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2024年11月12日 14:07

弓削智久【3】若い時にしか出せない未完成な味がある「筋肉バキバキになるのは…」

2024年11月12日 14:07

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2002年に「仮面ライダー龍騎」(テレビ朝日系)の由良吾郎役で注目を集めた弓削智久さん。2007年、W主演をつとめた映画「サクゴエ」(本田隆一監督)で脚本家デビュー。2009年には、「仮面ライダー龍騎」で共演した須賀貴匡さんを主演に迎え、短編映画「FREE」で監督業にも挑戦。12月14日(土)には映画「きみといた世界」(政成和慶監督)の公開が控えている。

■監督業にチャレンジ「向いてないなって…」

2009年、短編映画「FREE」で初監督を果たし、その撮影に密着したドキュメンタリー映画「バカは2回海を渡る」(渡邊貴文監督)も公開された。移動時間360時間、移動距離にして4000km、広大なアメリカを舞台に繰り広げられる2人の旅を追ったもの。

思わぬアクシデントも勃発する。

「『FREE』で初めて監督をやらせてもらったんですけど、監督には向いてないなって思いました。舞台がアメリカだったということもあるし、難しかったです。監督はもう二度とやらないというきっかけになりましたね」

――「仮面ライダー龍騎」の須賀貴匡さんとのコンビが良い雰囲気でしたね。龍騎の(由良)吾郎ちゃんのイメージがあったのですが、ハンディカムがないとか、ドタバタしているのが新鮮でした

「基本的にだらしのない人間なんですよ(笑)。ハンディカムの紛失やレンタカーのIDの置き忘れとか…いろんなことがありましたね。『あれがない、これがない』ってよくやっていました。今でも車の鍵がないとかって朝ドタバタしていることが結構あるので(笑)」

――そんな風には見えないですね。シャキッとしているイメージで

「自分ではシャキッとしているつもりなんですけどね(笑)。たまにものがなくなっちゃったり…というのはありますね」

――須賀さんとのコンビネーションもいいですね。弓削さんがバタバタしていても須賀さんは淡々としていて面白い組み合わせだなって

「そうなんですよ。須賀くんは冷静でした。僕だけ毎回移動する時にも荷造りでバタバタしていました。移動するのがわかっているのに毎回何かやっていました。生理的に1回全部荷物を出さなきゃダメなんですよね。最近変わってきましたけど、1回全部出して畳み直して…ということをしないと落ち着かないんです」

――それにしても「バカは2回海を渡る」というのは、すごいタイトルですね

「タイトルは、高崎卓馬さんという有名なCMプランナーの方が付けてくれたんです。だから僕のアイデアではないんです。高崎さんがあの映像を見て、このタイトルがいいって」

――撮影も含め、アメリカでの体験はいかがでした?

「広大な風景の中にいると、小さいことで悩むのはバカらしいなって思いました」

■家族4人で初キャンプ「おうちに帰りたいって…」

2022年、「パンドラの果実〜科学犯罪捜査ファイル〜Season2」(Hulu)に出演。このドラマは、科学犯罪対策室を創設した警察官僚・小比類巻祐一(ディーン・フジオカ)と天才科学者・最上友紀子(岸井ゆきの)、ベテラン刑事・長谷部勉(ユースケ・サンタマリア)が、「ゲノム編集」、「クローン」など最先端科学を手がける多国籍テクノロジー企業“ライデングループ”の野望を阻止すべく壮絶な闘いを繰り広げる様を描いたもの。弓削さんは、ライデングループから依頼を受ける闇仕事請負人・遠藤和馬役を演じた。

「Season1を毎週見ていたので、続編に出られると聞いてうれしかったですね」

――ミステリアスな役でしたよね。強くて迫力がありました

「そうですね。遠藤は人としての感情が欠落している冷酷な男。最先端科学を題材としているのも面白かったですね。僕は、昔も今も家でじっとしたりしているのが落ち着かないんですよ。家族もいるし、その時に興味があるものを本気でやるという感じですね」

――今もDJをされているのですか

「できますけど、やってないです。音楽は聞き続けていますけど、結婚してからクラブとかが苦手になっちゃって(笑)。結婚するまではよく行っていました。仕事で回したりしなきゃいけなかったので行っていたんですけど、それがサーフィンに変わっていったという感じです。夜遊んでいたのが朝遊ぶようになって健全になりました(笑)」

――趣味のところにサーフィンとキャンプと書いていますね

「はい。先週久々にキャンプに行きました。家族4人になってから初めてです。子どもたちをテントで寝かせてみようと思ってフェスに行ったんですよ。その時に他の家族たちと合同でテントを建てて、結構寒い中、寝袋にくるまって寝るというのをやりました」

――お子さんたちの様子はいかがでした?

