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2025年1月22日 08:55

イチロー氏が日本人初の米野球殿堂入り 満票に1票足りず「不完全だから進むことができる」

2025年1月22日 08:55

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日本時間1月22日(現地時間1月21日)に米野球殿堂入りが発表され、イチロー氏が日本選手として初の米野球殿堂入りを果たした。日米の野球殿堂入りとなる快挙である。史上2人目の満票は逃した。

米野球殿堂入りを果たしたイチロー氏の記録をコメントと共に振り返る。

■「まさに映画の世界という第一印象」マリナーズ入団会見

NPB通算打率.353、7年連続首位打者という驚異的な成績を残したイチロー氏は、2000年オフシーズンにシアトル・マリナーズと契約した。
日本人野手として初のメジャーリーガー誕生した瞬間である。

イチロー氏
「今日は自分と家族にとっても素晴らしい日になりました。自分が特別な思いを抱いていたシアトル・マリナーズに出会ったという事に大変興奮しております」
「初めてグランドに立たせてもらいましたけど、もうまさに映画の世界という第一印象ですね、とても大きな球場なのでこの細い腕ではホームラン打てるとは思いません」
「理想的なのは、野手の間をぬいて、あわよくば外野の間をぬいて、二塁打、三塁打という機会が多くなれば、それがベストかなと思っています」
「(日本のファンへ)しっかり見ていて下さいという事ですね」

■「獲れるとも思ってはいなかった」日本人初のシーズンMVP獲得

メジャー1年目のイチロー氏(2001年)
メジャー1年目のイチロー氏(2001年)

イチロー氏(当時・マリナーズ)は、メジャーリーグにデビューした2001年に157試合に出場して242安打、打率.350、8本塁打、69打点、56盗塁の成績を記録した。
首位打者、盗塁王、新人王、MVP、ゴールドグラブ賞、シルバースラッガー賞と数々のタイトルを獲得し、メジャーに衝撃を与えた。
MVP、新人王のダブル受賞は1975年のフレッド・リン外野手(レッドソックス)以来、史上2人目となる快挙であった。

ア・リーグMVPを獲得したイチロー氏(2001年)
イチロー氏
「(MVPを獲得することを自分自身では)期待していなかったので、獲れるとも思ってはいなかった。(期待して獲れないと)ショックが大きいですから。これだけのチーム、選手の数がいながら選ばれたことは大変重いと感じている」
「(日本の)ファンの後押しがあったからこそ受賞できた」

■「僕の野球人生の中では最高の瞬間」シーズン最多安打記録を更新

シーズン最多258安打目を放ち声援に応えるイチロー氏(2004年)
シーズン最多258安打目を放ち声援に応えるイチロー氏(2004年)

2004年10月1日に行われたレンジャーズ戦でイチロー氏(当時・マリナーズ)は、シーズン258安打目を放ち主要な打撃タイトルの中で最も長く破られず、不滅といわれた大記録であるジョージ・シスラー氏のシーズン257安打を84年ぶりに塗り替えた。
イチロー氏は最終的にこのシーズンは262安打を記録し、この記録はMLB公式サイトで「17の不滅と考えられる記録」として紹介されている。

シスラー氏の娘と握手を交わすイチロー氏(2004年)
シスラー氏の娘と握手を交わすイチロー氏(2004年)

258安打を放った直後、試合中に関わらずチームメイトが一塁ベース上に立つイチロー氏の下へ駆け寄り称える姿やスタンドで観戦していたシスラー氏の娘フランシスさんと握手をするシーンが印象的だった。

イチロー氏
「(Q.258安打達成して)ちょっと言葉にはできない。少なくとも僕の野球人生の中では最高の瞬間でした」
「(Q.シーズンを終えて)ありえないことをしてしまいましたね。
自分で自分の首をしめるというのはこのことではないかと思いますけども、簡単にまた届きたくもないという面もありますね」

■「獲得できたことは生涯忘れないでしょう」オールスターMVP獲得

オールスターでMVPを獲得したイチロー氏(2007年)
オールスターでMVPを獲得したイチロー氏(2007年)

