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2025年1月7日 14:05

俳優・前原滉 話題作に立て続けに出演!「自分ではあまり振り返ったことがなくて…」

2025年1月7日 14:05

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映画「あゝ、荒野 前篇」(岸善幸監督)のクライマックスシーンで壮絶な死を遂げる衝撃的な役どころを演じ切り注目を集めた前原滉さん。連続テレビ小説「まんぷく」(NHK)、「あなたの番です」(日本テレビ系)などに出演。2021年には、「きまじめ楽隊のぼんやり戦争」(池田暁監督)で映画初主演を果たし、同年、映画「彼女来来」(山西竜矢監督)にも主演。現在、主演映画「ありきたりな言葉じゃなくて」(渡邉崇監督)が公開中。(※この記事は全3回の中編。前編は記事下のリンクからご覧いただけます)

■初めての朝ドラで癒し系キャラに

映画「あゝ、荒野 前篇」の翌年、2018年には連続テレビ小説「まんぷく」に出演。このドラマは、インスタントラーメンをこの世に生み出した実業家・安藤百福さんとその妻・仁子さんの半生をモデルにしたもの。前原さんは、萬平(長谷川博己)が起こした「たちばな塩業」(後に「たちばな栄養食品」)の従業員「塩軍団」の一人、小松原完二役を演じた。

ランニングシャツに丸メガネがトレードマークの癒し系キャラとして話題に。

――立て続けにいろいろな作品に出演されているというイメージがありますが、ご自身ではいかがですか

「自分では、あまりちゃんと振り返ってないんですよね。気づいたらありがたい状況になっていたみたいな感じです。

本当に申し訳ないんですが、出ていた作品が何年に世に出た作品だったかと聞かれてもわからないんですよね。作品が出ているときぐらいに『これ見た。良かったよ』と言って仕事をくださる方がいて…ということが多いのですが、自分ではあまり実感がなくて。だから、自分の中では時系列が結構バラバラかもしれないですね」

――「まんぷく」は、「あゝ、荒野 前篇」の川崎敬三とはまったくイメージが違う役だったので新鮮でした

「何か不思議ですよね。『まんぷく』の方が、昔のような感じがします。ちょっと力が抜けた雰囲気というか。はっきり言って川崎敬三は嫌な男じゃないですか(笑)。

なので、(演技の)幅みたいなのを見せられる役どころを定期的にいただけるのはありがたいなと思います。どっちかというと、田舎っぽい青年みたいなのをやった後に、川崎敬三のような役をやって、また『まんぷく』みたいな役に戻って…という感じで。

それで、『あなたの番です』でまた変な役をやって…みたいな(笑)。何か定期的に役柄の雰囲気が違うので面白いです」

2019年、「あなたの番です」に出演。このドラマは、マンションに越してきた年の差婚の新婚夫婦(田中圭&原田知世)が住民会で行われた「交換殺人ゲーム」に巻き込まれていく様を描いたもの。前原さんは、マンションの新管理人・蓬田蓮太郎役を演じた。仕事にやる気はないが、賃貸の部屋のスペアキーを所有していたり、住人の木下あかね(山田真歩)に好意を寄せたり、妙に馴れ馴れしかったり…ちょっと怪しげな人物。

――「あなたの番です」の管理人さんもちょっと不思議なキャラでしたね

「すごく楽しかったです。ある意味独立した人間というか、物語の中枢に出たり入ったりするけど大きく関わっていない。でも、何か犯人っぽいなという感じもあって。

わりと自由にできるという意味でいうと、ああいう役柄が結構好きかもしれないです。何を言っても成立するという感じで面白かったです」

■見た目と雰囲気がハマりやすい?

2021年には「きまじめ楽隊のぼんやり戦争」で映画初主演。これは、目的も理由もわからないまま、何十年も毎朝9時から夕方5時まで戦争を続けている人々を描いたもの。前原さんは、音楽隊への人事異動を言い渡される真面目な兵隊・露木役。

「この作品もすごく楽しかったです。何か新しい表現方法というか。池田監督には『この映画はこれで行くんです!』という、太い芯みたいなものがあって。『それはちょっとどうですかね?』みたいな迷いがあまりなかったんです。『じゃあ、やってみよう』みたいな感じで。

