“極せまグルメ”小さな七輪が生む奇跡 開店以来…300組以上の“カップル誕生”
スーパーJチャンネル
[2024/05/18 11:00]
![](/articles_img/900002307_1920.jpg)
親子丼にみそ汁が付いて300円。東京・蒲田にある店の広さは約5畳。定点で観察すると、奥の客が出るのに手前の客がいったん外へ…。
浅草にある本格ベトナム料理店は約4坪。珍しい料理が食べられると客がやってきます。狭さも店の魅力。客同士の距離が近く仲良くなり、料理をシェアする様子もあります。
神田にある焼き肉店は2.2坪、約4畳。テーブルを囲み客は立って食べます。焼肉盛り合わせはA5ランクの牛のリブロース、牛タン、ヒレ肉など6種類で1000円。七輪が2つしかないので、初めての客同士でも会話が弾み、開業から15年で300組以上のカップルが誕生したといいます。
■小さな店に詰まった“大きな夢”
蒲田駅から徒歩3分。1年半前にオープンした「親子丼ヤマカ1」。店内は、わずか2.5坪およそ5畳という狭さです。
客席は壁に設置された、幅10センチほどの棚のようなもの。そんな狭い店に、わざわざやって来るのは…。
「300円は安いですよ」
「まさか300円で、こんなおいしい親子丼を食べられるなんて」
ワンコインでお釣りがくる、激安の親子丼。“極せま”の店で提供するのには、店主の秘めた大きな夢がありました。
カウンターの前に人一人立つのがやっとの店内。奥の席に行くのも一苦労。この状況は、日常的に起きていました。
食事中、電話が鳴り表に向かう客。入り口付近の男性は、いったん外へ。アツアツの料理がテーブルに出され、食べていると、先ほどの客が戻ってきます。男性は再び外へ、手に丼(どんぶり)を持ったままでした。奥の席は、入るのも出るのも他の客の協力が必要なのです。
そんな思いをしても客が来るのは、半熟のたまごでとじた300円の親子丼があるから。激安だからと、侮るなかれ、たまごは空気を含んでいるようにフワフワで、口の中でとろけます。
お肉はだしの味が染み込んでいて、やわらかくて、くどくはない甘さで食べられます。
客をとりこにするくどくない甘さ。その秘密は、しょうゆにありました。
「うちのしょうゆは、九州の(大分県)臼杵でつくっている甘じょうゆなんです」
みりんを使わず、甘じょうゆと砂糖で仕上げるため、後を引かない甘さになっているのです。そのダシで鶏肉を煮込み、たまごを2つ使って手早くとじます。フワトロのたまごに、ほどよい甘さの親子丼が完成です。
年金受給者でも気軽に食べてもらうため、価格を300円にしていますが…。
「赤字です。(家賃が)高いんです。使っていないけど、2階があるんです」
客席が倍以上ある店と家賃は変わらないといいます。にもかかわらず、今は使われていない2階の部屋。実は…。
「券売機があるんですけど…。物価高とかで、格差が広がってしまって、食事できない子どもがいる。2階で(無料で)食べてもらうという活動をゆくゆくはしたい」
賛同者を募り「子ども食堂」の実現を目指す店主。“極せま”店には、未来ある子どもたちへの熱い思いが詰まっていました。
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■“極せま”で…メニュー増加の理由■“極せま”で…メニュー増加の理由
続いてやってきたのは、観光客でにぎわう東京・浅草。地下鉄から直結の「浅草地下街」にある、ベトナム料理店「オーセンティック」。
こちらも4坪に満たない“極せま店”ですが…。
「生春巻きと揚げ春巻き」
「青パパイヤとエビのゴイ」
「レモングラスのひき肉そぼろご飯」
次々に本格的なベトナム料理が注文されます。メニューの数は40種類にも上ります。“極せま”ゆえに豊富になったメニュー、そのワケを追跡です。
「飲んだら、とろみがすごくあって、こんなの初めて飲んだ」