2007年にイチロー氏(当時・マリナーズ)は、オールスターゲームにア・リーグの1番センターで先発出場。
第3打席にオールスター史上初のランニング本塁打を放つなど3安打2打点と大活躍し、日本人として初のMVPを獲得した。

イチロー氏
「(オールスター史上初のホームランと聞いて)そうなんですか、僕にとっても初めてなんですよ。それがオールスターで出るなんて嫌な球場ですね」
「(オールスターMVPを)日本でも獲ったことないんです。このような形で1回獲得できたことはね、生涯忘れないでしょう」
(Q.ホームランだけを意識して打席に入ったら何本打てる?)
「2割2分でいいんだったら40本と言っときましょうか(笑)」

■「200安打を続けて打っていく競争にピリオド」シーズン200安打の連続記録を更新

9年連続200安打を達成したイチロー氏(2009年)
9年連続200安打を達成したイチロー氏(2009年)

2009年、イチロー氏(当時・マリナーズ)は9年連続でシーズン200安打を達成し、それまで連続記録だったウィリー・キーラー氏(1894〜1901年)の8年連続を更新した。

翌シーズンにもイチロー氏はシーズン200安打を達成し、10年連続シーズン200安打を達成した。
自身の連続記録を更新し、最多回数でもピート・ローズ氏のメジャー記録10回に並んだ。

イチロー氏
「ようやく解放されましたね。人(キーラー氏の記録)との競争ですね、200安打を続けて打っていく競争にピリオドを打つことができた。
解放感でいっぱいですね」
(Q.「9」の形をしているネックレスについて)
「262安打の記録を作ったときに、うちの相方・弓子にプレゼントしてもらったんですよね。
200安打を9年(連続)誰も成し遂げていない記録、そういう意味がこもっている物なんです。
当時は2004年(メジャー4年目)の話なのでとても具体的に考えられる状況ではなかった、夢の数字だった。
それが今日こういう形で当時の2人の思いが実を結んだこと、形になったこと、野球の為であれば家族の時間を犠牲にしてきたこともありますし、彼女も受け入れてくれている。
これは共同作品だと僕は思っている」

■「マリナーズのユニホームを脱ぐと想像した時に大変さびしい思いに」衝撃が走ったトレード

ヤンキースへの移籍会見に臨むイチロー氏(2012年)
ヤンキースへの移籍会見に臨むイチロー氏(2012年)

2012年7月、イチロー氏がニューヨーク・ヤンキースへトレード移籍した。
マリナーズの象徴的存在だったイチロー氏がシーズン途中に移籍したことは、ファンに衝撃が走った。

また、NPB時代から背負ってきた背番号「51」はヤンキースでは永久欠番となっていたため、「31」を背負うことになった。

イチロー氏
「2001年からチームが勝った時も負けた時も僕がよかった時も悪かった時も同じ時間や思いを共有してきたことを思うと大変感慨深いです。
ファンの方と同じ時間、思いを共有したことを振り返り、自分がマリナーズのユニホームを脱ぐと想像した時に大変さびしい思いになりましたし、今回のこの決断は大変難しいものでした」
「20代前半の選手が多いこのチームの未来に僕がいるべきではないのではないか、ということでした。
そして、僕自身も環境を変えて刺激を求めたいという強い思いが芽生えてきました。できるだけ早くチームを去ることがチームにとっても、僕にとってもよいことなのではないかという決断でした」

■「これからも応援よろしくお願いしますとは僕は絶対に言いません」マーリンズにFA移籍

マーリンズ入団会見に臨むイチロー氏(2015年)
マーリンズ入団会見に臨むイチロー氏(2015年)

ヤンキースからFAとなったイチロー氏は、2015年にマイアミ・マーリンズと1年契約を結んだ。
また、背番号は再び「51」を背負うことになった。

イチロー氏
「新しいユニフォームを着てプレーすることに決まりましたが、これからも応援よろしくお願いしますとは、僕は絶対に言いません。応援して頂けるような選手である為に自分がやらなくてはいけないことを続けていく」
「僕の本能で、(ヤンキースで)31番になった時に、一番最初に書いたサインは51と書いてしまったぐらい僕の手は51番をよく覚えています。
無意識化で(また)しっかりと51が書けることすごく嬉しいです」

