クマ“冬眠時期”も目撃多発…イノシシらと「餌の争奪戦」実態は

スーパーJチャンネル

[2023/12/11 20:50]

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冬眠時期も目撃多発。クマを巡る環境のバランスが崩れています。

■柿をかじるクマ 冬眠はいつ?

今月3日、兵庫県内の映像です。
一見、分かりませんが、実は柿の木にツキノワグマがのぼっています。

前足で枝を折って柿の実をかじっています。冬眠の時期に入っても、人の生活圏に出没するクマが各地で相次いでいます。

■牛舎から目撃「目の前で」

この柿の木があるのは、兵庫県北部、香美町にある牛舎の目の前―
牛舎からクマを目撃した田中一馬さんです。

田中畜産 田中一馬さん
「(Q.柿の木は後ろに映っている?)左手にあるこの木が柿の木。ここから、すぐ近くにクマがいるのが目の前で見えた」

田中畜産 田中一馬さん
「夢中で食べている。人に気付いていない。牛舎に入る時にシャッターをガラガラと開けるが、その音にも反応しなかった。12月に入ってからのクマの出没は、ここ20年くらい記憶にない。クマが届くところには柿は一つも残っていない」

200個ほどあった柿の実は、その日のうちにクマに食い尽くされたといいます。

■茂みから突然…クマが出没

この前にも、同一個体とみられるクマが度々出没していました。
敷地内の茂みから…突然、姿を表します。

田中畜産 田中一馬さん
「今まで山の中を歩いていて、クマと出会った時には、クマが認識してくれれば去っていくことが多かった。今回の場合は毎日、朝昼晩、関係なく来ていた。すごく怖い。最後は威嚇してきた。木の上から。ウォーと叫びながら爪を上から下におろす感じで、本当の威嚇だった」

■過去最多 岩手49人のクマ被害

11日、番組の取材班が向かったのは岩手県。

今年、クマの出没が相次ぎ、目撃情報は10月までで、すでに過去最多の5158件にも及んでいます。
クマによる被害は過去最多の49人です。12月に入ってからの被害は、2015年以来、実に8年ぶりです。

岩手県は先月27日、クマの緊急対策会議を開きました。参加した専門家は警鐘を鳴らしています。

岩手大学 農学部 山内貴義 准教授
「人身被害の数が秋田、岩手で非常に多くなっている。異常な状態」

■リンゴ畑で“むしゃむしゃ”

岩手大学のツキノワグマ研究会は、クマの調査のため、盛岡市内の人里から近いエリアに自動カメラを8台設置しています。

岩手大学 ツキノワグマ研究会・山口祥太会長
「夏から秋にかけてよく映っていた」

リンゴ畑の周辺で度々クマが出没。ツキノワグマが後ろ足で立って食べているのは、収穫前のリンゴです。

研究会の学生たちは、10日、クマが生息する山で、今年最後の調査を行いました。

岩手大学 ツキノワグマ研究会・山口祥太会長
「電気柵が山沿いに張ってある。どこから侵入してくるのか。自治会長と相談して、場合によっては電気柵を移動してもらうなど対策を」

■クマvsイノシシが“競合”

今年は岩手県など東北5県で、クマが好んで食べるブナの実が大凶作に。

少ないエサを求めて、野生動物による“エサの争奪戦”が起きている可能性があると専門家は指摘しています。

岩手大学 農学部 山内貴義 准教授
「ドングリはイノシシも大好き。クマとイノシシが競合。今までクマが独占していたエサがシカ、イノシシと競合することで、一時的にエサ不足になっている可能性」

■柿を奪い合う様子 カメラに

「クマ」と「イノシシ」による“エサの争奪戦”―
住宅近くの同じ場所で、柿の実を奪い合う姿をカメラがとらえていました。

岩手県で野生のクマなどを自主研究している女性。自宅近くの敷地に、自動カメラを10台設置しています。
先月、ツキノワグマが枝にのぼり、柿の実をむさぼる様子が鮮明に映っていました。

クマを自主研究 岩手在住 あきさん
「こんな細い枝だが上手に登って、上手に柿を食べている」

細い枝の上に柿を実を置いて前足ではさみながら、少しずつかじっているのが分かります。

クマを自主研究 岩手在住 あきさん
「ほぼ毎日のように映る時もあった」

それぞれ時期は違いますが、クマが現れた柿の木にイノシシの親子も出没。

地面に落ちた柿の実を食べる様子が映っています。他にも、野生動物が続々と―

こちらは、キツネ。

こちらは、タヌキです。

クマを自主研究 岩手在住 あきさん
「同じ時間ではなく、クマがいなくなったらイノシシが来たり、イノシシやクマがいない時はタヌキが来たり」

専門家は、クマの冬眠の時期が遅れることを危惧しています。

岩手大学農学部 山内貴義 准教授
「だらだらエサを食べ続けられる状況だと冬眠が遅くなる。 今、一番危惧していることは、里に完全に行動圏がシフトしている個体がいて、もしかしたら、いつまでもうろうろしている可能性がある」

クマの生態を調査する女性は、行動を観察することで今後の対策に役立てていきたいとしています。

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