埼玉県八潮市の道路が陥没し、トラックが転落した事故。4月28日で、事故から3カ月となった。5月2日午前4時半ごろ、八潮市の現場で警察や消防隊員らが下水道管の中に入り、転落したトラック運転手の男性の救出活動が再開された。男性は救出されたが、死亡が確認された。
これまでの情報をまとめた。
■28日昼頃 運転手とは会話できている状態
■28日午後11時 引き上げる作業でワイヤ切れる
■29日午前1時すぎ 荷台部分を引き上げ→新たに陥没
■29日午前3時 事故現場の周辺住民に避難指示
■30日午前2時ごろ 2つの穴がつながる
■31日午前 発生から72時間経過
■31日夜 スロープが60%完成
■2月1日正午ごろ 運転手がいるキャビン、目視で確認できず
■1日午後 スロープ完成、救助ようやく本格化
■1日午後5時ごろ 穴の中の水が増え足場が悪くなり作業中断
■1日午後10時ごろ スロープ強化作業 再開
■2日 新たに陥没が広がる恐れ 5軒に避難要請
■2日 一時中断していた作業再開
■3日午後 新たなスロープ着工
■3日午後 4日14時〜17時の水の使用を控えるよう埼玉県が呼びかけ
■4日 発生から1週間 男性の安否不明のまま
■5日午前 2本目のスロープ完成の見通し
■5日夕方 転落トラックの運転席部分らしきものを発見
■6日 運転手の男性確認できず 流された可能性も
■6日午前 ドローンで下水管内の調査進める
■8日午前 コンクリート製の用水路(ボックスカルバート)撤去完了
■9日午前7時半 消防が穴の中で捜索を開始
■9日午前 穴の中の捜索を断念
■10日 下水管の中で硫化水素が発生 活動の障害に
■10日 小型カメラ使った捜索を実施
■11日 発生から2週間 新たに穴を掘り、位置関係特定へ
■11日午後 「キャビンの中に人がいる可能性」大野知事が言及
■12日正午 下水道の使用自粛要請を解除
■19日午前 周辺の地盤改良工事完了 住民への避難要請解除
■22日午後 周辺住民説明会で大野知事「復旧には長い期間」
■28日 事故から1カ月
■3月3日 埼玉県 下水の河川への緊急放流を4日午前0時で終了と発表
■14日 初の原因究明委員会「過去の点検方法に問題なし」
■14日 救助に向けた工事の概要を発表
■28日 事故から2カ月 バイパス工事は5月ごろの完了目指す
■4月23日 下水道本格復旧案は完成までに5〜7年か
■24日 仮排水管によるバイパス工事が完了
■25日 「4つの想定外」が無線記録で判明
■30日 早ければ5月1日に運転手の救助に向け作業再開の方針
■5月1日午前4時35分 捜索再開に向け下水道管内に入り初の確認作業開始
■1日午後5時すぎ 運転席に男性とみられる姿を目視で確認と発表
■2日午前8時 トラック運転手を下水道管内から救出も死亡確認
■「生きて帰りたいと思っていたはず」トラック運転手の会社代表と遺族がコメント
■16日 運転席部分を引き上げ完了
■16日 運転席部分を引き上げ完了
運転席部分は下水道管内に残っていたが、16日午前7時ごろから引き上げが始まった。県によると、運転席部分が残っているとみられる場所に向け、地上から垂直方向に掘っていた穴から引き上げを行っているという。引き上げられた運転席部分は今後、警察などが保存状態を詳しく調べる方針。
■「生きて帰りたいと思っていたはず」トラック運転手の会社代表と遺族がコメント【全文掲載】
本年1月に発生した八潮市道路陥没事故(本件事故)の被害者であるトラックドライバーが勤務する会社の代表者です。この場をお借りしまして被害者遺族様と共にコメントさせて頂きます。
本件事故に関しましては、被害者であるトラックドライバーを救助するため、関係各署へ通報してくださった方、消防隊などが到着するまで交通整理などをして頂いた方、排水自粛などの不便を余儀なくされた近隣住民様、120万世帯にものぼる下水道排水関連地域の住民の皆様、企業様、店舗経営者様がいらしゃいます。このように被害者救助活動に、直接・間接に多大なる御協力を報道で目にするにつけ、涙が止まりませんでした。