■「僕が何かをする事で僕以外の人達が喜んでくれる」メジャー通算3000安打

通算3000本安打達成し声援に応えるイチロー氏(2016 年)
通算3000本安打達成し声援に応えるイチロー氏(2016年)

2016年、メジャー16年目を迎えたイチロー氏(当時・マーリンズ)はメジャーリーグ史上30人目となるメジャー通算3000安打を達成した。
シーズン16年目での通算3000安打はピート・ローズ氏(史上最多通算4256安打を記録)と並び史上最速タイでの達成である。

通算3000本安打達成後に会見をするイチロー氏(2016年)
通算3000本安打達成後に会見をするイチロー氏(2016年)
イチロー氏
「結構しんどかったですからね、特にこの何日かは。
僕はこれまで自分の感情をなるべく殺してプレーをしてきたつもりなんですけれども、それも上手くいかず苦しい時間でしたね。
達成した瞬間にあんなにチームメイト達が喜んでくれて、ファンの人達が喜んでくれた。
僕にとって3000という数字よりも、その僕が何かをする事で僕以外の人達が喜んでくれる事が今の僕にとって何より大事なものだっていう事を再確認した瞬間でした」
「3000を打ってから思い出したことは、このきっかけを作ってくれた仰木監督(当時・オリックス)ですね。
神戸で2000年の秋にお酒の力を使ってですね、僕は(メジャーリーグに行くことを)口説いたんですけれども、その仰木さんの決断がなければ何も始まらなかった事なので、その事は頭に浮かびました」

■「またこのユニホームを着て、プレーをしたいという気持ちが心のどこかに常にあった」マリナーズに復帰

マリナーズに復帰したイチロー氏(2018年)
マリナーズに復帰したイチロー氏(2018年)

2018年、マーリンズからFAになっていたイチロー氏(当時・44歳)が古巣であるマリナーズに6年ぶりに復帰した。

イチロー氏
「2012年7月にシアトルにサヨナラを告げて、5年半が過ぎたんですけど、その間も僕の家はいつもシアトルにあって、いずれまたこのユニホームを着て、プレーをしたいという気持ちが心のどこかに常にあった」
「またこのシアトルのユニホームでプレーする機会を頂いたこと、2001年にメジャーリーグでプレーすることが決まった時の喜びとは全く違う感情が生まれました。もうとてもハッピーです」
「シアトルのファンの方々に、お帰りと心から言ってもらえるような自分でありたいなという風に。
それを出来るかどうかは、僕次第なので日々励みたいと思います」
「(Q.背番号と同じ51歳までプレーしたいと言っていたが?)
みなさん、よく50歳までという話をされることが多いと思いますけど、僕は最低50歳といつも言っているので、そこは誤解しないでほしいですね」

■「後悔などあろうはずがありません」世界の安打製造機が現役引退

MLB開幕戦第2戦 現役最後の打席に入るイチロー氏(2019年)
MLB開幕戦第2戦 現役最後の打席に入るイチロー氏(2019年)

