姿を消した認知症の家族。一体どこへ?元刑事と共に行方を追跡すると、新たな可能性が出てきました。また、家族の行方不明による経済的な問題も…。消えた家族はどこへ?その行方を追います。
■一人で散歩に行った妻 10分の間にどこへ?
静岡県伊豆の国市に、毎日妻を捜し続ける男性がいます。
「これが(妻の)サンダルだったら良かったのにね…」
鈴木さんは、妻が行方不明になって半年、毎日探し歩いています。
「こういう所だけは真っ先に見て」
認知症の行方不明者は10年前のおよそ2倍。過去最多の2万人近くに。高齢化が進む日本で、増え続けています。
「足跡何もないな。残念ながら」
不二男さんの妻・敏恵さん(当時72)が行方不明になったのは去年7月5日。午後5時ごろ、敏恵さんは一人で散歩へ。いつもは5分ほどで帰ってきましたが、この日は…。
「10分後、もう帰ってきているなと思ってトイレとか風呂場、屋敷の周りを見て回った。これはいないな、おかしいということで慌てて表に行って空き地や近辺も捜したけどいなくて」
すぐに、警察に連絡、地元の消防団も加わり探しますが、行方は分からず、捜索は2日で打ち切りになりました。
「なんで(すぐに)見に行かなかったのか、それが一番(後悔)」
敏恵さんは、2年前から物忘れが激しくなり、去年6月に認知症と診断されますが、夫のことは分かり、ある程度、意思疎通はでき、足腰は丈夫で愛犬と散歩にも出ていました。
そんな敏恵さんが、わずか10分の間にどこへ消えたのか?
元埼玉県警刑事で行方不明捜索の経験もある佐々木成三氏とともに、敏恵さんの行方を追跡します。
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■元刑事「思い出の海岸に向かったのでは?」■元刑事「思い出の海岸に向かったのでは?」
行方不明時の敏恵さんの服装は、作務衣(さむえ)にオレンジ色のワンピース、白いサンダル履き。所持品はありませんでした。
実は当時の捜索では、警察犬を使って敏恵さんのにおいを追っています。警察犬がたどったのは、自宅から県道へ向かう道です。
「視界が良い、歩いている人がいたらすぐ見つけられると思う」
「もちろん用水路もね。当日もこれくらいですか水の流れは?深くはない?」
「そんなに深くはない」
においを追う警察犬、しかし自宅から200メートルの県道近くでにおいが途絶えます。
「この辺で、においが消えた」
「警察犬がそこ以上行かなかった」
敏恵さんは県道をどちらへ行ったのか?
「不二男さんも考えられない場所に歩いて行ったのか、そういった可能性がある」
県道の東側には、住宅や商店が多い地区があり、警察は防犯カメラの確認をしています。
「(警察官は)3時間ぐらい見て行ったけど確認取れない」
しかし、東側の防犯カメラに敏恵さんが映っていない状況から、佐々木氏はこう話します。
「一番気になりますね。右側(西側)が」
我々は、その西側への道をたどってみることにしました。道路を走ってみると、防犯カメラは…。
「全然なかった」
県道を500メートル走ると、そこにはトンネルがあった。そのトンネルを通り抜けると、そこには…。
「こんなに近いんだ海」
実は、この海岸は認知症になる前に夫婦で散歩した思い出の場所だといいます。
「ここは、よく車を止めて散歩に来ていた?」
「そうです、ここから向こうまでずっと」
「海というのは一つの可能性はある。しかも、ここは散歩道だったこともある」
佐々木氏が「敏恵さんが向かったのはこの海岸では?」と考える理由の一つが行方不明1週間前のある出来事でした。
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■1週間前に2.5km離れたスーパーで保護■1週間前に2.5km離れたスーパーで保護
敏恵さんは自宅からおよそ2.5キロ歩いて40分離れたスーパーで保護されていました。
「(通行人が)不審に思って警察に通報して保護された」
「愛犬の餌(えさ)を買うため」だったといいますが、佐々木氏は。
「1週間前にスーパーに行って帰れなくなったのが(今回の行方不明の)『引き金』になったのでは」
実は、佐々木氏は警察を退職後、介護施設で働いた経験があり、多くの認知症の高齢者に接してきました。
「(帰宅できなかったことが)『自分が認知症だ』という自覚をさらに強くした。不安になってしまう」
自分が認知症だと自覚し不安になった敏恵さんは、気持ちが落ち着く、思い出の場所に向かった可能性もあるといいます。
「(Q.記憶に強い場所は忘れにくい?)それはあると思います。いい夫婦だからこそ敏恵さんの(この海岸への)思いは強かった」
不明当時、この海岸まで捜索は行っていなかったといいます。不二男さんは周辺を回り、チラシを配り目撃情報を集めます。
「サンダルや服が見つかったり、『そこを歩いていた』という情報でも不二男さんにとってはプラスになる情報」
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■「一日も早く帰ってきてほしい」■「一日も早く帰ってきてほしい」
