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2025年5月13日 13:00

中原丈雄 現代劇、時代劇を問わず幅広く活動し、62歳のときに映画初主演!

2025年5月13日 13:00

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1992年に公開された映画「おこげ」(中島丈博監督)で、妻がいながら男性と愛し合う中年サラリーマンをダンディーに演じて絶賛された中原丈雄さん。大河ドラマ「炎立つ」(NHK)、「絶対零度〜特殊犯罪潜入捜査〜」(フジテレビ系)、「ドラマ10 美女と男子」(NHK)など多くの作品に出演。2013年に「ばななとグローブとジンベエザメ」(矢城潤一監督)で映画初主演を果たし、2024年には映画「おしゃべりな写真館」(藤嘉行監督)に主演。7月11日(金)に主演映画「囁きの河」(大木一史監督)の公開が控えている。(この記事は全3回の中編。前編は記事下のリンクからご覧になれます)

■大河ドラマ「炎立つ」の撮影中に父親が他界

1993年、大河ドラマ「炎立つ」に出演。藤原泰衡(渡辺謙)の叔父・藤原基顕役を演じた。

「『おこげ』の撮影が終わったとき、『今度大河ドラマの脚本を書くので、また一緒に』と中島さんが声をかけてくださって、『炎立つ』に藤原泰衡の叔父・藤原基顕役で出させていただきました。

のちに出家して、泰衡に戦の愚かさを説くんですけど、泰衡の目の前で“もとどり”(髪を頭の上に集めて束ねた部分)を切り落とすところは印象的なシーンでした。あのロケ中におやじが亡くなったんです。

おやじは、僕に熊本の大学を出て地元で何か仕事をしてほしいと思っていたので、役者になることに反対していた時期もあったんですけど、大河ドラマに出るということは喜んでくれましたね。

亡くなる直前まで喜んで見てくれていたみたいです。大河ドラマに出ている僕を見て安心して亡くなったのかなって思いました。

大河ドラマはそのあと、『徳川慶喜』もやったんですけど、このままだと多分僕は、上には行けないだろうなと思っていて。とにかく誰か二人三脚で自分のマネジメントをやってくれる人を探さなきゃいけないということで、仲の良かったプロデューサーに頼んで紹介してもらったのが、今のマネジャーだったんです。

『中原さん、やろうか?』と言ってくれる人もいないわけじゃなかったんだけど、やっぱり会って話してみると、『この人じゃダメだな』というのはわかるんですよね。

それで、今のマネジャーと会ったときに、うちの母親の顔にそっくりに見えたんですよ(笑)。

そういうこともあって『この人なら間違いない』という気がしてお願いすることにしました。

映像の仕事を始めたのが遅かったので、皆さんがもういい位置にいるときに、僕はデビューしたようなものですよ。『おこげ』で映画デビューしたのが41歳のときでしたからね。ものすごく遅いんです。

だから、遅い分だけやっぱり取り戻さなきゃいけないと思って、よくマネジャーと話すんですよ。『最後に“プラスマイナスゼロ”で終わればいいけれども、マイナスがあまりにも多かったから』って。まだまだ…という思いでずっとやっています」

■初主演映画は俳優仲間に声をかけられて

信頼できるマネジャーさんと出会った中原さんは、テレビ、映画、CMに次々に出演することに。2010年には「絶対零度〜未解決事件特命捜査〜」(フジテレビ系)にレギュラー出演。

このドラマは、警視庁刑事部捜査一課内に新設された「コールドケース」と呼ばれる時効直前の未解決事件を検証し直す専従捜査部署特命捜査対策室の刑事たちが未解決を紐解いていく姿を描いたもの。中原さんは、最年長の叩き上げの刑事・白石晋太郎役を演じた。

「白石は、叩き上げの刑事としての厳しさはありつつも根本にある優しさや温かさは出していきたいと思ってやっていました」

――過去50年分の未解決事件をすべて記憶している記憶力の持ち主で、パソコンなどの取り扱いにも長けているベテラン刑事役でしたね

「そうです。刑事として長い経歴や実績があるんだけど、自らの勘や経験には頼りすぎない刑事ということでした」

2011年には続編となる「絶対零度〜特殊犯罪潜入捜査〜」も放送された。2013年には、「ばななとグローブとジンベエザメ」で映画初主演を果たす。

この作品は、15年前に家族を捨てた自由奔放な父(中原丈雄)と、そんな父を反面教師にしながら弁護士を目指す息子(塩谷瞬)が次第に親子の絆を取り戻していく姿を描いたもの。