2019年、イチロー氏(当時・マリナーズ)は東京ドームで行われた「MLB日本開幕戦 第2戦」の試合後に記者会見を行い、現役引退することを発表した。

球場内一周し、ファンに手を振るイチロー氏(2019年)
球場内一周し、ファンに手を振るイチロー氏(2019年)
イチロー氏
「今日のゲームを最後に日本で9年、アメリカで19年目に突入したところだったんですけど、現役生活に終止符を打ち引退することとなりました。
最後にこのユニホームを着て、この日を迎えられたことを大変幸せに感じています」
(Q.決断に後悔や思い残したようなことは?)
「今日の球場での出来事、あんなもの見せられたら後悔などあろうはずがありません。
もっとできたことはあると思いますけど、結果を残すために自分なりに頑張ってきたということは、はっきり言えるので」
(Q.最低50歳まで現役ということ言っていたが?)
「50歳まで、いや最低50歳までって本当に思ってたし、でもそれは叶わずで。有言不実行の男になってしまったわけですけど、その表現をしてこなかったら、ここまでできなかったかなという思いもあります。
だから、難しいかもしれないけど、言葉にして表現することは、目標に近づく一つの方法ではないかなと思っています」
引退会見をするイチロー氏(2019年)
引退会見をするイチロー氏(2019年)
イチロー氏
(Q.支えてきた家族へ)
「(妻は)一番頑張ってくれたと思います。
僕はホームゲームの時は妻が握ってくれたおにぎりを球場に持っていって食べるのですけど、その数が2800個くらいだったんですよ。
だから3000個いきたかったみたいですね。そこは3000個握らせてあげたかったなと思います。
とにかく頑張ってくれました、妻にはゆっくりしてもらいたいと思ってます」
「それと一弓(いっきゅう)ですね、我が家の愛犬ですね。
今年で18歳になろうかという芝犬なんですけど、さすがにおじいちゃんになってきて、毎日フラフラなんですが懸命に生きているんですよね。
その姿を見ていたら、オレも頑張らなきゃなって。
(一弓は)2002年にシアトルの我が家に来たんですけど、まさか最後まで一緒に、僕が現役を終えるときまで一緒に過ごせるとは思っていなかったので、これは大変感慨深いですね。本当に妻と一弓には感謝の思いしかないですね」

■イチロー氏のメジャー成績

試合数:2653
打席数:10734
打数:9934
打率:.311
本塁打:117
打点:780
安打:3089
盗塁:509
出塁率:.355
OPS:.757
シーズン最多安打記録「262安打」(2004年)
10年連続シーズン200本安打(2001〜2010年)
首位打者:2回(2001年、2004年)
盗塁王:1回(2001年)
最多安打:7回(2001年、2004年、2006年〜2010年)
シーズンMVP:1回(2001年)
新人王(2001年)
シルバースラッガー賞:3回(外野手部門:2001年、2007年、2009年)
ゴールドグラブ賞:10回(外野手部門:2001年 〜2010年)
コミッショナー特別表彰(2005年)
 ※2004年のシーズン最多安打記録更新を称えて表彰
  • マリナーズ入団会見をするイチロー氏
  • メジャー1年目のイチロー氏(2001年)
  • ア・リーグMVPを獲得したイチロー氏(2001年)
  • シーズン最多258安打目を放ち声援に応えるイチロー氏(2004年)
  • シーズン最多258安打目を放ちチームメイトに称えられるイチロー氏(2004年)
  • シスラー氏の娘と握手を交わすイチロー氏(2004年)
  • シーズン257安打記録を持つジョージ・シスラー氏(1973年)
  • オールスターで史上初のランニングHRでベースを回るイチロー氏(2007年)
  • オールスターで史上初のランニングHRを放つイチロー氏(2007年)
  • オールスターでMVPを獲得したイチロー氏(2007年)
  • 9年連続200安打を達成したイチロー氏(2009年)
  • ヤンキースへの移籍会見に臨むイチロー氏(2012年)
  • イチローとの別れを惜しむマリナーズファン(2012年)
  • ヤンキース本拠地デビュー戦のイチロー氏(2012年)
  • マーリンズ入団会見に臨むイチロー氏(2015年)
  • 通算3000本安打達成し声援に応えるイチロー氏(2016年)
  • 通算3000本安打達成後に会見をするイチロー氏(2016年)
  • 通算3000本安打達成を祝福するイチメーターのエイミーさん(2016年)
  • マリナーズに復帰したイチロー氏(2018年)
  • MLB開幕戦第2戦 現役最後の打席に入るイチロー氏(2019年)
  • 球場内一周し、ファンに手を振るイチロー氏(2019年)
  • 引退会見をするイチロー氏(2019年)
  • マリナーズ球団殿堂入りしスピーチをするイチロー氏
  • 2018年マリナーズに復帰したときに、ファンや球団が迎え入れてくれた思いが嬉しかった
  • MLBに挑戦した2001年に米野球殿堂入りを誰も想像できなかったと思う。一歩づつ近づいてこの日を迎えられたことは言い表せない。