日本ではめったにお目にかかれない、ベトナム南部の料理。紫ヤマイモを使ったスープです。沖縄・宮古島から取り寄せた紫ヤマイモは、色と粘り気が強いのが特徴です。それを丸鶏のスープで伸ばします。
そのお味は、食感としてはサトイモとヤマイモの間、鶏の優しいスープに塩コショウで味がしまっている感じです。
人気なのは、ベトナム料理の定番フォー。丸鶏でとったスープに、バジルやミントなど複数のハーブをトッピング。ベトナムの麺は、少し平たいのが特徴です。
腕を振るうのは、中塚麻美子さん。今は店が狭いため、一人で切り盛りしています。
厨房(ちゅうぼう)に入らせてもらうと、動けるスペースはまさに立って半畳ほど、体を回転させるので精一杯ですが、狭い厨房にもかかわらず40種類ものメニューを作るのは、その狭さも理由だというのです。
「お客様にも『フォーだけにしたら?』と言われるが、(スープを)置く所がない。家の冷蔵庫とかに置いてあって、定期的に持ってきているんですよ」
さらに、食材や調味料などは、まとめ買い。そのためメニューを1品にしてしまうと、減りの早いものと遅いもので偏りができ、ロスにつながると言います。メニューを増やすことで、これを解消していたのです。
一方で、狭さゆえのメリットもあるといいます。料理をシェアし、初対面の客同士で交流が生まれていたのです。
「距離が狭くて、会話ができる。お客様同士が仲良くなることも。盛り上がって。そういうのが、すごく楽しいと思います」
本格的なベトナム料理が味わえる店。狭さから生まれる客同士の交流も味のエッセンスになっていました。
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■激安のA5和牛…小さな七輪が生む奇跡■激安のA5和牛…小さな七輪が生む奇跡
15年前にオープンした立ち食い焼肉の店「六花界」。ここも広さは2.2坪、4畳ほどしかありませんが、次々に客がやってきてギュウギュウ詰めです。
お目当ては、A5ランクの和牛が、驚きの値段に。“極せま”の焼き肉店で、小さな七輪が数々の奇跡を生み出していました。
夜7時すぎ、テーブルを囲むスーツ姿の5人の客がいました。
「(Q.どういうグループですか?)グループではない。全員1人です」
店に置かれた七輪は2つ。これを客同士でシェアしていました。
食べていたのは、焼肉盛り合わせ。A5ランクのリブロース、さらに牛タン、ヒレ肉に近いカイノミなど、6つの部位が入ったこちらは、お値段なんと1000円です。
そして、フランス料理でよく使われる仔牛の胸腺、リード・ヴォーです。
A5ランクの和牛が、一体なぜ、ここまで安く提供できるのでしょうか?
「牧場と提携させてもらって、2頭から始めたけど、今は500頭を超えている」
九州の牧場に自社の牛を預け、大幅にコストカット。さらに、系列の高級店に卸した肉の“端っこ”。そこでは使わない部分を仕入れていたのです。
激安の極上肉を求め、早い時間から店内はすし詰め状態。この日は、2つの七輪を10人で囲みます。その結果…。
「すいません。タレ行きますね」
移動できない店員に代わって、客同士でまさかの“バケツリレー”。さらに…。
「ちょっと空き瓶いくよー。あと2本行きます」
誰に言われることなく、今度はケースから新しい酒を手渡し。まるで店員です。
常連じゃないと入りづらいような気もしますが、こちらの女性は初めて来店、しかも1人でした。となれば、こんなことも起こります。
「ここきっかけで、結婚です」
オーナーの森田さんは、ここで知り合った客同士の結婚式に何度も呼ばれています。2009年の開店以来、誕生したカップルはなんと300組以上だといいます。
「『肉焼けていますよ』みたいな、コミュニケーションが生まれることで、就職が決まった人もいれば結婚した人もいる。小さい七輪1個でみんながコミュニケーションできるというのが良いですよね」
肉は、その日のうちに使いきるため、遅い時間は売り切れることもあるのでご注意を!