日本一の回転寿司職人を目指す…熱き戦い 接客審査では“意地悪なワナ”も
スーパーJチャンネル
[2024/06/16 11:00]
![](/articles_img/900004053_1920.jpg)
知る人ぞ知る回転寿司の大会が開かれました。その名も、「全日本回転寿司MVP選手権」。日本一の回転寿司職人を目指す、熱き戦いを追跡しました。
■“ハマのスピードスター”前回王者と練習
去年の大会でチャンピオンを出した人気回転寿司チェーンです。関東を中心に11店舗を展開する「まぐろ問屋 三浦三崎港」。名物はもちろん、このマグロです。
「カマトロです。ありがとうございます」
カマトロとは、エラの後ろの部分。希少部位です。
「良かったね。マグロだよ」
今年の大会に出場するのは、この店舗の店長・村山弘朗さん(37)です。
村山さんの武器は“高速にぎり”です。誰が呼んだか“ハマのスピードスター”。
「かなりプレッシャーがありますが、がんばるのみ」
この日、村山さんはある場所へ行きました。
村山さんの先輩、矢後潤一郎さん(46)。去年の大会のチャンピオンです。優勝すると、お店の売り上げアップが見込めるといいます。
「初めての客も『優勝した人がいるから』って、また来てくれる」
この日は、チャンピオン相手に本番と同じ条件で練習に挑みます。
大会では巻物3皿、軍艦2皿、マグロ5皿、サーモン5皿を6分以内でにぎります。
にぎりになると、村山さんが一気にスピードアップ。チャンピオンを引き離しにかかります。
5分を切ると、25点も加算されます。一方、チャンピオンは5分50秒。およそ1分も差がつきました。ところが…。
「ちょっと細かいミスが多すぎる。シャリが飛んでいるとか、ワサビが出ているとかあるので。マイナス2点ずつとられる」
大会では速さだけでなく、美しさなども採点の対象になるのです。
「私よりもスピードはあるので、スピードの加点は意識してもらって。それにマイナスをなくせば、自分より点数がいくと思います」
「がんばります」
次のページは
■若いがウデは確か…“秋田のダークホース”■若いがウデは確か…“秋田のダークホース”
回転寿司の大会には、秋田県からも参戦するお店があります。県内に2店舗を構える回転寿司店「太助寿司」です。
このお店の“若大将”永田昇さん(29)。大会出場は今年で4回目。“秋田のダークホース”です。
「毎回プレッシャー感じるけど、今回は異常。プレッシャーがいつもより大きくなっている」
お客さんからも愛されています。
「(大会に)いつも出てるから『昇、がんばってこい』って。昇な、ババな」
「永田さんファンです」
「ありがとうございます」
永田さんが大会に初めて出たのは22歳の時。それから7年、4回目の挑戦です。
「(Q.貫禄が出てきましたね)貫禄というより、ただ太っただけ」
店長の板取さんは、永田さんの師匠です。
高校卒業後、師匠に育ててもらった永田さん。2回目に出場した大会では、技術部門1位を獲得しています。
「5分11秒」
「5分切りそうな勢いではある」
「切れるね、5分。5分以下の25点、大きいですもんね」
「若いけどウデは確か」と、師匠も太鼓判をおしていますが…。
「問題は“演出部門”ですね。彼が苦手としているところですね」
接客を披露する「演出部門」では、予期せぬ事態への対応力も採点されます。
「こればっかりは練習したらできるとか、そういうもんじゃないですからね。常日頃どういう仕事をしてるかが当日出ると思う」
大会ではお寿司の知識も問われるため、師匠は永田さんに様々な経験をさせています。
回転寿司店では、板場の職人が仕入れの現場を見ることは稀です。
「(Q.選手権でも知識が生きる?)生きると思います。実際に見たりしているので」
師匠にとって愛弟子の優勝は悲願です。この後、“秋田のダークホース”が波乱を巻き起こします。
次のページは
