成田空港の「動植物検疫所」 最前線の攻防を追跡 禁止品急増…違反3回目の人も
スーパーJチャンネル
[2024/04/06 11:00]
訪日外国人が増えるなか、急増しているのが、海外からの「持ち込み禁止品」。そんな「持ち込み禁止品」を検査しているのが、成田空港動植物検疫カウンターです。“水際対策の最前線”の攻防を追跡しました。
■「違反3回目」女性 禁止品が続々
成田空港の動植物検疫カウンターでは、伝染病や植物の病害虫などが日本に侵入しないように、肉や野菜、果物などの検査を行っています。
韓国からの女性が持ってきたスーツケースと大きな発砲スチロール箱の中を確認していきます。すると、中からは…次々とビニールに入ったキムチなどの漬物が出てきました。
「これは何?」
「これ分かりません」
「生のネギ?」
この塊は豚肉で作ったおやつ。肉製品は持ち込み禁止です。
さらに、出てきたのが、生のトウガラシ。
「トウガラシも証明書がないと輸入できない」
「なんで?洗ったのに」
「洗ってもダメ」
他にも、輸入が禁止されている野菜が次々と出てきます。ニンニクの芽やレタスなど、全部で5種類の生野菜が没収されました。
「パスポート見せてくれる?」
「今までに2回持ってきてますよね?」
実は、この韓国人女性は今回でなんと3回目の“違反”でした。検査官は女性に警告書を手渡します。
女性は警告書を受け取り、足早に立ち去りました。
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■「私の荷物じゃない」ビニールに入った謎の果物■「私の荷物じゃない」ビニールに入った謎の果物
スリランカからの女性が持ってきた、3つのかばんの中には様々なお菓子や食料など、色々なものが入っています。すると、かばんの中から、ビニール袋に入った禁止品を発見します。
「スリランカからはこの果物は持って来られないんです。パスポートを貸してください」
「(友達から)預かっている荷物なのでごめんなさいね。私のじゃない」
「預かった荷物でも持っていたら、自分の責任になっちゃうから気をつけてください」
「自分のものではない」と訴える女性。持ち込もうとされた禁止品は…。
「卵の木という果物と、タマリンドという干した果物」
大きさと形から、卵の木というマレー半島産の果物、タマリンドという干した果物とともに没収。その後、焼却処分されます。
生の果物・野菜、肉製品は加工品を含め、ほとんどが持ち込禁止。違法に持ち込んだ場合、懲役または罰金が科せられる可能性があります。
外国人客の増加とともに持ち込み禁止品の件数は増え、去年は過去最高を更新しました。
この最前線で活躍しているのが、鋭い嗅覚で知られる「動植物検疫探知犬」です。この“おすわり”が“発見”の合図です。
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■手作り料理が、ペットボトルと鍋から続々■手作り料理が、ペットボトルと鍋から続々
通路の真ん中に、なぜかポツンと残された6つの手荷物がありました。
「検疫探知犬」が臭いをかいでいきます。すると、検疫探知犬がしゃがみました。果物や肉類が入っている可能性があります。しかし、荷物の持ち主は見当たりません。
しばらく待つと、中国人の夫婦がやって来ました。
「話してる時間なんてない。ただでさえ着いて30分も経ってるのに」
時間がないと訴えますが、カウンターへ移動し、荷物の検査を行います。
スーツケースを開け、衣類の下から出てきたのは、ペットボトルいっぱいに詰められた何やら茶色く丸い物体が2本。
「1つ取り出してもいい?」
「いいけど、毒でも疑っているの?それなら私が1つ食べるから」
「毒を疑っているわけではありません。少し待ってもらえますか」
茶色く丸い物体は、どうやら「卵」のようです。
「これは茶葉蛋(チャーイエダン)よ」
茶葉蛋という、卵を茶葉や香辛料と一緒に煮込む中国の家庭料理でした。
さらにスーツケースから大きな鍋が出てきました。ふたを開けてみると、中には小さく丸いものがぎっしりと入っています。ほぐして何かを確かめます。
「中には何が入っていますか?」
「ゴマと加熱したクルミとピーナツ、あとは砂糖」
もち米で作った団子だといいます。
「これも取られるの?ここで食べてはダメなの?」
さらに、その下からは数十個の手作りの餃子が出てきました。
「冷凍した餃子よ」
「息子たちのために作って持ってきたのよ」
実はこの女性、日本で暮らす息子の妻が出産したばかりで、2人を労わろうと、料理を手作りしてきたといいます。しかし…。
「中に肉が入ってると持ち込めません」
「加熱してあるのに?」
「そういう問題ではありません。切って確認しますね」
餃子の中身を確認すると、確かに肉が使われているようです。
「持ち込めないのなら別にいらないわよ。時間の無駄じゃない」
検査の結果、煮卵と団子は持ち込みが可能。肉が使われている餃子は持ち込み禁止でした。
女性は、愛する息子夫婦のためにと作ってきた餃子を持ち込めず、怒りが収まらない様子です。
「1キロの豚肉と牛肉が無駄に捨てられました。何を話すって、もう汗だくよ」
夫婦はロビーで待っていた息子と合流。日本でおいしい餃子を作ってあげてください。
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■福岡→東京 6週間かけて自転車旅■福岡→東京 6週間かけて自転車旅
世界中から、多くの人が集まる成田空港。その荷物にも様々な思いがありました。
ひときわ大きな荷物を運ぶ男性。この大きな箱、何ですか?
