18日、ポスティングシステムでメジャーリーグ移籍を目指していたロッテの佐々木朗希投手がドジャースとマイナー契約を結んだことを自身のSNSで発表した。
ドジャースには大谷翔平選手や山本由伸投手が所属しており、昨シーズン4年ぶりにワールドチャンピオンに輝いた。
ロサンゼルス・タイムズのジャック・ハリス記者はSNSで、契約金は650万ドル=約10億1600万円と報じている。
“令和の怪物”と言われ、史上最年少で完全試合を達成するなど野球ファンに衝撃を与えた佐々木投手の活躍を振り返る。
■“令和の怪物”の誕生と甲子園を懸けた大一番での登板回避
2019年4月にU-18高校日本代表候補合宿に参加した佐々木投手は紅白戦で163キロを記録した。
非公式ながら、ドジャース・大谷翔平選手が持っていた当時の高校生最速記録である160キロを上回り、佐々木投手への注目が集まった。
2019年7月に行われた第101回全国高校野球選手権岩手大会決勝戦で佐々木投手が登板することなく、花巻東高校に敗れ、大船渡高校は35年ぶりの甲子園出場を逃した。
(佐々木投手の登板回避について)
「3年間で(佐々木が)一番壊れる可能性があると思った。故障を防ぐためです。私が判断しました」
甲子園出場がかかった大一番でのエースの登板回避について、野球関係者やファンの間で議論が沸き起こった。
■ロッテが4球団競合の末、交渉権を獲得
2019年10月に行われたドラフト会議で、日本ハム、ロッテ、楽天、西武の4球団が競合し、ロッテが交渉権を獲得した。
指名あいさつのため訪れたロッテ・井口資仁監督(当時)と面会した佐々木投手は、「一歩ずつしっかり歩んで、がんばっていきたいなと思っています」と語った。
その後、佐々木投手はロッテと仮契約を交わし、背番号が17番に決まった。
“令和の怪物”がプロの道へ歩み出した瞬間だった。
「まずチームの一員として日本一は目標ですし、個人としては沢村賞が一番ピッチャーの中では高い賞だと思うので、そこを目指して頑張りたいです」
■プロ1年目(2020年)プロの世界で戦うため… 体力強化の日々
プロ1年目の2020年シーズンは、日本ハム時代のダルビッシュ有投手や大谷選手らを育てた吉井理人投手コーチ(現・ロッテ監督)の指導のもと、出場選手登録はしないまま一軍に帯同した。
一軍・二軍ともに公式戦登板は無く、肉体強化を図る1年となった。
(初めて参加したキャンプで)
「このユニホームを着て、一軍でチームのために活躍して、(ファンに)たくさんの恩返しをしたい」
■プロ2年目(2021年)“令和の怪物”が1軍デビュー
プロ2年目“令和の怪物”がデビューする。
2021年5月16日、佐々木投手は西武戦でプロ初登板初先発し、山川穂高選手(現・ソフトバンク)からプロ初奪三振を記録するが、5回5奪三振4失点とプロ初勝利はお預けとなった。
2度目の先発登板となった5月27日の阪神戦で高校時代に成し遂げられなかった子園の土を踏む。
5回4失点と苦しい投球となったが、打線が奮起しプロ初勝利をあげた。
初めて1軍で登板した2021年シーズンは、11試合に登板し、3勝2敗、防御率2.27を記録した。
■プロ3年目(2022年)完全試合達成やオールスター初選出
プロ3年目の2022年は“令和の怪物”ぶりを発揮した。
開幕からローテーション入りし、日本でプレーした5年間で、自己最多の登板数を記録した年だった。
今季3試合目の登板となった4月10日オリックス戦で、佐々木投手は自己最速の164キロのストレートと140キロのフォークを中心にピッチングを組み立て、プロ野球記録に並ぶ1試合19奪三振を記録し、28年ぶり史上16人目となる完全試合を達成した。
20歳5カ月での完全試合達成は史上最年少記録となった。
また、毎回奪三振での達成は史上初で、プロ野球新記録かつ世界記録となる13者連続奪三振を記録した。
「完全試合は正直あまり意識していなくて、打たれてもいいかなと思いながら投げました。最後まで(キャッチャーの)松川を信じて投げました」
佐々木投手が達成した完全試合を目前で逃した選手は多く、その一人が西口文也監督(西武)だ。
2005年8月の楽天戦で9回を投げ切り、一人のランナーも許さないピッチングを披露する。
0対0のまま延長に突入した10回に先頭打者・沖原佳典選手にライト前ヒットを打たれ、大記録を逃した。
ちなみに、西口投手はノーヒットノーランも達成目前で2回逃している。
また、日本人メジャーリーガーに目を向けると、当時レンジャースに所属していたダルビッシュ有投手(現・パドレス)が2013年4月のアストロズ戦で大記録に迫る。
