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2025年4月1日 13:52

石田ひかり 2年連続で「NHK紅白歌合戦」の紅組司会に「特等席で楽しませていただきました」

2025年4月1日 13:52

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映画デビュー作「ふたり」(大林宣彦監督)で主演に抜擢され、第15回日本アカデミー賞新人俳優賞、第34回ブルーリボン賞新人賞など多くの映画賞を受賞して話題を集めた石田ひかりさん。1992年、連続テレビ小説「ひらり」(NHK)に主演し全国から注目される存在に。1992年と93年、2年連続で「NHK紅白歌合戦」の紅組司会をつとめ、映画「はるか、ノスタルジィ」(大林宣彦監督)に主演。そして伝説のドラマ「あすなろ白書」(フジテレビ系)に筒井道隆さんとW主演するなど映画、ドラマに引っ張りだこの状態に。(※この記事は全3回の中編。前編は記事下のリンクからご覧いただけます)

■朝ドラ、主演ドラマ…話題作に次々と…

石田さんは、「ひらり」が放送されていた1992年と93年、2年連続で「NHK紅白歌合戦」の紅組司会を担当。白組司会は堺正章さんだった。

――2年続けてされていましたね

「そうでしたね。私は、(舞台)袖の特等席でずっと見させていただいていたのですが、こんなにすばらしい年越しはあるだろうかと思って堪能していました」

――緊張されませんでした?

「緊張はほとんどしませんでした。私は本当にチョコチョコ出ていくみたいな感じだったので。ただ、お名前と曲名だけは、絶対に間違えてはいけないと思っていました。でも、堺正章さんと(総合司会の)森田(美由紀)アナウンサーがいらっしゃいましたから安心でした」

――2年連続で紅組司会と聞いたときはいかがでした?

「『私でいいのかな?』と思いましたけど、2年目もあまり緊張せずに楽しませていただきました。本当に贅沢な年越しを2年間させていただきました」

1993年、大林宣彦監督の映画「はるか、ノスタルジイ」に主演。この作品は、人気作家・綾瀬慎介(勝野洋)がコンビを組んでいた友人の挿絵画家(ベンガル)の死をきっかけに青春時代を過ごした小樽を訪れ、痛ましい青春の記憶を再生させていく様を描いたもの。

石田さんは、綾瀬の小説のファンで、彼に小樽の街を案内する少女・はるか役と、綾瀬が高校時代に好きだった三好遥子役の二役を演じ、第3回日本映画プロフェッショナル大賞主演女優賞を受賞した。

「『ふたり』に続き、大林監督の作品に出られてとてもうれしかったです」

――この作品の撮影のときもセリフ変更の差し込みはホテルのドア下から入れられていたのですか

「はい。それは毎朝ありました。『ふたり』のときと同じように台本がどんどん分厚くなっていきました。二役だったので難しかったですけど、目の前のことをがむしゃらに一生懸命やるだけという感じでしたね」

1993年、「あすなろ白書」(フジテレビ系)に筒井道隆さんとW主演。木村拓哉さん、西島秀俊さん、鈴木杏樹さんという豪華なキャストが話題を集めた。

このドラマは、大学で出会い「あすなろ会」を結成した5人の男女が、初めて本当に人を好きになり、苦い経験もしながら成長していく様を描いたもの。複雑に絡み合う恋愛模様、友情と恋の狭間で揺れる思い…トレンディドラマならではの展開で高視聴率を記録した。

――「あすなろ白書」は本当にすごい顔触れでしたね

「そうですね。あのときは、家には着替えに帰るだけという感じでした。26時にまだ(スタジオに)入って来る人がいたりしていましたし、30時終わりという日もありました。そういう時代でしたね」

――体力的には大丈夫だったのですか

「いいえ、大体一作品で一回はみんな体調を崩していました。でも、具合が悪くても休めない時代でしたから…。今では考えられないですよね(笑)」

――多くの人の記憶に残って語り継がれるドラマに出演されていますね

「ありがたいです。いまだに『あすなろ白書』や『ひらり』とか、いろんな作品のことを皆さんが思い出してくださるから、本当に幸せだなって思います」

■結婚、出産…お母さん役が似合う俳優に

私生活では2001年に結婚。2人の娘を持つ母親でもある。30代から40代は子育て中心の生活だったという。

――あまり(仕事を)セーブされていたというイメージがないですね

「そうですね。全くしてなかったわけではないので。ただ、自分の中では7対3で、家のことを大事にしたかったのでNGをお願いすることも多く、非常に中途半端な状態でした」

