フクヒロペアの葛藤 選手生命左右する決断…大怪我と戦いながら再びコートにー
報道ステーション
[2024/03/06 17:09]
パリオリンピック代表争いが佳境を迎えているバドミントン。
女子ダブルスは大混戦、代表2枠をかけて志田千陽選手・松山奈未選手のシダマツペア、永原和可那選手・松本麻佑選手のナガマツペアと三つ巴の争いになっています。今回、僅差で3番手につける“フクヒロペア”こと福島由紀選手(30)と廣田彩花選手(29)の思いを、内田篤人さんが聞きました。
■パリ五輪で金メダル目指す2人…大きな試練に直面
内田さんがやって来たのは、“フクヒロペア”が拠点とする岐阜県の練習場です。
「どうですか、今の調子は?」
「東京五輪の時よりは、気持ち廣田が動いてるなって」
「しっかりトレーニングも積んで、筋力をカバーしながら動く範囲は徐々に広げている」
パリオリンピックで金メダルを目指す二人ですが、大きな試練に直面していました。
始まりは、東京オリンピック。廣田選手の右足には、大きなプロテクター。開幕直前に、右膝前十字靭帯を断裂し、万全の状態でプレーすることは叶いませんでした。
それでも、この悔しさがパリへの原動力になったといいます。
「東京五輪の時とは違った、新しい自分たちを見てもらいたいなという気持ちです」
再び歩み始めた二人は、熾烈な代表争いを繰り広げる女子ダブルスで2番手(※去年11月時点)につけると、去年11月に行われた中国マスターズでは、世界ランク1位の中国ペアに激闘の末、勝利。パリへの道のりは、順調に進んでいました。
「あの時、勝てたので“まだやれる”という自信になった大会」
「そのあとですよね」
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■「手術」か「保存療法」か…選手生命左右する決断迫られる■「手術」か「保存療法」か…選手生命左右する決断迫られる
去年12月に行われた、シドモディ・インドインターナショナル。その試合途中でした。
「『ブチッ』という音がしました。前回と一緒だというのは、瞬時に分かりました」
診断結果は、左膝前十字靭帯断裂。
「またこのタイミングでかぁ…と思いましたし、オリンピック無理かなと。いろんな思いが、その一瞬で」
二人の選択肢は「手術」か、「保存療法」か。
手術となれば、競技復帰にはおよそ8カ月。つまり、オリンピックはあきらめるということ。保存療法であれば、選考レースは続けられるものの、さらなる怪我のリスクと隣り合わせでもあります。
選手生命を左右する決断を迫られるなか、二人が選んだのは手術でした。
しかし、そこには多くの葛藤がありました。
「手術をすると決めた時も、ずっと揺らいでいて。『今の状態でやるのは無理かな』『でも、やりたいな』という気持ち」
「オリンピック自体も無理というのが揺らぐ部分。仕方ないと…(涙)すみません。どこかで諦めきれない自分もいましたし、そこの切り替えが苦しかったなって」
「じゃあ、『またやろう』という感じではなかったってことですか?」
「一度、熊本の実家に帰って、そこで考えるうちに、やっぱり諦めたくないというか。パリ五輪に出たいという気持ちは大きかったですし、(年末に監督から)『やれるか?』って言われて、『やりたいです』と言いました」
手術から一転、保存療法でパリを目指すことを決断。早速、廣田選手は年明けからリハビリを開始。細かい動きからできることを増やしていくと、先月末にはようやく二人での実戦練習も積めるようになりました。
「膝は、全然大丈夫そうに見えます」
3カ月ぶりとなる復帰戦の舞台は、パリオリンピックと同じ会場で行われるフランスオープン。試練に立ち向かう二人が、再びコートに戻ってきます。
「最後まで諦めずに粘って粘って、1点につなげたい」
「当たって砕けろじゃないですけど、やることやって挑戦したい」
(「報道ステーション」2024年3月5日放送分より)