ナワリヌイ氏側近が証言…死亡前に釈放交渉か 侵攻から2年 ウクライナの現在の戦況
モーニングショー
[2024/03/04 16:54]
先月16日、刑務所で亡くなったロシアの反体制派の指導者、ナワリヌイ氏をめぐる情報が錯綜しています。
■死亡前に釈放交渉か 側近が証言
ナワリヌイ氏の死亡前に、釈放交渉が行われていたということです。
ナワリヌイ氏は、2月16日、収容されていた北極圏にある刑務所内で、散歩後に気分が悪くなり、意識を失い、そのまま死亡しました。
その後、24日に母親に遺体が引き渡されています。
ナワリヌイ氏の死因について、ロシア当局は『突然死症候群』と主張しています。
しかし、ナワリヌイ氏の妻・ユリアさんは、「プーチンが私の夫を殺した。(遺体を)母親にも見せず、渡さずに、神経毒ノビチョクなどの痕跡が消えるのを待っている」と主張しています。
こうした中で、ナワリヌイ氏の死の直前に、ロシアと西側諸国で受刑者の交換交渉が行われていたという情報が出てきました。
ドイツで服役中のFSB(ロシア連邦保安庁)の元工作員のワジム・クラシコフ氏とナワリヌイ氏、そして2人のアメリカ人の交換交渉が進められていたということです。
この交換相手のクラシコフ氏は、2019年にベルリンでチェチェンの元反体制派を殺害し、ドイツで終身刑で服役中です。
プーチン大統領は2月6日のインタビューで、このクラシコフ元工作員を取り戻したいと示唆していました。
交換交渉の経緯です。
2月初めに、プーチン大統領に交換交渉が提案されました。ロシアの大富豪、アブラモビッチ氏が提案し、欧米当局者との非公式の交渉役として活動していたということです。
ナワリヌイ氏の側近は、「交渉は、死亡前日の15日に最終段階にあったが、プーチン氏がナワリヌイ氏を自由にすることを我慢できず殺した」と話しています。
ロシアのペスコフ報道官は、交換交渉について、「そうした合意については何も知らない」と話しています。
ロシア当局は、ナワリヌイ氏への追悼の動きを警戒しています。
ロシア国内では、暴動を警戒したロシア当局が、埋葬されると噂が流れた墓地の入り口に監視カメラを設置し始めました。
さらに、ロシアの人権団体によると、ナワリヌイ氏の献花に訪れた男性の自宅に、警察が押しかけ、男性を拘束したということです。
これまでも、ナワリヌイ氏の死後追悼に訪れた市民が、3日間で400人以上拘束されています。
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■侵攻から2年…ウクライナの現在の戦況■侵攻から2年…ウクライナの現在の戦況
ロシアのウクライナ侵攻から2年が経ちました。
現在の戦況です。左が2023年8月26日時点、右が2024年2月26日時点です。赤い部分がロシア軍が制圧した地域ですが、大きく変わらず膠着状態が続いています。
ロシア軍の最近の動きです。
ロシア国防省報道官は、「ウクライナ軍の防衛拠点であった、アウディイフカを完全に掌握した。部隊はドネツク州をさらに解放するため、攻撃を続ける」と、ロシア軍は攻勢を強めているとしています。
一方でウクライナ軍の動きです。
2023年6月には反転攻勢に出ましたが、強固な防衛線を築いたロシアに阻止され、現在は失速しているとされています。ゼレンスキー大統領は、戦況の停滞を理由に、軍のトップの総司令官を解任しました。
ゼレンスキー大統領です。
「ロシア軍は、夏の初めか5月末に新たな攻撃を準備している。ウクライナ軍は、(反転攻勢の)明確な計画がある」 「3年目は転換の年だ。勇敢さと忍耐心が必要だ。この戦争がどのような形で終わりを迎えるかは、今年に懸かっている」としています。
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■ロシア 資金・兵器…なぜ戦時下でも潤沢?■ロシア 資金・兵器…なぜ戦時下でも潤沢?