加えまして、温かい励ましの言葉を頂いた関連企業様、ご友人・知人の皆様、本当に有難うございました。それらの言葉に我々がどれだけ勇気づけられたことかわかりません。
被害者遺族様、並びに弊社を代表して、心よりお礼申し上げます。
トラックドライバーは必ずきっと生きて帰って来てくれると信じて、我々一同、希望を捨てず今に至りました。
しかし、残念ながら大変無念な結果となってしまいました。
被害者のトラックドライバーは、仕事に真面目で、とても温厚な方でした。 おっちょこちょいな部分もありましたが、それも含め憎めない素直なお人柄であり、運転はその性格のまま、とても優しい運転をされていました。 会社の事にも気にかけて仕事をしてくれる、会社にとって大変貴重かつ余人をもって代えがたい人物でした。 ご高齢にもかかわらずムードメーカー的存在で、帰社すると事務所内も自然と笑顔に包まれたものでした。
20年以上も働いてくれたのですが、体が動く限り働きたいとの本人の強い要望もあり、会社は将来的にも出来る限り雇用を継続していくつもりでおりました。
本件事故は突然にやってきました。 被害者のような良い方が何故このような悲惨な事故に巻き込まれなければならないのか、心の整理がつきませんでした。自分を責めることもありました。 しかし、時が戻る訳はなく、あの日から被害者は帰ってきません。 被害者遺族様も我々従業員一同も、被害者ドライバーのことを哀傷しきっております。
もう2度と同じ思いはしたくありません。
関係各署の、皆様には、本件事故の原因の特定・改善にご尽力いただき、2度と同じ事が起こらないように、世の中の人が公道を安心して走行できるようにしていただきたいと思います。
事故から3カ月以上が経ち、ようやく父が救出されました。
道路陥没事故に巻き込まれるなんて、想像すらしていない出来事でした。
落下した車内に取り残された父は、心の強い人だったので、恐怖や苦痛と戦って、力尽きるまで生きて帰りたいと思っていたはずです。
それを想うと体が震え、胸が締め付けられる想いです。
体が大きく、何かと頼れる父でした。少し頑固なところもありましたが、いつも笑顔で、とても優しく温厚な性格の父。
私たちにとって、かけがえのない存在でした。
孫が生まれ愛情を注ぎ、ひ孫が生まれ更に沢山の愛情を注ぎ、これからの成長をとても楽しみにしていました。
みんなが大好きな父が突如として居なくなってしまった事実を、未だに信じることも、受け止める事も出来ません。
まだまだ時間が必要です。
今は父の為に、私たちが出来る事を精一杯やり、前に進んで行かなければならないと思っています。
最後になりますが、本件事故によって、被害者を失ったご遺族はもちろん、弊社においても、本件事故により心身面・事業の継続面等において甚大なる影響が生じております。
私は被害者の名誉を守るのはもちろんのこと、現在働いて頂いている従業員を守る事も使命であり責務だと考えております。
これまでも、ご遺族様や弊社は、報道機関の皆様に対して実名報道を一切控えていただくよう、強く要請しておりました。しかし、遺憾ながら、個人名や会社名を特定した、あるいは特定しうるような報道がなされ、それによってご遺族様等の傷ついたお気持ちにさらなる二次被害が生じることとなっております。今後は、被害者遺族様及び弊社において、本件事故に関する発表や取材への対応を行うことはございません。被害者遺族様や弊社を特定しうるような報道をすることや、当方らへの取材行為を控えていただきますよう、強くお願い申し上げます。
会社代表
被害者遺族様一同
■2日午前8時 トラック運転手を下水道管内から救出も死亡確認
2日午前4時半ごろ、八潮市の現場で警察や消防隊員らが下水道管の中に入り、転落したトラック運転手の男性の救出活動が再開されました。