「望みは捨てない」。不二男さんは、今まで探していない場所にも範囲を広げ、捜索やチラシ配りを続けています。
用水路に下り、水の中を1.5キロ歩いて捜したこともあります。
「まだまだ希望は捨てないで」
この日は、敏恵さんがよく散歩をしていた自宅裏の空き地へ。
「サンダルじゃあ、当時は来るのも大変だったでしょうから」
行方不明になった当時は夏で草が生い茂っていましたが、今は枯れているため茂みの奥にも進めるように。
土に埋もれたオレンジ色の布が!敏恵さんが当時、着ていたのがオレンジ色のワンピースでした。
「こんな鮮やかな色じゃない。もう少し黄色を足したようなやつ」
再会を願い続ける日々を半年以上送るなかで、時に頭をよぎることがあるといいます。
「最悪の形でもう何でもいいから早く、万が一、そういった状態で見つかったらね…。ちゃんと…ごめんなさい。そんなの考えたくもない」
2人が結婚したのは29年前。飲食店で働く敏恵さんに一目ぼれしたのが不二男さんでした。
「この笑顔がお気に入りで飾ってあります。“いつまでも素敵な僕だけの君でいてください”恥ずかしいけど」
敏恵さんは今、どこにいるのか?佐々木氏は、些細な情報が敏恵さんを見つける突破口になるはずだといいます。
「諦めてはいけないと思います、可能性がある以上は」
「地道に一歩一歩、やるしかないと覚悟を決めている。一日も早く帰ってきてほしい」
伊豆中央警察署:0558−76−0110
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■散歩から戻らず… 電話で「今帰ってきよる!」■散歩から戻らず… 電話で「今帰ってきよる!」
長崎市にも認知症の家族を捜す人がいます。
坂本悦子さん(77)は1年10カ月前、夫が突然姿を消しました。
「手を出して『行ってらっしゃい』とパチンとして」
夫の秀夫さん(当時73)は、夕方の日課だった散歩へ行く前に愛犬とキス…それが夫の最後の姿でした。
自宅は長崎市の坂道にある住宅地。1時間経っても戻らないため、悦子さんが携帯電話に連絡すると…。
「今までに聞いたことないような感じで『今帰ってきよる!』そういう言い方はしたことがなかった。パニックになっているような甲高い声で、その一言」
通話が切れると、その後何度かけてもつながることはなく、2時間後、電源が切れてしまいます。
警察の捜索も手掛かりはなく、3日で打ち切られます。
秀夫さんは地元・長崎でレストランを経営。62歳の時に若年性アルツハイマー型認知症と診断されますが、自分の名前や住所もハッキリ言え、身の回りのことはほとんど自分でできました。
「何ひとつ変わったことがなかった」
夫に何があったのか?悦子さんは、長女の愛子さん(46)とともに、チラシを自費で6000枚作り、愛子さんは近くの山を一日20キロ歩き、けがをしながら捜すこともありました。
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■一人で暮らす妻 年金止まり、骨折も■一人で暮らす妻 年金止まり、骨折も
夫が姿を消して1年10カ月、一人で暮らす妻・悦子さんに大きな問題がのしかかっていました。
「年金は止められるし。家族がいなくなって悲しいだけでなく、経済的なこともそうだし。残された家族の生活保障は何もないのって」
行方不明になったことで、月に4万円以上あった秀夫さんの年金支給が停止、1カ月の収入はいきなり半分以下になったのです。
チラシのコピー代も今までに30万円以上、捜索のための移動なども出費がかさみます。
「(Q.生活は大変?)そうですね、ギリギリ」
コメを買うのは3カ月に1キロ、食費を月1万円程度に抑えています。
さらに、自宅で転び骨折。現在もリハビリは続いています。
「骨粗鬆症(こつそしょうしょう)で去年は3回骨折」
そんな経験から、娘の愛子さんは、多くの認知症行方不明者の家族に捜索や生活のアドバイスをするなど支援活動を始めます。
「行方不明者の家族とつながって情報共有をするなかで、もしかしたら何かヒントがあるかもしれない」
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■「早くただいまと」ノートにつづられた思い■「早くただいまと」ノートにつづられた思い
この日、悦子さんが娘と一緒に向かったのは、自宅から50キロのある場所。
「(夫が)何回も『墓参りに行こう』と言っていた」
悦子さんの実家の墓があり、夫・秀夫さんは行方不明になる前、「お墓参りに行かなくては」と口にしていたといいます。
「いつかここに夫が顔を出すかもしれない」そんな思いで何度も訪れています。
認知症の行方不明者ですが、90%以上が無事保護されています。多くは数日以内ですが、1年以上経ち見つかるケースもあります。
悦子さんは、夫が姿を消した日からノートに思いをつづり続けています。
「どこでどうしているの?泣くことだけで笑うことができない」
「早く早くただいまと言って下さい」
「そんなことぐらいしか私にはできないから。ちょっとでも声が届けばと」
長崎警察署:095−822−0110































