6月から『森林環境税』徴収 二重負担も&『定額減税』に企業「複雑で地獄」

モーニングショー

[2024/06/07 14:18]

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この時期、住民税の納税通知書が会社や自宅へ届きますが、今年はその通知書に“新たな税”が記載されています。 それが『森林環境税』です。

■“森林ゼロ” 都会にも1億円!?『森林環境税』の使い道

 街で話を聞きました。

60代男性
「知らなかった。わからないから、逆にあまり痛みを感じない。そこら辺がうまくできている」
20代女性
「初めて知った。東京(都心)は、森林が少ないので、どこに使われるのか疑問」
森林環境税は、
●今月(2024年6月)から徴収が始まりました。
●1人当たり年間1000円が、住民税に上乗せして徴収されます。
●法律で、森林整備や木材利用の促進などに充てるよう定められています。
森林環境税ってどんなもの?

 去年までは、東日本大震災の復興のための『復興特別税』が徴収されていました。これは、住民税に上乗せされて、年1000円です。 それが2023年度で終了し、このタイミングで、今月から『森林環境税』が徴収されます。

去年までは『復興特別税』
東京経済大学の佐藤教授によると、
「2019年から、森林保全に関するお金の交付が始まっている。そのタイミングで増税するのではなく、復興特別税がなくなった今のタイミングで増税するのは、ある意味、負担に対する配慮と言える。ただ、このタイミングでの増税は『復興税の分の税収を下げるのが嫌だから、そのまま残しておこう』というふうに疑われても仕方がない」ということです。
東京経済大学 佐藤一光教授
森林保全関連のお金は、
●2019年度から、国庫から自治体(都道府県・市区町村)に資金が配分されています。
●森林整備に必要な財源確保のため創設されました。

 2019年〜2022年の4年間で、国から自治体に渡ったお金は、合計で約1500億円です。 しかし、約525億円(約35%)が使われていないということです。

森林保全関連のお金(森林環境譲与税)

 東京の渋谷区にも配分されています。
 渋谷区には、森林はありませんが、2019年〜2023年の5年間で、約9900万円配分されています。このうち使われたのは、約900万円(約1割)です。 去年初めて、公共施設の建て替えを、国産の木材を使うことで、森林保全関連のお金を使いました。

“森林なし” 渋谷区にも配分

 残りの約9000万円は、今後、老朽化した建物の建て替えに使うために積み立てているということです。

渋谷区の担当者は、
「元々、公共施設の建て替え時に使用する予定だった。建て替えは、毎年あるわけではないので、(活用できていないのではなく)タイミングの問題」と話しています。
残りは今後老朽化建物の建て替えに使うため積み立て

 森林保全関連のお金を、渋谷区と他の自治体と比べます。

●渋谷区は、森林面積ゼロ。
人口は、約23万2000人。 配分された森林保全関連のお金は、2022年で約2600万円です。
●熊本・宇城市は、森林面積が2092ヘクタールで、渋谷区の面積の1.4倍です。
人口は、約5万7000人。 配分された森林保全関連のお金は、2022年で約1500万円で、渋谷区より少ないです。

 森林保全関連のお金の配分基準は、 (1)森林の面積 (2)林業就業人口 (3)人口 の3項目です。 総額の25%が人口に従って配分されるので、森林面積が少なくても、人口が多い自治体は、分配額が大きくなる傾向にあります。 都市部ほど分配額が増える傾向にあるということです。

渋谷区と熊本・宇城市の比較

 森林保全関連のお金は、どういった使われ方をしているのでしょうか。

 栃木・鹿沼市は、鹿沼産木材を使った市役所の新庁舎の整備に、約3300万円を使いました。 (総事業費 約66億円のうち)
 埼玉・越谷市は、秩父産木材を使った鉛筆を購入し、配布しました。 1000本作成するのに、10万円使いました。
 山梨・都留市は、間伐材を活用した業務用名札ケースを94個作成し、33万円使いました。

森林保全関連のお金、使用例

■『森林環境税』二重負担、三重負担も

 今月から徴収が始まる『森林環境税』ですが、二重負担、三重負担になるという指摘もあります。
 37府県で、すでに様々な名称で独自の『森林税』を導入していて、年300〜1200円の負担をしています。 これに『森林環境税』が加わるので、『森林税』を二重で負担することになります。

37府県ですでに独自の“森林税”

 さらに、三重負担になるのが、横浜市です。
 横浜市民は、神奈川県の『水源環境保全税』で年約880円(平均額)、横浜市の『横浜みどり税』で年900円、これに国の『森林環境税』の年1000円が加わって、3つで合計約2780円です。

横浜市の担当者は、
「三重課税について、我々としては、それぞれ趣旨・目的が違う。ただ、“環境”という意味で一括りにできるので、市民の中には、三重と思う人もいると思う」と話しています。
横浜市では三重負担

■岸田総理肝いり 『定額減税』開始…経済効果は?