9回2アウトまでランナーを一人も出さないピッチングを見せるが、マーウィン・ゴンザレス選手(元・オリックス)の放った打球が、ダルビッシュ投手の股の間を抜けてヒットとなり、完全試合を逃した。
佐々木投手は大記録達成から1週間後、4月17日の日本ハム戦に先発し、8回まで日本ハムに一塁ベースすら踏ませないピッチングで2試合連続での完全試合達成を期待されたが、打線の援護が無く、9回にリリーフが送られた。
それでも、17イニング連続ノーヒットと52者連続アウトは共にプロ野球新記録となった。
オールスターにファン投票で初選出され、7月27日第2戦で先発し、1回3安打1失点だった。
この年は20試合に登板し、9勝4敗、防御率2.02を記録した。
■プロ4年目(2023年)WBCで世界一に貢献
プロ4年目の2023年は日本代表のメンバーとして世界一奪還をかけた戦いから始まった。
2023年3月に開催された第5回WBCでは、自身も被災者となった東日本大震災が発生した3月11日の1次ラウンド・チェコ戦で先発。
4回途中まで投げ、8奪三振1失点と好投し、勝利投手となった。
また4回には、佐々木投手が投じた162キロのストレートがエスカラ選手の膝に直撃し、うずくまるシーンがあった。
後日、佐々木投手がチェコ代表の宿泊するホテルを訪れ、お菓子をエスカラ選手に手渡し、謝罪したことが話題を呼んだ。
3月21日にマイアミのローンデポ・パークで行われた準決勝メキシコ戦にも佐々木投手は先発。
4回を投げ、3奪三振3失点でマウンドを降りた。
試合は、9回に村上宗隆選手のサヨナラタイムリーツーベースでアメリカの待つ決勝への進出を決めた。
(Q. WBCはどんな大会になったか)
「自分としては準決勝で点を取られ、苦しい中だったんですけど、最高のチームメイトに恵まれて、どうにか(試合に)勝てたと思います」
決勝では、1点リードで迎えた9回にマウンドにあがった大谷翔平選手が、当時エンゼルスでチームメイトだったトラウト選手を三振に抑え、3対2でアメリカを破り、日本代表が14年ぶりの世界一に輝いた。
シーズン前半戦は先発ローテーションを守り、13試合、7勝2敗、防御率1.48と活躍し、オールスターに2年連続でファン投票により選出された。
7月19日に行われたオールスター第1戦に先発し、1回無失点に抑えた。
しかし、左内腹斜筋の肉離れの故障に悩まされ後半戦は未勝利に終わった
この年は、15試合に登板し7勝4敗、防御率1.78を記録した。
ロッテはクライマックスシリーズに進出し、10月14日ファーストステージ第1戦ソフトバンク戦に先発。
3回無安打無失点、4奪三振の完璧な投球を見せ、チームのファイナルステージ進出にも貢献した。
■プロ5年目(2024年)自身初の2ケタ勝利を達成 メジャーリーグに挑戦へ
プロ5年目となった2024年。
3年連続で開幕ローテーションに入り、二度の登録抹消になるも18試合を投げ、10勝5敗、防御率2.35を記録し、自身初の2ケタ勝利を達成した。
また、奪三振数に注目が集まる佐々木投手だが今シーズンは129奪三振と直近3年間で最少となった。
シーズン終了後の11月9日、ロッテがポスティングシステムを利用してのMLB挑戦を承認した。
「入団してからこれまで継続的にMLB挑戦について耳を傾けていただき、今回ポスティングを許可していただいた球団には感謝しかありません。
背中を押していただいた皆さまの期待に応えられるように、マイナー契約から這い上がって世界一の選手になれるよう頑張ります」
■“令和の怪物”がワールドチャンピオンのチームへ
18日、佐々木投手がドジャースとマイナー契約を結んだことを自身のSNSで発表した。
ドジャースには大谷翔平選手や山本由伸投手が所属しており、昨シーズン4年ぶりにワールドチャンピオンに輝いた。
ロサンゼルス・タイムズのジャック・ハリス記者はSNSで、契約金は650万ドル=約10億1600万円と報じている。
「とても難しい決断でしたが、野球人生を終えて後で振り返ったときに、正しい決断だったと思えるよう頑張ります」
「入団会見では、ここまで支えて頂いた全ての皆様に感謝しながら、ドジャースのユニフォームに袖を通したいと思います」
高校時代に“令和の怪物”と注目され、プロの世界では史上最年少で完全試合を達成するなど、野球ファンに衝撃を与え続けた佐々木朗希投手。
2025年はメジャーリーグのファンに新たな衝撃を与えてくれることを期待したい。