「やっぱりまだ家でアンパンマンで遊んでいたかったんじゃないですか。4歳(長女)と1歳(長男)でキャンプの良さがまだわからないから、『おうちに帰りたい』って言っていました。『そりゃそうだよな。何でわざわざこんな寒いところにって思うよな。家の方がいいよね』って(笑)。一泊して帰ってきました。

うちの娘は、下手くそな司会者がずっと家にいるような感じなんですよ。ずっとしゃべっている。女の子は難しいです。僕は兄と2人兄弟なので、女の子への接し方がわからないんですよね」

■謎めいた男役なのに、ひとりだけサンタの衣裳で…

12月14日(土)に公開される映画「きみといた世界」に出演。この映画は、日常では交わることのなかったコミュ障でぼっちの高校生・卓(高橋改)とクラスの人気者・碧衣(中川可菜)が、他に誰もいない謎の世界に迷いこんだことで繰り広げられる青春SFラブストーリー。弓削さんは、謎の世界(異世界)の管理人役を演じている。

――ちょっと不思議な謎めいた役どころでしたね

「そうですね。これは2年くらい前に撮った作品なんです。まだコロナの時期だったので、マスクをつけたり外したり…という感じで撮っていました」

――お話が来た時はどう思われました?

「すごいセリフの量だなって思いました。説明セリフが多くて難しかったですね」

――謎めいた雰囲気がすごく合っていますね。最初は冷酷な人なのかなと思っていたのですが、だんだん変わってきて。そのギャップがいいですね

「良かったです。とっつきにくい感じのイメージがあっても、この管理人にも人の心が少し存在する瞬間があってもいいのかなっていうのは結構大事にして、ほぐれる時はほぐれちゃおうって。ひとりだけサンタクロースの衣裳まで着ていますからね(笑)

でも、この映画のいいのは、主演の2人が本当にピュアな感情を現場に持ってきていたんですよね。僕はあくまでストーリーテラーみたいなものなので」

――お二人がとてもナチュラルでしたね

「そうですよね。高橋くんは本当に色白でめちゃくちゃ細かった。この子たちのまだ10代、20代前半の未完成な雰囲気がいいなって思いました。昔を思い出したりして(笑)。だからよくやっているなあって。

高橋くんが『僕も筋トレやりたいです』とか言ってきたんですが、『もったいないかもしれないよ』っていうことはよく言います、若い子には。あまり若い時から(からだを)バキバキにしちゃうとイメージが固定されちゃって、そっち系の役しかできなくなったりとかするじゃないですか。

だから、(若い)その時期を大切にしなよっていう感じです。やっぱりその時期にしか出せない雰囲気と味というのがあるので、その時期にあまりバッキバキにしたらもったいないと思います」

――この作品の撮影を通して感じたことは?

「人が真剣な様って、やっぱり心を打つなあって思いました。卓は単純に彼女のことがずっと好きで、彼女のほうは興味がなかったけど…。どうすることもできない感情というのは、二人ともよく出ていた気がします。何か久々にこういう映画を見たなっていう感覚でした。ピュアな映画だなって思いました」

――若さゆえのイタさもよく出ていますね

「そうそう、こういうイタさってあったよな、若い時ってって思いますよね。叶わないかなと思いながらもちょっと行動を起こして、それが思いっきり滑ったりとかいうのが可愛いなって(笑)

こういう映画は少なくなってきたと思うので、是非劇場でご覧になってほしいです。あと、主題歌がすごくステキでした。エンドロールの時にいい曲だなって思いました。この世界を包み込むような感じで」

――撮影で印象に残っていることは?

「待ち時間が長くて、めちゃめちゃ寒かったんですよ。御殿場にある廃校を借りて撮っていたんですけど、本当に寒くてつらかった。からだが冷えきっちゃって…それで少し荒んだ感じが出たかもしれないですね(笑)。

でも、僕はシーン的には場所の移動があまりなかったので、4日ぐらいかな。あと異世界のCG部分の撮影だけはまた別日に撮ったんですけど、それが結構大変でしたね。

グリーンバックの中で想像しながらやるというのが特撮でも多いんです。『ここにこれぐらいの物体(コア)があって、こんな感じで回っています』みたいな説明を受けて。特撮は結構多いんですけど、やりすぎないようにとは思っていましたね」

――完成した作品をご覧になっていかがでした?

「あんなに真っ白な世界なんだって結構驚きました。思っていたよりずっと真っ白でした。そういうのは、すごく楽しみでもありますね」

――今後はどのように考えていらっしゃいますか

「配信の作品とかに多く出ていきたいなというのはありますね。『彼岸島』(キム・テギュン監督)という韓国人の監督の映画に出演したことがあるんですけど、機会があれば海外の作品もやりたいです。チェンジしていく時期だと思っていて、同じようなことをやり続けても何も変わらないかなと思うので、いろいろなことに挑戦していきたいなと思っています」

筋肉のために食事なども気をつけているというだけあって、体脂肪の低さは洋服を着ていてもわかるほど。186cmの長身でプロポーションの良さがスクリーンに映える。キレのいいアクションシーンもまた見せてほしい。(津島令子)