内部では硫化水素が検出されているため、消防隊員らは防護服やボンベを装備し、活動時間を限定するなどして作業にあたりました。
男性は救出されましたが、死亡が確認されました。
県は男性が取り残されていた運転席部分を引き上げる準備も進めています。
■1日午後5時すぎ 運転席に男性とみられる姿を目視で確認
埼玉県は消防などによる下水道管内での確認作業で運転席部分に男性とみられる姿が目視で確認されたと明らかにしました。
1日午前には事故後初めて、下水道管の中に消防や警察が入り、有害な硫化水素の量などを確認しました。
その後、1日午後に行われた災害対策本部会議で、埼玉県の大野元裕知事が運転席部分に男性とみられる姿を目視で確認したと明らかにしました。
県は男性について、明日にも救出活動を行うということです。
■5月1日午前4時35分 捜索再開に向け下水道管内に入り初の確認作業開始
取り残されている運転手の捜索に向けて事故後、初めて下水道管内に消防隊員らが入り、状況の確認作業が始まりました。
1月に起きた八潮市の道路陥没事故では、転落したトラックの運転席部分が下水道管内で見つかり、男性運転手の安否が分かっていません。
運転手の捜索活動のために、下水道管内の水を迂回(うかい)させる工事などが進められ、先週、完了しました。
しかし、有害な硫化水素の濃度などが分かっていないため、消防隊員らが今月1日午前、上流側から下水道管内の状況を確認する作業を始めました。
下水道管内に人が入るのは事故後、初めてです。
県は下水道管に垂直に穴を開けて重機で運転席部分を引き上げる準備もしていて、内部の安全が確認されれば、本格的に捜索活動を再開します。
■4月30日 早ければ5月1日に運転手の救助に向け作業再開の方針
運転手の男性を捜索するため、下水道管に垂直に穴を開けるための工事などが準備されてきたが、今月30日に行われた会見で大野元裕知事は男性の救助活動について、早ければ5月1日にも運転手がいるとみられる現場付近を確認するため、人を向かわせる方針であることを明らかにした。事故が起きてから下水道管の中に人が入るのは初めて。
■4月25日 「4つの想定外」が無線記録で判明
ANNが入手した事故当日の消防の通信記録から、当初は救助に要する時間を「20分以上」と見積もっていたことが分かった。「4つの想定外」が救助を阻んでいたことが見えてきた。
独自入手した無線記録の詳細■4月23日 下水道本格復旧案は完成までに5〜7年か
埼玉県は運転手の救出作業を進めるとともに、現場の下水道の本格的な復旧に向けた工事方法の検討を行っている。その中で、県は下水道管が破損した際の影響などを少なく抑えることを目的として複数の管を設置する案を示しているが、この案について今月23日の委員会で完成までに5年から7年かかる見通しであることを明らかにした。県は復旧工事の方法が固まり次第、周辺住民などに詳しく説明する方針。
■28日 事故から2カ月 バイパス工事は5月ごろの完了目指す
2カ月が経った現場の穴は元々は車1台分ほどの大きさだったものが、救出作業などのために周辺の住宅のすぐそばまで広がった。直径100メートルほどになってる。これまで、補修工事の対象ではない腐食が現場付近の下水道管の点検で見つかっていたが、その後の県への取材で、4年前に現場の数10メートルほどの場所にある下水道管の点検で、補修の対象である腐食が見つかっていたことが新たに分かった。県は来年にも補修工事を行うための準備を進めていましたが、その前に事故が起った。
いまだ救助されていない男性の捜索には、まず下水道管内の水位を下げる必要がある。現在、その水を迂回(うかい)させるためのバイパスを作る工事が行われていて、県は5月ごろの工事完了を目指している。さらに27日からは、この穴から20メートルほどの場所の男性がいると考えられている場所に向けて、その真上から直接穴を開ける掘削作業も始まった。ただ、雨の状況などにより作業が遅れる可能性もあり、具体的な捜索の見通しはいまだ立っていない。
