世界ラリーの最終戦として、愛知・岐阜を舞台に「ラリー・ジャパン」が16日に開幕します。
日本大会ということもあり、やはり注目なのは日本人唯一の世界ラリードライバー、チームトヨタの勝田貴元選手(30)です。
ただ今回は、助手席に座っているアーロン・ジョンストンさん(28)に注目しました。何といっても勝利には絶対に欠かせない人です。
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■勝田貴元の相棒「コースをあまり見ていない」■勝田貴元の相棒「コースをあまり見ていない」
荒れた路面や道幅の狭い一般道路を走る世界ラリー。
いかなる状況でも、スピードを出せるのは、ドライバー横の“コ・ドライバー”、通称「コドラ」のおかげです。コドラの役割は、コースの情報をドライバーに指示することです。
トヨタの勝田貴元選手の相棒は、コドラ一筋12年、アーロン・ジョンストンさん。その仕事について聞いてみると…。
アーロンさん:「ああ…」
勝田選手:「忍耐?」
アーロンさん:「忍耐?間違いなく世界一簡単な仕事じゃないだろうね」
簡単じゃないというコドラの仕事。中でも一番の驚きは…。
アーロンさん:「コースをあまり見ていない」
一体、どういうことなのでしょうか?
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■“ペースノートは生命線”まさに職人技■“ペースノートは生命線”まさに職人技
マシンに乗り込んだコドラのヘルメットにカメラを装着し、コドラの見ている景色を確認してみると、コースは見ていません。というよりコースが見えません。
これは助手席の位置を可能な限り下げることで、重心を低く、走行を安定させるのが目的です。
では、なぜ指示が出せるのかというと、“ペースノート”と呼ばれるノートを見ているからです。
中を見せてもらうと、短い記号で、コース情報がびっしり書かれています。これは大会前に1000キロを超えるコースを2人で下見し、道幅や路面状況など走るのに必要な情報を書き込んだものです。
アーロンさん:「僕にとってペースノートを読む時の感覚は窓から(コースを)見るものではなく、マシンの動きを自分の体で感じる必要がある。マシンの挙動やドライバーのクセを感じてペースノートを読むんだ」
コースを見ずとも、走っている場所は、車体の傾きや体感スピードで把握。まさに職人技です。
つまりペースノートさえあれば前が見えなくても走れるのです。たとえ、ボンネットが開きっぱなしでも!それだけ、ペースノートは勝つための生命線といえます。
過去に、マシンが池に沈んでしまった際、逃げ出したコドラの手には、ペースノートがしっかりと握られていました。
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■最高の相棒に…勝田「ラリーの奥さんみたい」■最高の相棒に…勝田「ラリーの奥さんみたい」
勝田選手とアーロンさんは、タッグを組んで2年。結果もついてきて、最高の相棒となりました。
勝田選手:「実際の奥さんよりも一緒にいる時間が長いので、ラリーの奥さんみたいな感じ」
勝田選手:「けんか?」
アーロンさん:「まだない」
勝田選手:「幸いにも。(これからも)しないといいけど」
アーロンさん:「この1年何もなかったから、このままだといいな」
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■熟知したコースで「優勝を全開でとりに行きたい」■熟知したコースで「優勝を全開でとりに行きたい」
そんな2人が挑むのが、世界ラリー最終戦。愛知・岐阜を舞台に16日に開幕する「ラリージャパン」です。
去年はトヨタ勢最上位となる3位表彰台を獲得。相性の良い大会ですが、今の季節、日本ならではの難しさがあるそうです。
勝田選手:「やはり紅葉の季節だと枯れ葉とかが落ちてくるので、路面が見えなくなるんですね。見た目は全然滑りそうもない普通のコーナーなのに、苔が生えていたり、すごく滑る所が去年あったので」
日本のコースは狭い林道に加え、路面には落ち葉や苔など危険がいっぱい。海外のトップドライバーたちも、苦戦をしいられました。
そんななか、地元出身の勝田選手はコースを熟知しています。最高の相棒と今年こそ頂点を目指します。
アーロンさん:「できる限り良い戦いをし、キャリアベストを出せればお互いうれしい」
勝田選手:「他のラリーに比べれば自信はもちろんあるので、より表彰台の高い所から見渡す景色をアーロンに見てほしいし、そこは全開でとりに行きたい」
(「報道ステーション」2023年11月14日放送分より)