やり投・北口榛花 本場で学んだ“きれいなフォーム” 矯正も…骨盤後傾は不利

報道ステーション

[2023/12/21 14:43]

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 陸上の年間表彰式アスレティックス・アワード。今年最も活躍した選手に贈られる「アスリート・オブ・ザ・イヤー」に輝いたのは、世界選手権金メダルやり投の北口榛花選手(25)。そんな世界女王に、松岡修造さんが迫ります。

■最終6投目に“なんでもいいや榛花”?

 今年の世界選手権、女子やり投で日本人初の金メダルに輝いた北口榛花選手。この大会も、最大の強みが発揮されました。4位で迎えた最終6投目に、その日のベストを出すのが、北口選手の勝ち方です。

松岡さん
「いつも6投目にめちゃくちゃ勝つじゃないですか?」
北口選手
「いつも同じパターンなんですよ。1投目こうだったから2投目こうしよう。2投目こうなっちゃったから3投目こうしようみたいな。だけど6投目は何でもいいやってなるんですよ。はははははっ」
松岡さん
「はー!?ちょっと!6投目ラスト榛花が“なんでもいいや榛花”になった時に、めちゃくちゃ飛ぶわけですか?」
北口選手
「そう(笑)。それに近いような気がします、本当に」
松岡さん
「崖っぷち榛花って呼んでいいですか?」
北口選手
「崖っぷち…。崖っぷちはちょっと」

■強さの秘密はチェコに…「フォームがきれい」

 さらに今シーズンは、世界のトップ選手しか出場できないダイヤモンドリーグファイナルも優勝。男女通じて日本人初の快挙でした。

 一体なぜ、こんなにも勝てるようになったのでしょうか?秘密は2019年から拠点としているチェコにありました。

 1年の大半をチェコで過ごす北口選手。チェコのジュニア代表コーチ、シェケラックさんの指導を受けています。この国を選んだ理由は…?

北口選手
「チェコのやり投が、私の中では一番きれいだと思っていて」
松岡さん
「きれい?」
北口選手
「体の身のこなしとか動かし方とか、無駄がなくてきれいみたいなイメージがあった。きれいに見えるように遠くに投げたいっていうのがあった」

■骨盤を矯正 取材時もオーダーメイド椅子を持参

 男女ともに世界記録保持者を輩出しているチェコ。選手たちに共通するのが、フォームのきれいさだといいます。北口選手は、それをどう身に着けていったのでしょうか?

北口選手
「今、私は解剖学的立位肢位(りついしい)っていうのを」
松岡さん
「そんなんやってるんですか!?」
北口選手
「はい。基準にケアとかトレーニングを足していく形でやっていて。この椅子もそうなんですけど」

 実はこの日、北口選手はオーダーメイドの椅子を持参していました。腰の位置がやけに高くて、なんか変ですよね。

 椅子を横から見ると、座る面が傾いています。実は体のある部分を矯正するためのものなんです。

北口選手
「床に座ると猫背になると思うんですよね。骨盤が後傾して」
松岡さん
「確かにこの椅子だったら違いますね」
北口選手
「低い椅子も背もたれになると結構(後傾に)なって…」

 「骨盤が後傾する」つまり、骨盤が背中側に傾くと、人間は猫背になることでバランスを取ります。

 特に日本人は生活スタイルなどの影響で、骨盤が後傾したままになりがち。しかし、これがロスなくきれいに投げるには不利だというのです。

 こんな場面にも、工夫が見られます。投擲と投擲の合間、ただ寝っ転がっているだけに見えますが、これも骨盤を後傾させないためのルーティンなのです。

北口選手
「ヨーロッパの人の方が記録が上なので、そういうふうに投げるテクニックだったり、トレーニングだったり。その人たちに近い体じゃないとできないと思うんですよ。日本人の体では、さっきも言いましたけど骨盤が後傾していたり肩が前にあったりとか、そういう条件が少し変わるだけで、同じニュアンスで言われたことをやっても、違うものが生まれると思うんですよ。だからそういうのを勉強して、海外の動きとか海外の人の体に近づけるように」

■パリ五輪へ…北口「本当の世界一になりたい」

 こうして、北口選手はチェコで競技に適した体の使い方を追求してきました。

 やりを投げるのは週に1回ほど。学んだ知識をひたすら動きに落とし込み、自分にとって最適なフォームに近づけていったのです。

北口選手
「本当の情報をちゃんと収集するのもやっぱり大事ですよね。今はSNSとかですぐ見れちゃうじゃないですか、何でも。自分がその練習をやったとして、その人とは違う問題点が出るはずなんですよ。違う人じゃないですか。だから自分がやるためには違う方法を通らなきゃいけない可能性だってあるのに、全部トップ選手がやっているから真似するのは違うなって感じてる。そこに達していない人は、もっと前にたくさんやることがあるはずなんですよ」

 自分にとっての正解を見つけて正しくトレーニングをする。これこそ世界一にたどり着いた理由だったのです。来年は世界女王としてパリオリンピックに臨みます。

北口選手
「本当の世界一になりたいって思いました」
松岡さん
「本当の世界一?」
北口選手
「今回、世界選手権で金メダルとりましたけど、オリンピックの金メダルはまだ持っていない。記録的に世界記録(72.28メートル)(自己ベスト67.38メートル)もいつか狙える位置にまだちょっと遠いので、ちゃんと狙える位置に自分がいきたいなと思いました」
松岡さん
「パリオリンピックで榛花ゴールデンスマイル見たいですね〜」
北口選手
「はははは…」
松岡さん
「プレッシャー全然かけてない!これは全然かけてない!」

(「報道ステーション」2023年12月20日放送分より)

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