新米の収穫を迎える茨城県の水田。大量の水草が生えています。この水草が地球上最悪の侵略的植物と呼ばれている特定外来植物です。新米の収穫量に影響が出ると心配されています。
新米を襲う 厄介な“侵略者”
関東一のコメ生産量を誇る茨城県の中でも、屈指のコメどころとして知られる河内町。新米の季節を迎え、早くも稲刈り作業が始まるなか…。
「うちの田んぼに入ってきたのが5〜6年前くらい」
「みんな入らないように苦労しているよね」
「中に入られると大変なんだよな。早く始末してもらいたいよね」
新米に忍び寄る厄介な侵入者、その正体は…。
「もうこの辺、ここにあるこの草がナガエツルノゲイトウ」
「(Q.これ結構繁殖していますね?)そうなんですよ」
“地球上最悪の侵略的植物”ともいわれる水草「ナガエツルノゲイトウ」。
「この辺なんかもそうですね。もう入ってしまっている。この辺なんかもそうですね」
来月初旬に収穫を控えた新米にも。
「これが稲の中に繁茂しちゃった場合はどうなるのかなと思って。それが心配」
さらに人目を避けるように…。
「穂の中にいたりするので」
「(Q.これがナガエツルノゲイトウ?)そうですね」
稲と稲の隙間に忍び込み、ひっそりと成長。
「田んぼにまいた肥料だって草のほうに取られちゃうっていうか、効かなくなっちゃう。成分が稲に100%いかない」
「(Q.稲の生育に問題が?)そう」
新米への影響が懸念される“地球上最悪の侵略的植物”がこの夏、急速に繁殖しています。
“侵略者”大繁殖で「川見えない」
河内町を流れる一級河川、新利根川では、至る所でナガエツルノゲイトウが大繁殖。南米原産で、もともとは観賞用として日本に持ち込まれたナガエツルノゲイトウ。
1989年、兵庫県で野外での定着が確認されると年々、生息範囲を拡大。生態系に悪影響を及ぼすことから「特定外来生物」に指定されています。
「今年は特にひどいね。(両岸が)つながってるもん」
「(Q.10年前はこんな感じではなかった?)こんなのは全然なかったです」
これは10年ほど前の新利根川。水面には障害物もなく、穏やかに水が流れています。
今月、同じ場所で撮影した川には、全体にナガエツルノゲイトウが生い茂り、水面は一切見えません。
別の場所でも10年ほど前にはこの通り。それが2年前には、橋脚の下で繁殖が始まり今月には川面を覆いつくすほどに。停泊していた船も飲み込まれてしまっています。
新利根川では至る所で“地球上最悪の侵略的植物”の猛威が確認でき、航空写真でも新利根川を侵略している様子が分かります。
多くの水田は、ナガエツルノゲイトウが大繁殖する新利根川から水を引いており、パイプを伝って新米の育つ田んぼに侵入。
「こうやってネットをしたりして対策はしてるんですけど、やっぱりどうしても入ってしまうとなかなか…」
驚異の繁殖力…刈っても刈っても増える
網をかいくぐり、田んぼで繁殖してしまう原因がちぎれた茎や根の切れ端から再生する驚異的な繁殖力の強さです。
「ほら、つなぎの所、全部根っこが出ちゃう」
「(Q.これ節ごとに切って?)切ったら根っこが出ちゃう」
「だから刈っちゃうと、ここからこう刈りますよね。そうすると、これだけで成長しようとして根っこが出てきちゃう」
刈り取ることでさらに増えてしまうため田んぼでは…。
「草を刈ってしまうと節から根っこを生やして、どんどん定着していってしまうので草をまず刈れないんですね」
草刈りをすると、逆に繁殖を手助けしているような状況に…。
「これバラバラにすると、もっと増えてしまう原因になってしまうので、除草剤を振る以外にやれることがなくて、なかなかに厄介な草なんですよね」
「(Q.除草剤もお金がかかる?)もちろん、除草剤も結構高いので、うちでいうと年間だいたい30万円くらい」
しかし、その除草剤も…。
「いったんは枯れるんですけど、地下茎、根っこがすごく深い所まで入っていくんです。なので根っこまで枯れ切らないので、また再生してしまう」
除草剤は効果が限られ、草を刈るとさらに増えてしまうため、コメ農家は一つ一つ手作業で抜いていく駆除を余儀なくされています。
「(Q.これ1個1個やるってなったら農家の方としては手間?)やり切れません」