ウクライナ侵攻から2年経ちましたが、ロシアの資金や兵器は潤沢だということです。
アメリカがロシアに対する追加制裁を発表しました。ロシアの防衛や金融などを中心とした、500以上の団体や個人を制裁対象に加える制裁逃れに関与したとして、20カ国以上の企業も対象に加えるなど、侵攻開始以降最大規模の追加制裁です。
しかし、ロシアの国庫は、ウクライナ侵攻前と比べて13倍以上の現金を抱える、かつてない潤沢ぶりだということです。
なぜなのでしょうか?ロシアの国庫を支える国があります。
一つ目の国は、インドです。
ロシアからの2023年の原油輸入が過去最高の約5.5兆円でした。このロシア産原油の一部は、インドの製油所で石油製品に加工され、米国や他の諸国へ輸出されていたという指摘もあります。
ロシアの国庫を支える二つ目の国は、中国です。
2023年の中国とロシアの貿易総額は、前年と比べて26.3%増加し、過去最高の約36兆円でした。
ロシアの戦力についての分析です。
イギリスの国際戦略研究所は、「ロシアはウクライナへの攻撃をさらに2〜3年間は維持できる。もっと長期にわたる継続も可能かもしれない」と分析しています。
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■ウクライナへの支援激減、アメリカ先行き不透明■ウクライナへの支援激減、アメリカ先行き不透明
ウクライナに対する世界からの支援額は、2022年8月〜10月は約2兆6456億円でしたが、2023年の同時期は約3439億円と87%減少しました。
最大の支援国であるアメリカは、ウクライナへの支援の予算がすでに枯渇していて、バイデン大統領が進める約9兆円規模の軍事支援は、米議会下院で可決されるか不透明な状況です。
さらに、11月のアメリカ大統領選で、もしトランプ氏が当選すると、ウクライナ支援が打ち切られる可能性もあります。
ゼレンスキー大統領は、「トランプ氏が大統領にならないことを望む。アメリカからの支援がなければ、何も軍事的成功を得られないだろう。ウクライナの成功はアメリカにかかっている」と話しています。
ウクライナ国内では、ゼレンスキー大統領の支持率が低下しています。
侵攻直後の2022年5月は支持率90%でしたが、2月初旬は65%となっています。これまでに、ウクライナ軍の死者は3万1千人と発表されています。
さらに兵士の不安です。
2023年12月、政府が、追加動員に関する法案を議会に提出しました。徴兵年齢を27歳から25歳へ引き下げることや、動員法違反に対する処罰などが盛り込まれていましたが、国民や政治家から批判を受け、2024年1月に取り下げられています。その後、修正案を現在国会で審議中です。
ウクライナ国民の戦争に対する考えです。
戦争を継続すべきと考えるウクライナ国民です。
「ウクライナが負けたら、ロシアはさらに強くなり、ヨーロッパでは新たな戦争が起こる。だから、私たちがここで負ける選択肢はない。それは世界も同じ。ロシアを敗北させるために可能な限りのことをしなければならない」
同じく継続派で、夫が戦死した女性です。
「多くの犠牲者が出て、街や村が破壊された今になって、交渉するのは適切だと思えない。最後まで戦い、打ち負かしてほしい」
一方で、終戦を支持する、前線で戦ってきた兵士です。
「大統領は、ウクライナは2014年以前の国境線と同じであるべきだと考えている。しかし、私はむしろ、彼らが望む領土を与え、何千人の若者の命を救うほうがいいと思う。戦争は政治レベルでしか終結しないと思う」
終戦派のウクライナ国民です。
「海外からの支援でずっと国を維持することはできない。今ある領土で戦争を止める方法を模索する段階かもしれない。これ以上いくと、あまりにも傷が深くなりすぎる」
(「羽鳥慎一 モーニングショー」2024年2月28日放送分より)