 今月から、物価高による国民の負担緩和のため、定額減税が始まりました。
 給与収入が2000万円以下の納税者とその扶養家族を対象に、所得税から3万円、住民税から1万円。1人当たり、年間で4万円が、納税額から減税されるというものです。 減税対象となるのは、約9500万人で、減税規模は3.3兆円です。

今月から『定額減税』が始まる

 例えば、夫婦と小学生の子ども2人の4人家族の場合、所得税3万円が4人分と、住民税1万円が4人分で、年間の減税額の合計は16万円です。

4人家族の場合 世帯の年間減税額は16万円
鈴木財務大臣は、定額減税の経済効果について、
「経済効果については、減税規模である約3.3兆円の半分程度が、消費に回ると見込まれる」と説明しています。
鈴木財務大臣は

 減税された4万円を何に使うのか、聞きました。

 1番多かったのは「食費などの生活費で使う」です。 次に「まだ決めていない」「貯金」「投資」でした。 「旅行」や「結婚式費用に充てる」「新しい家電の購入」などもありました。

定額減税の4万円、何に使う?アンケート
40代・会社員の男性
「物価高で生活が厳しい。ぜいたくとか、他に回す余裕はないから、生活費で使う」
20代・会社員の女性
「老後が不安だから、全額貯金する」
「生活費」「全額貯金」などの回答
定額減税について、第一生命経済研究所・首席エコノミストの永濱さんです。
「消費に回るのは、5分の1程度。残りは貯蓄に回されると思う。物価高対策としてならば、給付金の支給の方が、国民としてももらった感があり、公平感も高く、良かったと思う」と分析しています。
第一生命経済研究所 首席エコノミスト 永濱利廣氏

■『定額減税』企業は悲鳴「制度複雑で地獄…」

 定額減税について、所得税などを計算する企業側の声です。
 大阪市にあるタクシー会社・日本城タクシーです。 乗務員115人、事務員5人の120人が勤務しています。

坂本社長は、
「タクシー業界は歩合給。売り上げによって毎月一人ずつ給料が違うし、同じ人でも今月と来月で違う。制度が複雑で地獄」と話しています。
日本城タクシー 坂本篤紀社長

 タクシー会社の所得税減税の仕組みです。

 例えば、単身世帯・Aさん。 所得税の定額減税額は3万円です。 今月の給料から3万円分が減税されますが、1カ月分の給与所得額で減税しきれないと、翌月以降の給料に順次繰り越されて、8月分までで減税満額となります。

 4人家族のBさん。 所得税の減税額が、扶養家族分を含めた4人分で12万円となり、減税される月は10月までです。 このように、同じ会社でも、家族構成や毎月の所得額に応じて減税される期間が変わってきます。

所得税減税の仕組み

このタクシー会社で苦労したことです。
「家族は4人で扶養は奥さんと子ども2人でいい?」などと、朝礼で従業員1人ずつに、家族構成や扶養家族に変更や間違いがないか、確認しなければならなかったということです。

このタクシー会社で苦労したこと

 さらに、金銭面での負担です。
 従業員の給料計算をするシステムを業者に依頼して、約20万円で改修しました。 グループ会社を含めると、改修費用は約100万円かかったということです。

職員給与システムの改修を業者に依頼

 お金をかけてシステムを改修したのは、政府が所得税の減税額を、給与明細に明記することを義務付けているからです。 実際、このタクシー会社で今月から使われる給与明細には、定額減税の欄が追加されました。

政府は減税額の給与明細への明記を義務付け

 さらに、思わぬ苦労もおきました。 新しいシステムを使うたびにパソコンが停止し、その都度、日常業務がストップする事態が発生し、結果、従業員の残業につながったということです。