「(Q.やりきれない?)やりきれないですよね」
猛暑での手作業はコメ農家の負担になっているといいます。それでも…。
「なくなんないな〜毎年。同じ所にやっぱり出てるよ。去年も出てた所…今年も」
「取っても取ってもだめ、除草剤でもだめ」
「(Q.全然だめですね)だめ。今はどうにか、かろうじて(防いでいる)けど、あと2〜3年したら稲の上に入っちゃうから稲刈りできないよ」
新米の季節を迎えコメ農家からは、他にも不安の声が。
「稲刈りはコンバインって機械でみんな刈るけど、それの作業にも支障が出るし、なんせ厄介だよね」
ナガエツルノゲイトウがコンバインに絡まると、新米の収穫にも影響があるといいます。
「一番悪いのは、ここから(稲の)上にはっていってしまう。絡まっていって稲が刈れない。それを刈ってしまうとまたバラバラになってしまうので増やす原因を自分で作ってしまう」
稲食い荒らす“外来害獣”
新米の収穫シーズンに突入するなか、農家を悩ませている、もう一つの存在がいます。
これは今年6月、愛知県江南市で撮影された映像。まだ生育途上の青々とした稲を次から次へと食べていく生物の姿が映っています。
この生物の正体は特定外来生物「ヌートリア」。
南米原産の大型ねずみの仲間で体長は50センチほど。水陸両生で水辺の農作物を好んで食べるといいます。
戦前に軍服の毛皮用として持ち込まれ、その後野生化。年2、3回出産し一度に5頭の子どもを産むこともあり、西日本を中心に増殖していきました。
この映像にも、稲や水辺の雑草を食べるヌートリアの姿が映っています。
田んぼに入り、稲を食い荒らす迷惑生物の存在はコメ農家にとって死活問題。ヌートリアによるコメ被害は、年間で約2500万円にも上ります。
静岡県内有数のコメどころ、浜松市ではヌートリアの目撃情報が年々増加。コメへの被害も広がっているといいます。
稲穂が黄金色に輝くこの田んぼ。来週、新米を収穫する予定です。
「その真ん中の青い、緑のやつ、そこを食べられた」
黄金色に育った稲穂がある一方で、ヌートリアにかじられた部分は、生育が遅れて、まだ緑色のまま。さらに。
「通常ですと、だいたい一つの分蘖(ぶんけつ)した株が20〜30本の稲穂が出るんですけれども、ヌートリアの被害を受けた稲穂は10本前後ぐらいしか育たない」
正常な稲穂と比べると一目瞭然、かじられた部分は稲穂の数が少ないのが分かります。
「田植え直後ぐらいにヌートリアに侵入されて、全体的にほぼ4割5割ぐらいが捕食されてしまった。2〜3割前後は減収というような形なのかと思います」
浜松市内の別の田んぼでは。
「植えてないのではなくて、ヌートリアが食べて稲がなくなっている所」
田んぼの一部が、ぽっかりと穴が開いたようになっていて稲が生えていません。
浜松市内に21ヘクタールの水田を持つ加茂さん。5年ほど前から、ヌートリアの被害に頭を悩ませているといいます。
「ここの所、食べた感じがあります。周りにわらをちょっと散らかしていったりするんですよ」
稲が根元から食いちぎられ、周りには枯れた稲が散らばっています。
ヌートリアによる被害が増えるなか、加茂さんはある対策に動きました。
「自分で全部、有害獣の資格も取って自分で捕獲するようになりましたね」
4年前に鳥獣保護管理法に基づく、わな猟の免許を取得。市の許可を得て、ヌートリアの足跡や痕跡があった場所に自ら箱わなを設置しています。
「1日1回は見て回らないといけないので、その分の時間と労力が他にもやることいっぱい、稲刈りもしなきゃいけないし、精米とかもやらなきゃいけないので作業が大変になるのが深刻ですね」
浜松市も事態を重く見て、ヌートリアの捕獲を業者に依頼するなど、予算を投じ対策を行っているといいます。
新米に深刻な打撃を与えるヌートリア。専門家によると、今後温暖化により、さらに生息域が広がる可能性があるといいます。
「河原が冬場になって凍結して、凍結しっぱなしになるような場所ではなかなか生息できない。(温暖化によって)川が凍らなくなれば、それ(生息域の拡大)はあると思います」
(「羽鳥慎一 モーニングショー」2025年8月20日放送分より)