コメの安定供給に関する初めての閣僚会議が、6月5日に開かれ、コメの増産や農地の大規模化などについても、議論される見通しです。
随意契約による備蓄米が、5キロ2000円台で販売され、事実上の『JA外し』と言われています。
■“JA外し”で2000円備蓄米が席巻 コメの適正価格は?
スーパーでのコメの平均価格は、5月25日までの1週間は、5キロ4260円。
前の週より25円値下がりしたものの、高値が続いています。
現在、市場には4つの価格帯があります。
●銘柄米は、5キロ4453円。
●入札による備蓄米は、5キロ3500円前後。
随意契約による備蓄米は、
●2022年産の古古米が、5キロ2000円台。
●2021年産の古古古米が、5キロ1800円程度です。
「5キロ3000円〜3500円が値頃だと思う。備蓄米が2000円台で販売されると、持続可能な農業ができなくなる」と話しています。
「5キロで3500円〜3600円が適正価格」としています。
■備蓄米“JA外し”の荒治療で超速流通 “入札米”流通との違い
備蓄米の流通についてです。
1回目、2回目の『入札備蓄米』の流通です。
政府は3月10日、JAなどの集荷業者を対象に入札を開始。
3月17日以降、合計約21万480トンの古米が、JAなどの集荷業者に引き渡されました。
しかし、5月11日時点で、小売業者に渡ったのは、約2万7281トンで、12.9%です。
引き渡しからは約2カ月過ぎています。
一方で、随意契約による備蓄米の流通です。
政府から、小売業者に直接売り渡され、輸送料は国が負担しました。
事実上の『JA外し』です。
1回目の受付は、5月26日。
2022年産の古古米20万トンなどで、対象は大手小売りでした。
販売は、5月31日からで、5月29日の引き渡しから最短で2日後というスピードです。
2回目の受付は、5月30日。
2021年産の古古古米8万トンで、対象は中小スーパーや米店でした。
販売は、6月5日からコンビニで始まりました。
6月4日の引き渡しの翌日です。
なぜ、JAを通すと、こんなに遅いのでしょうか。
JA全農は、『入札備蓄米』を、1〜3回目合わせて、約29万6195トン落札、これは全体の95%を占めています。
「『入札備蓄米』が流通していないんだから、JAが悪でしょ」
「JAやコメ卸は、意図的に流通量を制限して高値を維持したいのか」という声があります。
「取引のある卸売業者との年間計画にもとづき、不足分を入札した。落札後、(卸売業者から)依頼があった分は出荷している」としています。
卸売業者からJA全農への出荷依頼は、4月出荷分までで5万5112トン、5月出荷分が7万4483トン。
依頼があった約13万トンは100%出荷済みだとしています。
「本来、コメの落札後は、国と全農との間の手続きに2週間ほどかかる。その後、卸に出荷する。卸に対しても早期の精米出荷をお願いしており、(私たちも)今まで以上に速やかに玄米出荷を行っていきたい」としています。
■複雑な流通『5次問屋』も 中間マージンでコメ価格上昇!?
コメの複雑な流通についてです。
ディスカウントストア『ドン・キホーテ』を運営するPPIH(パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス)が、5月28日、コメの流通に関する意見書を、小泉農水大臣に提出しました。
意見書で指摘された問題点1
「JAと取引する1次問屋は、特約店のように決定され、新規参入が困難」
問題点2
「5次問屋も存在する多重構造で、中間コストやマージンが積み重なるため、価格が上昇する」
解決案として、『JAなどの集荷業者と小売業者が卸売価格を直接交渉することで、中間マージンを省き、仕入れコストを減らすこと』を提案しました。
■コメ閣僚会議 初会合 増産 大規模化など抜本改革へ
6月5日、コメについての関係閣僚会議の初会合が開かれます。
「関係閣僚会議を通じて、主食であるコメが生産者、消費者ともに納得できる価格で、安定的に供給されるような政策の実現を目指して、検討を行うことが重要だ。コメについては、もう既に増産する方向の目標を立てている」としています。
コメ全体の生産量の2030年の目標は800万トンだということです。
2024年産は、約680万トンでした。
「自民党の決議にも、『大区画化、集約化、スマート農業などに対して、予算をしっかりと2.5兆円とってやるべき』とのこと。これからの水田政策の転換に向けた、短期・中期・長期の明確な方向性をしっかりと伝えていくことが、今の高騰している状況に対しても効果があるのではないか」としています。
コメ農家の現状です。
水稲(すいとう=水田で栽培する稲)の作付を行う個人経営体は、2020年は69万8543、この15年で半減しました。
そして、稲作従事者の平均年齢は、2020年時点で68.9歳。
生産者の減少と高齢化で、担い手不足が深刻です。
■巨大組織『JA』元幹部に聞く『手数料』『収益構造』の課題
JAの組合員数は、1019万人。
そのうち、農業を仕事にしている人や団体の正組合員が389万人。
地域に住む、農業以外の仕事をしていて加入している准組合員は630万人。
農業に関わる人は、約40%です。
JAの職員数は、約17万人。
金融の信用事業や、保険の共済事業の職員が、全体の約45%です。
JAの課題1つ目『手数料』です。
農家が農産物を出荷する際に手数料が引かれます。
番組で取材した栃木県のあるコメ農家の場合、手数料は、販売金額の10〜13%です。
そのため、JAを通さずに、独自の販路で出荷する生産者も増えているということです。
過去には『手数料』をめぐり、JAと小泉氏が対立したこともありました。
「手数料で家族や職員を養っているから、そう簡単な問題ではない」と発言。
「手数料があるから『農協(JA)職員が食べていける』というのでは、いったい、農家というのは、農協(JA)職員を食わせるために農業をやっているのか」と反論しました。
「JAは、大きくなりすぎたせいか、生産者ではなく組織のために行っている印象だ。ただ、販売網を持たない小さな農家のコメでも、集荷して販売してくれる点はありがたい」としています。
「『手数料』の大部分は人件費。すでに動き始めているが、1県1農協のような形で、あちこちで大きな農協ができている。多くの地域の農協が合併し、人件費を減らすことで、解決策を探っていくことになるのでは」
JAの課題2つ目『収益構造』です。
JAの1組合あたりの部門別損益は、2022年度で、信用事業 『金融』が4億3900万円の黒字。
共済事業 『保険』が、2億1000万円の黒字。
一方で、『農産物の販売など』の経済事業が、2億6200万円の赤字です。
合計は3億8700万円の黒字ですが、販売・購買の赤字を『金融・保健事業』で補填している形です。
『金利環境の変化などがあり、大銀行を含めて金融は極めて難しい時代に突入している。今後の見込みとして、金融の信用事業は、収益の厳しい状況が継続する可能性がある』としています。
「JAグループ全体に対しても、金融で稼ぐのではなく、経済事業で稼いでもらいたい」と話しています。
(「羽鳥慎一モーニングショー」2025年6月5日放送分より)