍 試練と快挙の1年で得たもの
日本男子初の快挙が生まれた翌日、松岡さんが話を聞きました。
「優勝おめでとうございました。どんな思いでいらっしゃいますか?」
「今回準決勝も活躍できて、決勝も20点取れて、それで優勝して、良い結果をつかめたので。うれしい思いと誇らしい思いと。いろいろなことが同時に自分の中に入ってくるシーズンだった。めちゃくちゃ学んだことは大きくて、充実したシーズンだったことは間違いないです」
「いろいろなことが同時に入ってきた」というこの1年。それは一体、どんなものだったのでしょうか?
イタリア10年目となった今シーズン、石川選手は各国のスター選手たちがそろう強豪・ペルージャへ移籍しました。
これまではスタメン出場が当たり前だった石川選手ですが、シーズン前半、スタメン出場できたのは11試合中わずか3試合。今までのバレー人生で初めてのことでした。
そんな強豪チームでの練習をのぞいてみました。
これまでは、あらゆる技術が一流のオールラウンダーであることが最大の武器だった石川選手。しかし、このチームではレシーブやトスなどあらゆる技術の見直しが求められました。中でも、大きな変化が必要だったのは「スパイク」です。
■新チームの方針「とにかく強く打ち抜く」
「プレーでは、スパイクに関しては監督から『強く打て』と言われていた」
「とにかく強さでいきなさいと。今までとは違うことを言われたわけですよね、監督から」
「(これまでは)無理なボールは打ちにいかず、リバウンドをもらったりそういったことをやっぱりしていましたね」
これまでの石川選手は、ブロックが立ちはだかる不利な状況で無理をせず、あえて相手ブロックに当てることで攻撃を仕切り直し、次のチャンスにつなげてきました。
しかし、新たなチームでの方針は「とにかく強く打ち抜く」。不利な状況でも「打ち抜くスパイク」を求められていたのです。
「新しいこと、今までやっていたことと違うことなので、違和感や最初はうまくいかなかった。それでも、継続し続けることは大事なので、そこは継続し続けていました」
「自信として得たものは何だと思いますか?」
「チャンピオンズリーグ決勝の第5セット12対10の場面。ハイボールのスパイクをコートの角に決め切った時が一番良かったなと思います。今シーズンやってきた成果が、特にスパイクに関してはあの一本に詰まっていると思います」
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■「楽しいな」と思える状況を作り出す■「楽しいな」と思える状況を作り出す
スタメンに抜擢(ばってき)されたチャンピオンズリーグ決勝。セットカウント2対2で迎えた最終第5セット。優勝まであと3点の場面。ブロック3枚が立ちはだかる不利な状況で、強く打ち抜いた石川選手。これまで選択肢になかったプレーをものにしたこと、それが「大きな自信」につながっていました。
「4セット目の後半は『俺に球をくれ』と言っていたので。『俺にトスを上げて』と」
「ちょっといいですか!普段から『俺にくれ』と言ってるんですか?」
「あまり言ってないです。遠慮してたわけではないですけど、いいアタッカーはいるので」
「なぜ言ったんでしょう?」
「『俺が決める』みたいな雰囲気をあの試合では持っていたので。自分に余裕があったというか、『楽しいな』と思える状況を自分で作り出せるかというか、そういったところが重要だなと感じました」
■10年目でも「謙虚さが石川選手の武器」
「清々しい堂々とした表情に感じたんですが、石川選手といえばオールラウンダーで頼れる日本代表の柱、キャプテンというイメージだったんですが、まだまだ進化中ってことですね」
「そこを踏まえて、インタビューで感じていたのは、石川選手の何が武器かというところです。謙虚さというのは、本当に石川選手の武器なんだろうと思いました。世界的な選手で、しかもイタリアリーグ10年目のスター選手です。チームが変わって監督も変わって、スパイク・レシーブすべてのことで指導があったわけです。普通なら自分のバレーを否定するんですかって、そんな思いになってもおかしくないです。でも、石川選手は違いました。やってみようって、もしかしたら伸びしろとしてチャンスなのかもしれないというチャレンジ精神があった。結果的には、ちゃんと自分のバレーが進化していった。これは指導者としては信頼できますよね」
「インタビューされていてもスター特有のというか気取り、てらいみたいなものが一切ないですね。本当に素直に自分の伸びしろだけを見て頑張っている。そういう印象ですよね」
「海外で生き残るのは自分を出さなきゃいけないというのがあるかもしれませんが、謙虚でいるというのも一つ大事なことだと感じました」
「日本のバレーボールの未来は明るそうです」
(「報道ステーション」2025年5月22日放送分より)