クリスマスも相次ぐ“クマ出没” シカが関係?「3頭連れクマ」増加の理由

スーパーJチャンネル

[2023/12/25 19:50]

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寒波が去ったクリスマスのきょう、そしてイブのきのうと、各地でまたクマの出没が相次ぎました。今も、冬眠しないヒグマが確認されている北海道では、「3頭の子グマ」を連れた親子の目撃情報が増加。人への影響を危惧する声が上がっています。

■クリスマスに“クマ出没”

寒波の影響で大雪が降った新潟県。
新発田市の住宅地では、寒波が去った24日、クマが目撃されました。

家族がクマを目撃
「ここをずっとトコトコトコトコ、歩く姿を窓から見た」「通報したら、大勢、警察が来た」「冬眠しないんだね。本当にびっくりした」

午前6時15分ごろ、体長50センチほどの子グマが自宅前の道を歩いていくのを見たといいます。

新発田市では、12月の目撃は3年ぶり。年末に差し掛かった時期の出没は、珍しいといいます。

近隣住民
「怖い、あまり外出したくない。出没情報が出たらすぐ家に入る」

新潟県は、今年、「クマ出没特別警報」を3年ぶりに発表。当初、11月末だった期限を、1月末まで延長し、この冬、警戒を続けています。今年12月の目撃などは、過去最多の51件に上っています。

新潟県鳥獣被害対策支援センター・葉葺久尚副所長
「暖冬の影響でクマの冬眠が遅くなる可能性があると専門家に言われていた。冬眠しているクマもいるだろうが、中には、冬眠せずエサをまだ求めているクマもいる可能性。最近、アーバンベアという人里で生活するクマもいるので」

25日も各地でクマが出没。福井市では、駆け付けた警察官が、成獣2頭を目撃しました。

■猟友会が警鐘「穴持たずクマ」

年末になっても、冬眠しないクマ。北海道では、去年、札幌市中央区で、大みそかにヒグマの姿や足跡が目撃され、通報が相次ぎました。

札幌市 熊対策調整担当・清尾崇係長
「年末年始もいつでも出動できるように、電話を持ち歩いている。通報が入れば出勤して現場に行く」

北海道猟友会も警鐘を鳴らしています。

北海道猟友会札幌支部防除隊・玉木康雄隊長
「クマのエサとなるドングリが今年、不作だった。その影響もあって皮下脂肪を十分、蓄えないと冬眠に入る条件が整わないので、遅れたと危惧している」

北海道猟友会札幌支部の玉木康雄さん。ヒグマが出没した際に、緊急の対応にあたる防除隊の隊長を務めています。この冬、「穴持たず」と呼ばれる、冬眠しないクマが出没することを危惧しています。

北海道猟友会札幌支部防除隊・玉木康雄隊長
「穴持たずは非常にまれな例で、冬寝ないで越すのは、非常に難しい。ただ冬に生き延びようとするクマがいるとすれば、人間から食べ物を奪取する能力があるか、エゾシカをハンティングする能力があるか、どちらかのクマ」

■急増するシカが標的に…

エゾシカを捕食することで、冬眠せずに冬を越すクマが現れる恐れがあるといいます。

24日、猟友会のメンバーは、急増するエゾシカを駆除するため、札幌市内の森へ―

北海道猟友会札幌支部防除隊・玉木康雄隊長
「食物連鎖の頂点のクマのエサになっている可能性もあるので、エゾシカの頭数を減らすことは必要」

エゾシカを狙うヒグマ…。根室市では、今年10月、シカを飼育する養鹿場にクマが侵入。

北海道猟友会札幌支部防除隊・玉木康雄隊長
「(クマが)冬の間にタンパク質やカロリーを摂取しようとすれば、当然、シカを仕留めなければ冬には生息できない。シカが増殖すればクマが摂取できる栄養源として考えられる」

ヒグマはどのようにエゾシカを捕まえているのでしょうか。これは今年8月、北海道の北部で撮影されたドローンの映像です。

ヒグマが猛スピードでエゾシカの親子を追いかけています。

早稲田大学 野生動物生態学研究室・風間健太郎准教授
「鳥を目的に撮影していたが、後から映像を見返すとシカをかなりの速度で追いかけるヒグマが映っていた。かなり驚いた」

その後、あぜ道に出ると、シカの親子は二手に分かれて逃走。ヒグマは分かれ道で立ち止まり、親を追いかけるもその差は開き、捕まえられなかったようです。

ヒグマがシカを捕まえるのは容易ではありません。

北海道大学大学院 獣医学研究院・下鶴倫人准教授
「シカが多いところでシカの数を減らす狩猟活動とか、有害捕殺の活動が盛んになればなるほど、その地域周辺にシカの死体が落ちている可能性が高まる。それを利用するヒグマも一定数、現れる」

■「3頭連れのクマ」猟友会が懸念

さらに、今年は、ヒグマをめぐって、新たな懸念が―

北海道猟友会札幌支部防除隊・玉木康雄隊長
「実は、一番私が懸念しているのは、3頭連れの母グマが市街地近辺で目撃されたこと」

札幌市では、今年、3頭の子グマを連れたクマが出没。子グマ3頭が、生ごみをあさる姿が目撃されました。

ヒグマは、冬眠中に1頭か2頭を生むことが多いとされるなか、3頭子グマの目撃が相次ぎ、人への被害拡大が懸念されています。

北海道東部・興部町(おこっぺちょう)の住宅近くの山で、10月に撮影された映像です。

母グマが、3頭の子グマを連れています。

こちらは、2021年10月の映像です。

背こすりする母グマの周りには、子グマ。1頭、2頭… 遅れて、3頭目がやってきます。自動カメラで撮影した写真家の黒澤さんは、これらの映像から、あることに気が付きます。

写真家・黒澤徹也さん
「親の肩に白い部分が同じ場所にあるので、おそらく同じ親じゃないかと」

肩の模様が似ていることから、母グマは同一個体であると、黒澤さんは推測しています。

写真家・黒澤徹也さん
「2年後にまた三つ子を産んだという感じじゃないかと。母グマが栄養状態が良くないと3頭は産めないと思う」「シカの死骸とか、食べるものには困っていない感じ。映るヒグマは丸々と太っている」

そもそも、ヒグマは、一度に、3頭産むことがあるものの、栄養が不足していると、その数が少なくなるといいます。

北海道大学大学院 獣医学研究院・下鶴倫人准教授
「例えば栄養状態が悪いと受精卵が体に吸収されて、本来3つあった受精卵のうち、1つが体に吸収されて2頭しか産まないことは起こりうる」

「3頭連れ」が目撃されていることと、クマがシカを食べていることは関係しているのでしょうか?

北海道大学大学院 獣医学研究院・下鶴倫人准教授
「シカに限らず、栄養状態が良ければ産んだ子の生存率が高まる可能性がある」

子グマが増えることで、今後も、人への被害が出る恐れがあると、猟友会は、注意を呼びかけています。

北海道猟友会札幌支部防除隊・玉木康雄隊長
「市街地近辺に巣穴を作るので、当然、そういうところに、子グマが出てくる確率が増えた。年明けの2月くらいに冬眠穴から母グマが出てくるが、母グマが子グマの周りに接近しようとしている人間を襲うリスクがある状況だと覚えてほしい」

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