絵本みたいな作品だけど、中身はちゃんとあって、いろいろ考えさせられる部分もありました。何か余白が多いと多いで、そういうのがまた浮き出てくるんだなっていうのは、面白い作品だなと思いました」

――劇中では川の向こうとよくわからないままずっと戦争が続いて戦っている。ある意味、よくわからないSNSの世界で知らない人に叩かれて戦わなければいけなかったりする今の時代と重なりますね

「そうなんです。全然デジタルじゃないけど一緒なんですよね。ああいう風な表現方法だけど、そこがちゃんと出てくるっていうのはいいなあって。

軽くなりすぎないで、ちゃんと中身が詰まっているというのも面白いなと思いました。すごく楽しかったですね。初主演映画としてはちょっと変わっている作品ですけど、何かすごい自分っぽいなとも思うというか」

――主演と聞いたときはいかがでした?

「『ありがとうございます』というか。今回もそうですけど、何か背負うということが、まだあまり実感できてないんですよね」

――「きまじめ楽隊のぼんやり戦争」は「第21回東京フィルメックス」で審査員特別賞を受賞しました。主演映画が賞を受賞されたと聞いたときは?

「映画を作った人たちのおかげなので、本当に『監督ありがとうございます』みたいな感じでした。作った人たちがちょっと報われる瞬間ですよね」

同年、映画「彼女来来」にも主演。前原さん演じる主人公・佐田紀夫は、キャスティング会社で働く30歳。交際3年目になる恋人の茉莉(奈緒)と平穏な毎日を送っていたが、夏のある日、奇妙な感覚に襲われる。目が覚めると部屋にいたはずの茉莉の姿はなく、代わりにマリと名乗る見知らぬ女性(天野はな)が…という展開。

「『彼女来来』は、山西さん(監督)がSNSで『やってほしいねんけど、会社の方の連絡先を教えてくれるかな?』みたいな感じで連絡をいただいて。こういう話をやろうと思うというので、『絶対やりたいです』みたいなことから始まりました。何か不思議な話ばかりやっていますね(笑)

僕は、汎用性が高いのと、物語とか洋服とかも多分そうなんですけど、あまり強烈に合うわけじゃないけど反発はしないみたいな感じで、親和性(周りとなじみやすい)みたいなのは多分あるんだと思うんですよ。顔が薄いので(笑)。僕自身というよりも、多分見た目とか持っている雰囲気が、いろんなものにハマりやすいんだと思います。

無表情でいたら、きっと犯人みたいにも見えるし、笑っていれば穏やかにも見えるし…というところで幅があるから、不思議な物語の中にいても多分おかしくならないんだろうなって。自分がそうだからというより、そうなんじゃないかなって思っています。第三者っぽい分析ですけど」

――この作品のときも主演だというプレッシャーはそんなに感じることはなく?

「プレッシャーを感じた方がいいんだなって思い続けていたときだと思います。そのときとかは、多分自分よりどこかに置く癖が自分の中にあって、自分の事にしていかなきゃいけないみたいなところは最近すごくあります」

――出演作品はどのように決めているのですか

「特に選んだりしてないです。スケジュールが空いていれば基本的には何でも…という感じです。ちょっと種類の違うお仕事とかは、一度検討することが多いです。

1回だけ自分の意思で『ちょっと違うかもしれません』というのがあったかな。再現のドラマをスタジオで見るみたいなので、お笑い芸人の方が主役で、それに絡む地元のヤンキーみたいな役があったときに、『あまり面白くできる自信がないです』というお話をしてやめたことがありました。

ドラマというよりもコントっぽい部分もありつつの再現ドラマだったので、それは面白くできる自信がないかもしれませんというので、自分の意思でやめたことがありますけど、それが唯一かもしれないです。

それ以外でやめておこうと思ったのは、2回目が今回の映画『ありきたりな言葉じゃなくて』のお話を最初にいただいたときです。ほかにはないですね。本当に何か変な役、不思議な役とかでもいい。面白いです」

癒し系からエキセントリックなキャラまで幅広く演じ分け、見事にハマる前原さん。「直ちゃんは小学三年生」(テレビ東京系)では小学校3年生の男の子・てつちん役に挑戦。次回はその撮影エピソード、公開中の主演映画「ありきたりな言葉じゃなくて」の撮影裏話なども紹介。(津島令子)

ヘアメイク:ゆきや(SUN VALLEY) 

スタイリスト:矢島世羅