「あの映画は、同じ俳優仲間の大城(英司)くんの企画で、彼が脚本を書いてプロデュ―サーもやっていて、『中原さん、やりませんか』って言われたんです。いろんな人が出演するとのことで、『これ、お金はあるの?』って聞いたら『何とかします!』って言って、いろんなところにタイアップしてもらって何とかできたようです。

今はもうなくなってしまった『銀座シネパトス』という劇場で最後に上映された作品です。本当に食うや食わずで、何とかみんなの力で育て上げた作品という感じでした」

2015年に放送された「ドラマ10 美女と男子」(NHK)では、仕事はできるが、自己主張が強すぎて人望がない主人公・沢渡一子(仲間由紀恵)の父・篤史役で出演。一子は、ある日突然、小さな芸能プロダクションに出向を命じられ、全く知らない世界で奮闘することになる。そんな一子と家族を父・篤史は、新聞社を退職後、認知症が進み、悩ませることに。

「突然、突拍子もないことを言い出したりするものですから、セリフが面白くて自分で吹いてしまいそうになったこともありました」

――結構あっけなく亡くなってしまって驚きました

「そうなんです。熱中症で倒れて救急車で病院に運ばれてそのまま死んでしまったんですよね。あっけないものだなって思いました」

――2016年には山崎製パンの「ゴールドシリーズ」のCMも始まり、特技のウクレレも披露されていましたね

「そうですね。まだ続いているんですけど、パンは普通、売れた年の翌年になると必ず売れ行きが落ちるものなんですって。それが最初の年以上に売れて、3年目もそれ以上に売れて…みたいなことがあったものですから、ずっとやらせていただいています」

――2016年は大河ドラマ「真田丸」もありましたね

「あれは三谷(幸喜)さんが選んでくれたんだけど、ようやくですよ。ものすごく時間がかかりました。僕は、前半はかつらだったんですけど、何とか地毛でやれないかと思って。自分が丸坊主になってしまえば、かつらは被らなくていいと思ったんです。

それで、プロデューサーと演出家に、『坊主頭になりたいので三谷幸喜さんに聞いてもらえませんか』と相談して、大殿(真田昌幸=草刈正雄)が亡くなって、泣くシーンを撮った後、すぐに頭を丸めました」

2017年、「プレミアムドラマ PTAグランパ!」(NHK)に出演。このドラマは、大手電機メーカーで定年を迎えた武會勤(松平健)が娘(真飛聖)の代わりに孫の小学校のPTA副会長になり、さまざまな騒動を巻き起こしながら奮闘する姿を描いたもの。中原さんは、武會勤のかつての同僚で認知症の妻を介護している秋山寛治役を演じた。

「秋山というのは、認知症の奥さんを介護するために会社を辞めた真面目でもの静かな男。黙々と笑顔でしっかり奥さんを介護する。それまで僕は特殊な役を演じることが多かったので、この役は結構難しかったですね」

2018年に続編となる「プレミアムドラマ PTAグランパ2!」が放送され、同役で出演。2019年には、連続テレビ小説「なつぞら」に出演。東京大空襲で妻を亡くして一人娘の砂良(北乃きい)を連れて十勝に移住し、森の奥で木彫りの工芸品を作ってひっそりと暮らす阿川弥一郎役を演じた。

雪の中で遭難しかけた主人公・なつ(広瀬すず)を救った弥一郎が、なつに「怒りや悲しみはどうしたら消えるんですか?」と問われ、「自分の魂と向き合うしかないべな。消さずにそれを込めるんだ」と助言するシーンが印象的だった。

大河ドラマ「真田丸」で天才武将・真田昌幸を演じた草刈正雄さんと、昌幸の側近・高梨内記を演じた中原さんの再共演も「大殿と内記が時代を超えて再会した!」と話題に。

「『真田丸』で草刈正雄さんと僕は殿と家臣の主従関係でした。そんな二人が対等の立場で物を贈り合っているんだから、俳優というのは面白いものだなと思いましたね(笑)」

特技の絵画でART BOX大賞展ギャラリー賞を受賞、プライベートバンド「TAKEO.UT☆MEN」でライブも行うなど幅広いジャンルで活躍中。2024年に主演映画「おしゃべりな写真館」が公開され、7月11日(金)には主演映画「囁きの河」が公開される。次回はその撮影エピソードなども紹介。(津島令子)