【池上解説】ロシアが侵攻で豊かに!?争いが終わらない意外な理由

[2024/04/20 21:00]

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テレビや新聞であまり報じられないけど、その理由や背景を知ると面白いニュースが世の中にはたくさんあります。そういったニュースを今回は「池上流ニューストリビア」として解説します。

1:熊本で半導体バブル!?一体なぜ

今空前の好景気となっているのが、熊本県にある人口4万人ほどの小さな町、菊陽町です。今パートやアルバイトの時給は全国平均で1230円(マイナビ調べ)ですが、こちらでは時給2000円も珍しくなく、食堂の仕事で時給3000円に達するところもあるといいます。一体なぜでしょうか?その理由は半導体です。

世界トップレベルの技術を誇る、台湾のTSMCの工場ができたためたくさんの雇用が生まれ、まるでバブルのような好景気になった、というわけです。でもなぜ熊本県の小さな町にそんな最先端の工場が作られたのでしょうか。

■そもそも半導体って何?

まずは半導体とは一体何か?基礎の基礎から説明しましょう。

その名前の通り半導体とは「半分」導体のことです。導体とは電気を通すもののこと、逆に通さないものは不導体や絶縁体と呼ばれます。そして半導体は「半分」導体ですから、電気を通したり通さなかったりする。この特性によって電流をコントロールして、計算をしたり機械を思った通りに動かしたりするわけです。

半導体製品ができたことで、パソコンや家電などの小型化・軽量化・高性能化が進み、昔は30トンもあったコンピューターが手のひらに収まるスマホサイズにまでなった、というわけです。

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■なぜ熊本で半導体?

■なぜ熊本で半導体?

ではなぜ熊本に半導体工場なのでしょうか。実は半導体を作る過程ではたくさんの水が必要となります。製造工程の実に3割が洗浄とも言われています。

工程で多くの水を必要とするので、阿蘇山を有し、きれいな水が豊富な熊本がちょうど良かったのです。

1988年頃、半導体産業のトップと言えば50.3%という圧倒的シェアを誇る日本でした。それがあっという間に後れを取り、今ではシェア約10%(2019年)、半導体後進国となってしまいました。

コロナ禍では世界的に半導体が不足し、日本でも家電や車が手に入りにくいなど、大きな問題となりました。もうそういったことが起きないよう、世界トップクラスの技術を持つTSMCの工場を誘致した、というわけです。

2:ロシアが侵攻で豊かになった!?一体なぜ

ロシアのウクライナ侵攻から2年以上が経過しました。
国の豊かさを示すGDP(国内総生産)は侵攻前と比べ、ウクライナでは減っていますが、ロシアは増えているのです。しかもその伸び率もすごいんです。日本はもちろんアメリカより多い3.6%にもなっています。

ロシアはアメリカやヨーロッパから経済制裁を受けているのはご存知ですよね?そんな中、どうして国が豊かになっているのでしょうか。

実は今ロシアはコピー大国になっています。
例えば、ロシアで人気のコーヒーショップ「STARS COFFEE」

どこかで見たことのあるような看板ですよね。
そのほかにもこんな店舗・商品がたくさんあります。

ロシアから撤退した企業の店や店員をそのまま使うことで、国民は経済制裁前と同じような商品を手に入れることができるのです。
結果、儲けたお金が国外に流れていかない、国内で循環するので、むしろ
景気が良くなっているんですね。

さらにロシアはもともとエネルギー大国。食料もたくさん作っています。
基本自給自足できるために、経済制裁の効果が出にくいんです。

そして他にこんな理由もあります。実はイギリスがロシアの原油をこっそり購入しているんです。

経済制裁のためイギリスはロシアから直接輸入することはできません。
でも、中国やインドに輸出され、そこで精製・加工した原油ならどうでしょう。こうしたいわば抜け道を利用して、イギリスはたくさんのロシア産原油を輸入しているのです。

日本もひと事ではありません。日本だってサハリンから大量のロシア産天然ガスを輸入しています。こうして各国が資源を買ってくれるので、ロシアは侵攻前にくらべて経済成長を続けられるのです。

ただし、ロシアでは作れない、高性能の半導体などはどんどん不足してきています。
また、優秀な若者は徴兵を恐れて国外に逃げています。長期的にはロシアは経済成長が出来なくなるかもしれません。でも短期的に見ればむしろ成長している。だからこそウクライナへの侵攻をやめられない、そんな背景もあるんです。

(池上彰のニュースそうだったのか!! 2024年4月20日放送より )

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