出没相次ぐ“冬眠しないクマ”北海道でドローン追跡…「1度上昇で冬眠期間6日短縮」

スーパーJチャンネル

[2023/12/06 21:51]

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12月に入っても、相次いでいるクマの被害。
出没が急増している札幌では、6日、住宅地の近くで「冬眠しないクマ」をドローンで追跡する初めての試みが行われました。

■「冬眠しないクマ」をドローン追跡

ヒグマの出没が相次ぎ、緊迫が続く北海道。

雪が積もる札幌で、6日午後、クマ対策を担当する市の職員が行ったのは、ドローンを使った上空からの調査です。

目的は、市街地の近くに潜むヒグマを探すことです。札幌市としては、初めての試みです。

札幌市 熊対策調整担当・清尾崇係長
「今、冬眠にまもなく入ろうとする時期なので、その時期にクマの動向を調査することで、町中の近くで冬眠する傾向があるのか、もしくはこの辺にはいなくて山の奥にいるのか調査する目的」

■緊迫…札幌で急増するヒグマ被害

北海道では、今月も、住宅地に進入するヒグマが続出―

札幌市でも、この冬、出没情報が急増。
教員や市の職員が見守りを行い、児童たちが、クマのよけの鈴を付けて登校する緊急事態に。

近隣住民
「この冬に出てくることはないと思った」

これは、北海道庁が作成した、ヒグマ出没の“ハザードマップ”です。

緑色は、ヒグマが生息するエリア。赤色などは、ヒグマ出没の危険度を5段階で表したものです。
札幌市の中心部から近い南区では、市街地が山間部に囲まれていることもあり、危険度が高いエリアが多いことが分かります。

番組の取材班は、きょう、札幌市南区の住宅地へ。

住民
「夜歩くのも怖い。妻はバス通勤で夜歩くので心配。小学生も鈴を鳴らして歩いている」

■“冬眠しないクマ”ドローン初調査

ヒグマの出没が相次ぐ札幌市南区で、6日、初めて行われたドローン調査。

森の中にいる生物を捉えました。

ヒグマではなく、シカでした。
およそ1時間、住宅地近くの森に潜んでいるヒグマを探しましたが、その姿をとらえることはできませんでした。

札幌市 熊対策調整担当・清尾崇係長
「町中の近くで冬眠していれば、春先に冬眠から目覚めた時に、またすぐ町中に出てくるおそれがあるので、前もって対策をしなければいけない」

市街地近くのヒグマの生息状況を把握することで、今後、生態調査エリアの拡大などを検討していくといいます。

北海道大学大学院 獣医学研究院・下鶴倫人准教授
「一般的には12月中に冬眠に入るのが普通だが、冬眠の開始が遅い個体も一定数存在することは考えうる。海外では外気温が高い冬ほど、冬眠の期間が短くなるといわれている。北海道においても、おそらくそういう傾向はあると思うが、冬眠の開始時期に関しては、外気温がどの程度影響するのかよくわかっていない」

■冬眠「1割」ウクライナの異変

札幌市では、今年、11月の平均気温が6.7℃。平年に比べて、1.5℃ 高い数値です。
12月は、0.9℃高く、今シーズンは、暖冬の傾向が―

番組が取材したのは、ヒグマを、およそ30頭保護しているウクライナの国立自然公園です。
暖冬だった2019年12月に、多くのヒグマが冬眠しない事態が起きていました。

シネビル国立自然公園 獣医師・マスレイ氏
「しっかりと冬眠したクマが3頭しかいなかった。当時は1週間ほど零下の気温。次の週、急に暖かくなる時が多かった。クマはまだ冬なのか、もう春なのか分からなかった」

保護区の周辺では、当時、気温が4℃前後で、12月の平均気温である、−2.3℃を大きく上回っていたといいます。
12月にも関わらず、ヒグマが冬眠から目覚める4月の平均気温6.9℃に、近づいていたのです。

さらに、冬眠したヒグマにも異変が―

シネビル国立自然公園 獣医師・マスレイ氏
「日によっては、気温差が10℃もあり、クマたちは冬眠の最中に起きるケースが多かった」

クマ大国アメリカでは、「暖冬」と「冬眠」の関係について、冬の最低気温が1℃上昇するごとに、クマの冬眠期間は6日間短縮されることになるという研究者たちの論文が発表されています。

果たして、この冬、日本では…?

北海道大学大学院 獣医学研究院 下鶴倫人准教授
「冬眠の入りが遅くなることもあるだろうし、冬眠明けが早まることも予想される」
「冬の間だからといって雪山に入る場合は、クマとの遭遇リスクはあると考える必要がある」

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