近年、Bリーグはビジネス面で注目されています。
Bリーグと各クラブの総売り上げは、2018年から2025年まで、右肩上がりの売り上げとなっています。なぜかというと、「B.革新」という新しい制度と向き合ってきたからです。
しかも、来シーズンからこのリーグの形が変わります。
これまでの競技成績で決まっていた昇降格が廃止になり、事業成績で昇降格が変わります。まさに、Bリーグが未来を変えていきます。
■Bリーグが世界初の経営改革
近年、大躍進を遂げたBリーグ。その旗振り役を担ってきたのは、島田慎二チェアマン(54)です。
「勝負じゃないところで生き残るシステム、世界中どのリーグもないですよね?」
「世界初です。経営が大事。スポーツの世界は経営の本質に迫る前に、アスリートや競技に目がいってしまって。良い成績をあげたり、世界に通用する選手が出たらスポンサーも集まる。でも、それは不確実性が高くて、もしトップオブトップの選手が現れなかったら、その冬の時代どうやって乗り切る?資金がなければ強化も図れない。ビジネスから逃げない」
打ち出したのは持続的な経営改革。そのため、6年前から始動した「B.革新」では、各クラブに3つの厳しいハードルを設けました。
平均入場者、1試合4000人以上。年間売上、12億円以上。観客5000人を収容できる大規模アリーナを持つこと。これらすべてをクリアできないと、最上位カテゴリーの「Bプレミア」に参戦できないようにしたのです。
当初、クリアできていたクラブはありませんでした。
そこで島田チェアマンは、自ら先頭に立ち、斬新な取り組みを始めます。「BMB」という勉強会です。
なんと、チェアマンがクラブの代表者たちに経営ノウハウを伝える場を設けたのです。
さらに斬新だったのが、各クラブの成功事例を共有させたこと。
例えば、シーホース三河の資料を見ると、1年目はホスピタリティ調査で最下位でしたが、3年目には日本一に。専門講師によるスタッフへの教育を徹底したことが理由でした。
企業秘密ともいえる情報を全クラブに明かしたのです。
「『あまり手の内を見せたくない』というのがスポーツ界あるあるだと思います。ただ、Bリーグはそんなこと言わないで、みんなで出し合って、みんなで成長して、もっと高いフェーズで、もっと大きな果実をみんなで得るぞと」
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■「まず地域に貢献」理念体現のクラブ■「まず地域に貢献」理念体現のクラブ
「B.革新」の理念を体現しているクラブの一つが、京都ハンナリーズ。この3年間で、スポンサー企業の数を140社からなんと340社まで増やしました。
原動力となったのは松島鴻太社長(34)です。
象徴的なのが、地元企業とコラボ販売しているビール。実は、「飲めば飲むほど海がきれいになるビール」なんです。
日本三景の一つ・天橋立で環境問題の原因となっているカキの殻。そのミネラル分を利用して造っています。
この取り組みはSDGsの観点から大いに評価され、さらなるスポンサー増加につながりました。
一方、試合前に県民歌を斉唱することが恒例の秋田ノーザンハピネッツ。首都圏との経済的格差が大きく、年間売上とアリーナ建設がネックになっていました。
しかし、3年後に完成するホームアリーナは総額325億円。その大部分を県が負担してくれることになっています。
クラブとの交渉に応じた佐竹敬久前県知事(77)はこう話します。
水野勇気社長(42)はこう話します。
郷土愛を示せる場は、アリーナだけではありません。
バスケ以外の事業にも力を入れ、秋田ファーストを徹底しました。
たとえば、秋田県産の小麦を使ったパン屋を運営。秋田県の名産品を販売する道の駅。さらには、秋田市内でこども食堂も運営しています。こうした秋田ファーストの積み重ねが県民の心をつかみ、Bプレミア参戦につながったのです。
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■来シーズン 26クラブがBプレミアに参戦■来シーズン 26クラブがBプレミアに参戦
それぞれが経営努力の末に成長を遂げ、迎える来年のシーズン。Bプレミアには26クラブが参戦します。
「大事なことって、時間がかかったとしてもフルハウスを目指すべきであると思っていまして。チームが魅力的、経営も良い、ファンの満足度高い、日本代表も強くなる、全部良くなっていくべきだと思っています」
「未来が見えているわけですね」
「未来は作るもの。決めた以上はそれを結果を出して示す。みんなで向かっているのが、今のBリーグ」
■松岡さん「スポーツの形は変わらなければ」
「発想の転換にビックリしましたけど、事業努力によってチームの魅力や人が集まる、そしてチームの強さにつながるという。大きな目ではそういうことなのかもしれないですよね」
「この革新は今の日本に必要なんだなと僕は感じました。そして、島田さんの情熱とか行動力ですよね。僕、ずっとスポーツっていうものに関して、波がありますから。『強い選手がいればな』『今、勝てなくてもしょうがない』。これは言い訳になっている。でも、それに逃げたら未来なんて作れないですよ。島田さんの言葉を聞いて、考えさせられたし、本当にスポーツの形は変わらなきゃいけないんだなと感じました」
「日本のスポーツって、精神性を重視してビジネスライクなこととは対極にあるというイメージで捉えがちだったんですが、良いビジネスというのは、良いスポーツを育てるし、良い地域を育てるし、良い選手たち、ファンを育てる。そこがうまく循環すると本当にフルハウスというか、まさに本当に力になりますよね」
「それはつながっていくと思いますね。勝ち負けということにこだわっているスポーツから時代は変わったのだろうなと。ビジネスに関して信頼感を得られていますし、ファンの満足度も得ないといけない。フルハウスを目指さなきゃいけないということですね」
「未来を切り開くカギになるモデルかもしれませんね」
(「報道ステーション」2025年5月30日放送分より)