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2025年3月9日 09:00

【戦時下の夜行列車】ウクライナ発ポーランド行き 家族、恋人との別れ…様々な思い乗せ

2025年3月9日 09:00

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2022年2月24日のロシアによる全面侵攻後、ウクライナでは民間航空機の運航が禁止され、3年が経過した今も国外との往来は、陸路に限られています。
首都キーウと隣国ポーランドの国境の町、プシェミシルを結ぶ戦時下の夜行列車の旅路を記録しました。
(ANNロンドン支局 文:醍醐穣 撮影・動画編集:神山晃平)

各国首脳も鉄道で往来

ゼレンスキー大統領が国外訪問する際も隣国まで鉄道を利用し、その後、飛行機に乗り換えて目的地へ向かう場合がほとんどです。
各国の要人がウクライナを訪問する際も隣国から10時間以上かけて鉄道でやって来ます。
要人が乗る特別列車には、「BRAVERY EXPRESS(勇気列車)」という名称が付けられています。

侵攻3年となる2月24日は、カナダのトルドー首相や、EU=欧州連合の首脳などが利用しました。

キーウ駅構内に軍の採用カウンター

侵攻から3年が経ち、キーウ駅には兵士募集の広告が目立つようになり、コンコースには、軍の採用カウンターも設けられました。

キーウ駅構内の軍の採用カウンター
キーウ駅構内の軍の採用カウンター

戒厳令により、18歳から60歳の男性は原則出国が禁止されているため、国際列車の乗客には女性や子どもが目立ちます。
父や夫、息子、恋人を国内に残し、避難先の国外へと戻る人も多く、キーウ駅のホームでは別れを惜しむ光景があちこちで見られました。

快適な個室 厳重な国境審査

今回乗車したキーウ発ポーランド・プシェミシル行きの夜行列車の車両は、すべて個室寝台で、2人用の1等車、4人用の2等車などに分かれています。
利用する3週間前に切符を購入しましたが、その時点で空きはほとんどありませんでした。

清潔な2人用の個室
清潔な2人用の個室

2人用個室の運賃は1人あたり3302フリブニャ、日本円で1万1700円ほどです。
各個室内には電源もありクリーニング済みのシーツや枕カバー、ペットボトル入りのミネラルウォーターなども提供されます。日本の列車よりも多少、揺れや走行音は大きいですが清潔で快適な車内です。

国境手前の駅では、出国審査のために国境警備隊が乗り込んできます。
身分などを問われるほか、警備犬も使って各室をチェック、1時間以上かけて厳しく出国審査が行われます。

犬も使ってコンパートメントをチェック
犬も使ってコンパートメントをチェック

戦時下でも休みなく走る

ウクライナ鉄道の2024年初頭の定時運行率は国内路線で94%、国際路線で88%と戦時下でも高い水準を維持しています。

ウクライナ鉄道の線路幅は、ロシアと同じ広軌(1520mm)で、多くのヨーロッパの国が採用する標準軌(1435mm・日本の新幹線と同じ)と違います。

プシェミシルに到着した列車 広軌の線路はここまで
プシェミシルに到着した列車 広軌の線路はここまで

今回乗車した列車の終点、ポーランド・プシェミシルのような国境の駅までは、広軌の線路が敷かれていますが、それより先の都市を結ぶ国際直通列車の場合は、標準軌の線路を走るために乗客を乗せたまま、台車を交換する作業を行う必要があります。

ワルシャワ発キーウ行き列車の台車交換作業
ワルシャワ発キーウ行き列車の台車交換作業

この作業には数時間かかることもあり、輸送力向上のためウクライナ政府は将来、ヨーロッパと同じ標準軌に変更したい考えです。

現在、ロシア軍は発電所など重要インフラ施設を狙いミサイルやドローン攻撃を行っています。

ロシア軍の攻撃を受けた発電所の中
ロシア軍の攻撃を受けた発電所の中

停電などの場合はディーゼル機関車による運行に切り替えるなどして、ウクライナ鉄道は休みなくきょうも走り続けています。

  • キーウ駅の案内表示に「BRAVERY EXPRESS」
  • キーウ駅構内の軍の採用カウンター
  • 清潔な2人用の個室
  • 犬も使ってコンパートメントをチェック
  • プシェミシルに到着した列車 広軌の線路はここまで
  • ワルシャワ発キーウ行き列車の台車交換作業
  • ロシア軍の攻撃を受けた発電所の中