“一品で勝負”の理由…一皿に込めた“こだわり”「味変」「寝かせ」「とろみの秘密」
スーパーJチャンネル
[2024/03/17 11:00]
元居酒屋店主が勝負するのは「サバ丼」。一品だけど3度おいしい秘密がありました。
一方、江の島の「フレンチトースト」専門店。おいしさを追及した結果…。フランスパンをワインセラーで寝かせる!?
そして、老若男女に愛される「豚汁」勝負する店。一品だけにした理由は、店長のもう一つの顔にありました。
■同じ味だと飽きられる…1杯で3度おいしい「味変」
「いいにおいだなと思って来ちゃいました」
焼きあがる香りが食欲をそそる、サバです。水道橋駅近く、昼時は行列ができる「さばめし鯖匠」。客の多くは男性ですが、中には女性の姿もあります。幼い子どもまでいます。
「パリパリで、ふっくらしていておいしいです」
「香ばしくておいしいです」
店名の通り、この店で提供する一品は、丼からはみでた脂ののった大きなサバ!このシンプルなさばめしは、950円です。
その食べ方に、こだわりがあります。まずは、そのままいただきます。
続いて、三つ葉とカイワレダイコンなど薬味を乗せると、さわやかさも増して、すっきり食べられる感じで「味変」します。
最後は、真鯛のだしをかけてお茶漬けにします。上品な味で、サバの脂のうまみに負けないくらい、だしの味がしっかりしていて、風味があります。
丼に乗っただけの至ってシンプルなさばめしですが、自分好みの味変で、色んな味を堪能できるのです。
「お茶漬けもおいしいです」
「全部おいしかった。選べない。(味を)変えなくてもいいけど、変えたら3回楽しい」
サバは、通年脂ののったノルウェー産。毎日150匹届き、それを、一つひとつ骨抜きしていきます。
「これは手作業でないと、なかなか上手に抜けないので。これが一番しんどい」
骨抜きを使って、残った小骨を3時間もかけ、丁寧に抜いていくのだといいます。
焦げないように、それでいて中まで火を通す火加減も熟練の技がいるのだとか。
なぜ、さばめし一品なのか?実は、店長の泉谷さん、以前は居酒屋を経営していたのですが…。
「コロナ禍で居酒屋がダメになって。一度、一品に集中してやってみたいなという思いはずっとあって」
居酒屋で人気のメニューだった、さばめし1本で店を始めることを決意。とはいえ、同じ味だと飽きられてしまう。そこで、思いついたのは1杯で3度おいしい「味変」だったのです。
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■仏から来た客も太鼓判の「フレンチトースト」■仏から来た客も太鼓判の「フレンチトースト」
続いてやって来たのは、湘南のシンボル・江の島です。
頂上まで登ると見えてきたのは、オシャレな外観の「LONCAFE」。海が一望できて、まるで海外のリゾート気分が味わえます。
客のお目当ては…。
「すごいフワフワして、おいしいです」
「甘すぎなくて、さっぱりして食べやすい」
「おいしい」
食事のメニューはフレンチトーストのみ。1番人気はバニラアイスと大きなブリュレが乗った「濃厚クリームブリュレ」1628円です。
この他、季節の果物を乗せた「ベルギーショコラオレンジ」など、フレンチトーストは全部で10種類です。
創業から、まもなく21年を迎えるLONCAFE。最初は他にもメニューがあったといいます。
「最初は普通に喫茶店をやって、いろいろメニューがあった中で、フレンチトーストしか注文されなくなって」
当時、フレンチトーストを提供する店は今ほど多くなかったこともあり、大人気に。そして開業から数年後、フレンチトースト専門に店を変更。こだわりの一品をとことん追求していきました。
「ワインセラーの中に、フランスパンを入れています」
ワインセラーの中に、大量のフランスパン。一体なぜ、こんなことを?
「フレンチトーストは“時間が経ったパンを再生させる”という意味。その状況を強制的に作るために、うちでは一日寝かす」
そもそもフレンチトーストは、硬くなって食べられないパンを牛乳などで浸し、柔らかく生き返らせる料理なのです。
店では、あえてパンを硬くするために湿度を一定に保つワインセラーで寝かせていたのです。
今回、特別に硬くしたパンを試食させてもらいました。パンは確かにちょっと硬め、しっとりしているけど硬く、絶妙なラインです。
パンを硬くすることで、卵や牛乳などを混ぜた液体に浸した時、中まで吸い込むのだといいます。
それを低温でじっくりと焼いていきます。ミルクの甘さ、バターの香り、メープルシロップの甘みもあってしっかりと味がしみ込んでいます。ボリュームはありますが、ふわふわだから軽く食べられます。
こだわり抜いたフレンチトーストを海を眺めながらいただく、ぜいたくな時間。フランスから来た客も太鼓判です。
「フランスにあるフレンチトースト。とてもおいしい」
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■なぜ豚汁だけ?“もう一つの顔”にワケが■なぜ豚汁だけ?“もう一つの顔”にワケが
神楽坂駅から徒歩10分の「とろ〜り豚汁めし八百食堂」、1日100食売れる人気メニューは…。
「野菜のトロみとか甘味がすごく感じられる」
「続けて食べても飽きない。シンプルだから、いいんじゃないですかね」
客をとりこにするのは豚汁。こちらの定食は、ごはんが付いて700円。ごはんは、米のコンクールで特別優秀賞を何度も受賞した「とねのめぐみ」を使用しています。
とろみがウリの豚汁。店長のこだわりが、ふんだんに詰まっていました。
「ゴボウ、ダイコン、ニンジン、ジャガイモ、イモはとけてもいいけど、他は形が崩れにくいものを入れています」
とろみの秘密は、1つのイモにありました。下ゆでをして皮をむいたものは煮崩れしやすく、もう一つは皮付きにして形を残すことで、とろみと食感を同時に生み出していました。
そして、味噌にもこだわりがあります。白味噌をベースにオリジナルでブレンド。まろやかな甘みと麹(こうじ)の香りが特徴です。
コトコト煮込むこと2時間。最後に豚バラ肉を入れて火が通ったら完成です。
「やっぱり、このトロトロ感。野菜が溶け込んでいるような感じ、おいしい」
いくらおいしいとはいえ、なぜ豚汁だけなのか?それは店長の早川さんの、もう一つの顔にワケがありました。
「当社は不動産会社なんですよ」
実は、この店、不動産会社が新たな事業として展開していて、早川さんは専務取締役。料理を作るのは、不動産会社の社員だったのです。
一品で勝負の理由。それは、飲食業界の経験がないスタッフには、複数のメニューが作れないためでした。
「毎日来るときもあるし、うちで豚汁なんて飲まない。店の人たちが『いらっしゃい』と…気分よく食べている」
老若男女に愛される豚汁定食。開業から2年が経ち、今後はメニューを増やすことを検討しているそうです。