給与システムに不具合発生
タクシー会社の坂本社長です。
「人によって減税が終わる時期が違うし、複雑。手続きが面倒なのに、一番効果が薄いやり方で、やる気が失せる。これで景気が良くなるならしょうがないけど、そんな気配ない」といいます。
日本城タクシーの坂本社長は

 定額減税による、企業の経理担当者の負担です。

100人規模の企業の場合、
●減税対象者の抽出作業が、約25〜30時間。
●対象金額の算出は、約2〜4時間。
●給料や賞与に減税額を計算して反映させるのに、約10〜15時間。
●給与明細などの書類の出力に、約3時間と、 合計40〜52時間、作業時間が増えるという指摘もあります。
100人規模の企業での経理担当の負担(試算)
林官房長官は、6月から給与に減税額を反映できなかった企業について、
「労働基準法に違反し得るものと考えられる。直ちに罰則が適用されるものではなくて、違反の対応等に応じて個別に判断されるものと承知をしている」と違反対象となることを指摘しています。

■1円が1万円の給付に『調整給付』制度の問題点

 所得税と住民税の納税額が4万円未満で、定額減税で減税しきれなかった場合です。
 市区町村から減税しきれなかった差額が『調整給付』として、現金給付されます。 調整給付の対象は、3200万人が見込まれ、予算額は6800億円です。

『調整給付』制度とその対象者

 この調整給付金の問題点です。
  調整給付額は、定額減税しきれなかった分を支払うのではなく、定額減税しきれなかった分を1万円単位で切り上げて支給します。

 例えば、所得税と住民税の年間納税額が4万円に満たない3万9999円だった場合、減税しきれなかった分は1円ですが、差額の1円を給付するのではなく、1万円単位で切り上げるので、給付額は1万円となります。
 その結果、定額減税された金額『3万9999円』に加え、調整給付金が1万円で、4万9999円になり、定額減税4万円よりも多くなります。

調整給付額の仕組み
1万円単位での切り上げについて、内閣官房の担当者は、
「所得税は12月に確定するため、今回の減税額は去年の収入を基に計算。そのため、実際の納税額とは必然的にズレが生じる。“わかりやすさ”を重視して、1万円単位にした」としています。
内閣官房の担当者は

 この算出方法について街の声です。

40代の会社員男性
「雑すぎる。仕組みがおかしい。何でそれを良しとするのか」
40代の会社員男性
「誰に対する分かりやすさかわからない。平等ではない」
70代の自営業男性
「給付にすべき。シンプルにしてほしい」
算出方法について街の声は
税理士の寺田さんは、
「もはや定額でなくなっている。1人につき4万円という金額のなかで、1万円近くも差が出るのはおかしい。また、1万円単位の切り上げになることで、正しく減税されたか照合が難しくなるのではないか」と指摘しています。
税理士 寺田慎也氏

(「羽鳥慎一 モーニングショー」2024年6月4日放送分より)

  • 住民税通知書に“新たな税”
  • 森林環境税ってどんなもの?
  • 去年までは『復興特別税』
  • 東京経済大学 佐藤一光教授
  • 森林保全関連のお金(森林環境譲与税)
  • “森林なし” 渋谷区にも配分
  • 残りは今後老朽化建物の建て替えのため積み立て
  • 渋谷区と熊本・宇城市の比較
  • 森林保全関連のお金、使用例
  • 37府県ですでに独自の“森林税”
  • 横浜市では三重負担
  • 今月から『定額減税』が始まる
  • 4人家族の場合 世帯の年間減税額は16万円
  • 鈴木財務大臣は
  • 定額減税の4万円、何に使う?アンケート
  • 「生活費」「全額貯金」などの回答
  • 第一生命経済研究所 首席エコノミスト 永濱利廣氏
  • 日本城タクシー 坂本篤紀社長
  • 所得税減税の仕組み
  • このタクシー会社で苦労したこと
  • 職員給与システムの改修を業者に依頼
  • 政府は減税額の給与明細への明記を義務付け
  • 給与システムに不具合発生
  • 日本城タクシーの坂本社長は
  • 100人規模の企業での経理担当の負担(試算)
  • 『調整給付』制度とその対象者
  • 調整給付額の仕組み
  • 内閣官房の担当者は
  • 算出方法について街の声は
  • 税理士 寺田慎也氏

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