■“がってんパパ”に…初代王者が助言■“がってんパパ”に…初代王者が助言
一方こちらは、大手回転寿司チェーン「磯のがってん寿司」。がってん寿司グループは、全国に77店舗を展開しています。
新鮮さにこだわるこのお店。旬のアジをその場でさばく「泳ぎアジ」。生きたアワビを丸ごとのせた軍艦もあります。あまりの活きのよさに、お客さんもビックリです。
「逃げて、ここまで来ちゃった」
がってん寿司グループは、第1回、第2回の大会を連覇したものの、近年はあと一歩のところで優勝を逃しています。
そこで今回、およそ300人の社員の中から白羽の矢が立ったのが「磯のがってん寿司 柏増尾台店」の店長・大栗祐人さん(34)。大栗さんは3人の女の子を持つ“がってんパパ”です。
「大会で日本一になって、存在感のあるパパに」
「(Q.存在感が薄れていますか?)否めないですね」
優勝すれば昇進の可能性も。子どもたちに一目置かれる“がってんパパ”を目指します。
そんな、大栗さんに試練が…。全国の店長が集まる「店長会」で、腕前を披露することになったのです。
「だいぶ仕上がったの?」
「はい」
第1回大会のチャンピオンです。80人の店長が見守るなか、本番さながらの実演が始まりました。
大栗さんの課題は、寿司の重さが安定しないこと。大会では、マグロ2貫で68グラム。サーモンは2貫66グラムと決められています。
重さがピッタリなら3点が加算されますが、なかなかピッタリが出ません。
「今のままじゃ勝てない。間違いなく」
でも、こんなアドバイスが。
「柵が高い(厚い)んじゃないか。もし、こういう柵しか残ってなかったら、半分に割ったほうがグラムの調整はしやすい」
魚の柵が厚いままだと、素早く均一のネタを切り出すのが難しくなるので、一度薄くしたほうが良いといいます。
「ありがたいです。言ってもらって。自分で気が付けなかったり細かいところが気付けたので。がってん承知。がってん承知」
次のページは
■17社が参加…「日本一」になるのは?■17社が参加…「日本一」になるのは?
第9回「全日本回転寿司MVP選手権」が開催されました。回転寿司職人の技術と接客の向上を目的としたこの大会。今年は17社が参加。日本一を目指します。
注目を集めたのは、「まぐろ問屋 三浦三崎港」の“スピードスター”村山さんです。
「5分以内に終了でございます」
予選をぶっちぎりで1位通過。“がってんパパ”大栗さんは2位。そして“秋田のダークホース”永田さんは5位通過です。
「ダメだよ、5位じゃ」
この上位6社で、決勝が行われます。
決勝でも“スピードスター”は健在。ところが、ここでアクシデント。ネタが落下…痛恨のタイムロスです。
一方、お寿司の重さが安定しなかった“がってんパパ”大栗さん。
「ピッタリ賞いますか?」
「がってん承知」
ピッタリ賞が出て絶好調です。
さて、“秋田のダークホース”永田さんは接客審査へ。
「どうぞお待たせしました」
客役が“意地悪なワナ”を仕掛けます。
「お客様、お戻しになられるのは困ります」
客役が仕掛けた“マナー違反”を見過ごしませんでした。さらに…。
「サバのしょうが抜きでしたか?」
「イワシ」
「イワシですね。申し訳ございません。たまに、ちょっと間違うんですよ。三歩くらい歩くと忘れちゃう」
自分のミスを笑いに変え、臨機応変に対処しました。果たして“日本一の回転寿司職人”の栄冠は誰の手に…。
「エントリーナンバー4番、『太助寿司』永田昇選手です。おめでとうございます」
「よし。よくやった」
元々あった高い技術力と、愛すべき接客が評価されたようです。ライバルたちも健闘しました。
師匠の悲願をかなえた愛弟子は、こう話します。
「(Q.勝因は?)勝因は、そうですね」
「オレだろ」
「教えてくれた人の教え方が、良かったと思います」
「違う、言い方が。すべてオレのおかげだろ」
「応援してくれた皆様のおかげです」
みなさん、本当にお疲れさまでした!