――お嬢さんたちに16年間お弁当を作り続けていたことも話題になりましたね

「それだけはやりたかったのでやりました。俳優という仕事柄、どうしても時間が不規則になってしまうこともありましたが、お弁当だけは毎日作り続けようと決めていたので頑張りました。子どもたちが大きくなってきた40代になってようやく仕事を再開できたという感じです」

近年はお母さん役も多くなり、2019年には「監察医・朝顔」(フジテレビ系)で主人公・朝顔の母親役を演じて話題に。このドラマは、法医学者の娘・朝顔(上野樹里)とベテラン刑事の父・平(時任三郎)という異色の父娘が遺体の謎を解明していく様を描いたもの。2020年〜2021年に第2シリーズ、2025年に新春スペシャルドラマとして放送された。

石田さんは、2011年3月11日に発生した東日本大震災で行方不明になっている朝顔の母・里子役。平はあの日からずっと、時間があれば東北へ向かい、手がかりもないまま、まるで“捜査”と同じように妻の遺体を探し続けている…。

――「観察医 朝顔」のお母さん役も印象的でしたが悲しい役でしたね。切なくなりました

「そうですね。娘もいたたまれないですよね。自分が『あのおばあちゃんどうしたかな?』と言ったことによってお母さんが助けに行って津波に…ということなので、やっぱりずっと引きずりますよね。

だから、最後にほんの一部でしたけど、(遺骨が)見つかって本当に良かったなと思いました。

私は、本当にほぼあそこしか出てないんですけど、皆さんがずっと(私を)探してくれているから存在していることができて。何か不思議な気持ちでしたけど、自分の一部が見つかったとき、とても感動しました。本当に良かったなあって思いましたね。

あのシーンは実際に東北で撮影したのですが、撮影のときはもうコロナ禍真っ只中だったので、全員フェイスシールドやマスクをしていて…という、大変な中での撮影だったんです。

だから、日々無事に撮影が終わることだけを祈りながらやっていました。とにかく無事に終わるように…と、すごく神経を使った現場でした」

――2019年、2020年はコロナがどういう風になっていくのかわからない状態でしたね

「そうですね。子育てが一段落して仕事もまた本格的に…というときだったので不安もありました」

2021年には、映画「かそけきサンカヨウ」(今泉力哉監督)に出演。この作品は、幼い頃に母親が家を出て以来、二人暮らしをしていた父親が再婚することになった女子高生の揺れる心情を描いたもの。

高校生の陽(志田彩良)は、幼い頃、母の佐千代(石田ひかり)が1日中絵を描いていたいと家を出て行って以来、父の直(井浦新)とふたり暮らしをしていたが、父が再婚することに。義母の美子(菊池亜希子)と4歳の連れ子・ひなたとの4人暮らしが始まる。新しい暮らしに戸惑う陽は、実の母・佐千代への思いを募らせ彼女の個展に行くことに…。

――実生活とは正反対で仕事が最優先のお母さんでしたね

「そうでした。子どものことももちろん愛しているけれど、一日中絵を描いていたい。あの作品では、朝早く陽ちゃんをおんぶしてサンカヨウを探しに行くシーンが大好きです。幸せなときの記憶ですよね。そこからどんどん旦那さんと仲が悪くなっちゃって…。結局夫と子どもと別れて生きていくことになるんですけど。

あとは、画廊での再会シーンもすごく好きなシーンです。個展を見に来た陽ちゃんに母親だとは言わないけど、すぐに娘だとわかっただろうなというシーンで」

――陽ちゃんは「娘だと気づいてもらえなかった」と嘆きますが、その前にすぐに娘だとわかったというメールお父さんに届いていて。絵を描く才能もお母さんから受け継がれていますね

「そうですね。母子なんだなあって思ますよね。多分この先、陽ちゃんが仕事をしたりする上で、相談に乗ったり…二人はきっといい関係になっていくだろうなという予感で終わりましたよね。だからそれはすごくいい感じだったと思います」

トレンディドラマの主人公から、今やお母さん役が最も似合う俳優の一人と言われるほど定評がある。次回は、バラバラだった家族が「旅」を通して再び家族としてやり直していく様を描く「週末旅の極意2〜家族って近くにいて遠いもの〜」(テレビ東京系)の撮影エピソード、4月4日(金)に公開される映画「アンジーのBARで逢いましょう」(松本動監督)の撮影裏話もなども紹介。(津島令子)

ヘアメイク:神戸春美

スタイリスト:藤井享子(banana)