■3月14日 救助に向けた工事の概要を発表
出典:埼玉県公式チャンネル(サイタマどうが)
■3月14日 初の原因究明委員会「過去の点検方法に問題なし」
2022年に現場付近の下水道管の中で行われた点検では、緊急の補修対象ではない腐食やひび割れが複数、確認されていた。14日に開催された第三者の土木工学の専門家などによる原因究明委員会では「過去の点検方法に問題はなかった」とされた。委員会は今後、現場を視察するなどして原因究明を進め、夏頃に中間報告をまとめたいとしている。
■落ちたトラック 穴拡大で救助作業が難航
事故があったのは、1月28日午前9時50分ごろ。「道路が陥没していてダンプカーのようなものが落ちている」と110番通報があった。
現場は県道54号線の交差点で、首都高速八潮インターチェンジから北に700メートルほど離れた場所。陥没した穴は直径10メートルくらい、深さは10メートルほどあり、4トントラックが落ちた。28日昼ごろには、トラックの運転手と会話ができていた。
陥没した原因は、道路の下を通る下水道管が破損したことに関係しているとみられている。
救助活動は難航した。周辺のアスファルトが崩れる二次被害の恐れがあったためだ。トラックの荷台をクレーンで引き上げたところ、29日午前1時すぎに新たな陥没が発生。その後2つの穴が拡大し、巨大な穴に。穴の中には水がにじみ出し、地盤の緩みが懸念され、作業は中断と再開を繰り返した。
事故から3日が過ぎる31日には、穴は幅40メートル、深さ15メートルほどに拡大。下から8メートルほどが土砂で埋まっていた。穴の内部に重機を入れることができるよう、スロープづくりも進められた。
事態が動いたのは、事故から8日目を迎えた2月5日。現場から100〜200メートルほど下流の下水道管の中で、運転席部分とみられる物が発見された。県が行ったドローンを使った調査で判明し、一部が水につかった状態で変形していたという。
その後、地上から穴をあけ小型カメラで現場の状況を確認する作業などが進められた。事故から2週間となった11日には、陥没した場所から30メートルほどの場所で、落下したトラックの前方部分にあたるキャビンが確認された。県は、5日の時点で現場から100〜200メートルほどの場所で確認したとしていたが、その後の調査でキャビンの詳しい状況が分かった。中に人がいる可能性があることも分かったが、運転手の安否は確認できていない状態が続いている。
【これまでの時系列まとめ】捜索は難航 埼玉・八潮市の道路陥没■流れ込む水 水位下がらず…捜索の壁に
現場では救助に向けて、がれきの撤去などの作業が進められている。
捜索の壁の一つが穴の中にたまった大量の水だ。雨水や下水とみられる水が穴の中に流れ込み、作業の妨げとなった。
県は穴の中の水位を下げるため、事故発生から約2週間、上流の12市町村、約120万人に水の使用を控えるよう呼びかけた。また周辺にあるマンホールなどから水のくみ出しを開始。穴に地下水が流れ込まないよう、周辺の地盤改良工事も行われた。穴に向かって流れる水を迂回(うかい)させるバイパスも運用している。
しかし、水の流れは止まらず、斜面が崩れやすくなっていることなどから、消防は9日、穴の中での捜索を断念した。
■バイパスで水を迂回させ救助へ 工事は3カ月ほどの見込み
今後の救助作業はどのように進むのか。
県は、トラックのキャビンが見つかった付近からの救助方法を示している。下水道管に並行するように、バイパスをつくり、水を迂回させる計画だ。バイパス工事とともに、キャビンに向けて穴を掘る方針で、工事には3カ月ほどかかる見込みだという。下水道管の中では有毒な気体・硫化水素も発生していて、難しい救助作業が続くとみられる。