「自転車が入っているよ。バッグ、服、テント、寝袋などもね」
マーティンさんは、キャンプをしながら、1人で世界中を自転車で旅しているそうです。
「誰にも頼らずに、自由にどこへでも行けるところが最高なんだ」
この後、飛行機で福岡へ行き、6週間かけて東京に自転車で戻ってくるといいます。
後日、マーティンさんから旅の途中報告がありました。
「これが僕の自転車だよ。神社やお城、最高の温泉に行ったよ。食べ物もおいしい。きょうも長くてハードな1日になるけど、良い天気だよ」
■ライブのため、アメリカから1人で日本に
アメリカ人のミケイラさん(25)。大事そうに見せてくれたのは…。
「ママにクッキーを焼いてもらったの。会場で配るためのね」
アニメ「寄生獣」の主題歌がきっかけで日本のロックバンドのファンになり、ライブのため1人で日本に来たといいます。
クッキーには、今回のライブイベントのタイトルが書かれています。
「クールなのよ。音楽を見事にまとめているし、パフォーマンスはとってもエキサイティングなの」
この後、神戸でのライブは、ママの手作りクッキーを配り、日本のファンとの交流を楽しんだそうです。
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■すべての「カレー」を確認 警戒する訳は?■すべての「カレー」を確認 警戒する訳は?
この日、動植物検疫カウンターに来たのは、スリランカからの男性2人組。大きなスーツケース3個に、いっぱいに詰められていたのは、大量の食材やスパイスです。
さらに、なにやら液体が入った容器が次々と…こぼれだしているものもあります。一つひとつ開けて確認。中身はカレーのようです。
「お肉入ってますか?」
「野菜カレー」
「ミート?」
「いや、野菜だよ」
カレーの具材でも、肉の持ち込みは禁止です。男性たちは「野菜カレー」だと話しますが、検査官はすべてのカレーを確認します。結果、肉は使われていませんでしたが、このように警戒するには訳がありました。
実は、特に今、「アフリカ豚熱(ASF)」がアジアへも拡大し、韓国でも確認され、日本では水際対策が強化、厳戒態勢がとられています。
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■「肉は入っていない」と主張する中国人女性■「肉は入っていない」と主張する中国人女性
「これは持ち込んでも良いでしょう?」
「お肉使ってます」
「肉は入ってない。ネギと油とゴマだけ」
何があったのか?警戒中の「肉」でもめていたのは、中国・福建省からの女性。
「違う、よく見てよ」
「油があるじゃないですか」
「餅(ビン)」という中国のお餅、検査官は中身を見て確かに肉だと確認、女性にも見せますが…。
「肉ではない」
「いやいや…肉です」
日本で暮らす娘の大好物を、福建省の店で買ってきたといいます。
「ゴマとネギです」
「ゴマとネギだけじゃない、お肉入ってる」
肉だと認めなかった女性ですが…。
「もういい。ダメなら捨てます」
「どう処分するかは、こちらが決めます」
「じゃあ、もういりません。知らなかったんだから」
茶色の紙袋に十数個入っていましたが、すべて持ち込み禁止です。
「留学している娘が食べたいといったから」
「(Q.残念でしたね)大丈夫、大丈夫。早くここを出たいわ」
日本と世界をつなぐ、成田空港。その裏側では、きょうも日本の安全を守るため厳しい検査が行われています。