
17歳のときに雑誌「mc Sister(エムシーシスター)」(婦人画報社)の専属モデルとしてファッション誌やCMに出演して注目を集めた黒谷友香さん。映画デビュー作「BOXER JOE」(阪本順治監督)を機に、本格的に俳優業をはじめ、連続テレビ小説「カーネーション」(NHK)、映画「極道の妻たち Neo」(香月秀之監督)、映画「イン・ザ・ヒーロー」(武正晴監督)などに出演。「噂の!東京マガジン」(TBS系)、「極める!黒谷友香の庭園学」(NHKBSプレミアム)など幅広いジャンルで活躍。世界的なデザイナー・コシノヒロコさん役を演じた映画「ゴッドマザー〜コシノアヤコの生涯〜」(曽根剛監督)が公開中。(この記事は全3回の中編。前編は記事下のリンクからご覧になれます)
■初めての朝ドラ作品が現在公開中の映画に繋がる題材で…

2006年、「TANNKA 短歌」(阿木燿子監督)で映画初主演を果たした黒谷さんは、映画「ホームレス中学生」(古厩智之監督)、「ハンチョウ〜神南署安積班〜」シリーズ(TBS系)など多くの映画、ドラマに出演。
2011年には連続テレビ小説「カーネーション」(NHK)に出演。このドラマは、世界的なファッションデザイナーとして活躍するコシノヒロコさん、ジュンコさん、ミチコさんの「コシノ三姉妹」を育て上げ、自らもデザイナーとして活躍した小篠綾子さんの半生を描いたもの。
黒谷さんは、最初に主人公・糸子(尾野真千子)にイブニングドレスの作製を発注する人気踊り子・サエ役を演じた。
「公開中の映画『ゴッドマザー〜コシノアヤコの生涯〜』もそうですけど、ご縁があるんだなと思いますね。上京するときに贈られたキッチンセットも(コシノ)ヒロコ先生がデザインされたものだったんです。
でも、まさかご本人を演じることになるなんて思ってなかったのでビックリしました。本当に光栄です。何か繋がっていたみたいな感じがあったかもしれないって今は思います。当時は、何十年後かにご本人を演じるなんて思ってもいなくて、ただ上京して頑張らなきゃいけないという思いだけだったんですけど。
『カーネーション』では、アヤコさんがモデルの糸子に最初にドレスを発注する踊り子のサエ役だったのでご縁を感じます」
――朝ドラは初めてでした?
「はい。初めての朝ドラでしたけど、すごく楽しかったです。あのドラマも年代があって、出会いのところから主人公の糸子ちゃんとずっと交流があって、ある程度の年齢のところまで出演させていただいたのでうれしかったです。
代表的な大阪の有名な方のことを描いたドラマで、全国にそのドラマが流れて。私も大阪出身ですし、本当に良かったなあって思いました。私は堺市出身で、舞台が岸和田なのですごく近いし、とてもいい体験でした」
――朝ドラの撮影は独特の雰囲気だとよく聞きますが、いかがでした?
「スタッフさんも大阪の方が多かったですし、そういう意味では京都の撮影所とか、大阪は
関西圏なので、新幹線に乗って着くと『帰ってきた!』みたいな感覚があって楽しいです。『カーネーション』は、スタッフ・キャスト、みんなファミリーみたいな感じでしたね」
――「カーネーション」のときに苦労されたことは?
「ダンスのシーンもちょこっとありましたけど、苦労したことはそんなにはなかったです。
『カーネーション』でサエさんが憧れる男性の役が小泉孝太郎さんで、ヒロコ先生のご一家を追ったバラエティーの番組のMCも小泉さんだったんです。
ご一家を追いかけている番組のMCが小泉さんで、私がその番組の中でヒロコ先生の『米寿の会』の司会をさせていただいたので、それが流れたときに違うところでまた出会ったという感じでした。
あれから結構経ちますし、それまでもちょこちょこお会いはしていましたけど、何か長くお仕事をさせていただけていて良かったなあって思うヒトコマでした」
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■“極妻”映画に主演!びしょ濡れで戦うシーンも…■“極妻”映画に主演!びしょ濡れで戦うシーンも…

2013年、映画「極道の妻たち Neo」(香月秀之監督)に主演。黒谷さんが演じた主人公・鬼場琴音は、西京連合鬼場組組長・鬼場満(長嶋一茂)の妻。亡くなった父親の借金返済のために売り飛ばされそうになっていた女子高生を助けたことがきっかけで、かつて鬼場に愛する男を殺された過去を持つ加藤組組長の妻・アザミ(原田夏希)と出会い、大きな
陰謀に巻き込まれることに…という展開。
――組長役が長嶋一茂さんでしたね
「そうです。長嶋さんがすごくお気遣いしてくださって。絡みのシーンのときも、重くないように(体重がかからないように腕でからだを支えて)耐えてくださっていて。本当にお優しい方だなって思いました」
――お二人とも背中には入れ墨もあって
「はい。入れ墨の絵を描くのに4時間ぐらいかかったんです。長嶋さんも一緒でしたけど、朝描いてもらっていました。ああいうことは、なかなかない体験なので面白かったです」
――入れ墨を描いてもらった背中をご覧になったときはどうでした?
「きれいだなって思いました。あの後も裏社会の女の人を演じる機会がありましたけど、そんなに何回も演じる機会がない世界でもあるので、やらせていただけたことは感謝していますし、財産の1個になっていると思います」
――“極妻”シリーズは、最初が岩下志麻さんで5代目になったわけですが、プレッシャーみたいなものはなかったですか
「子どもの頃から知っているタイトルと映画なので、プレッシャーというよりかは、どういうふうに演じるかを考えることに必死でした。以前から何度もお世話になっている京都のスタッフの皆さんだったので、すごくよくしていただきました。
『この着物は、この作品のために作ってもらったんやで』とか『岩下(志麻)さんが映画の中で着られていた喪服を出してきたで』って、いろいろやって下さって、スタッフの方々の支えのおかげですごく楽しく演じることができました」
――最初は普通のブティックのオーナーさんだと思ったら、組長の妻で夫が殺されて変わっていきます
「そうです。最初は組長の妻だということをあまり表に出さないような感じでしたけど、最後は着物でドロドロになって戦っていますからね(笑)。本当にドロドロのビショビショだったので、『寒ないか?』ってケアしてくださって。そういうのがあったから、何とかあの立ち回りのシーンも撮り終えることができました」
――完成した作品をご覧になっていかがでした?
「どういう作品でもそうなんですけど、準備していたときのこととか、共演者の方々とのやり取りを思い出したりしますね。出来上がった作品というのは、もちろんその世界がどうなっているかを知りたいんですけど、それも見つつ、懐かしいなとかいろいろ思いが蘇りますね、毎回」
――カッコ良かったですね
「ありがとうございます。映画の中でしかできないことなので、気持ち良かったです(笑)」
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■ヒーローを演じるスーツアクトレス役に挑戦!■ヒーローを演じるスーツアクトレス役に挑戦!

2014年には、「トカゲの女 警視庁特殊犯罪バイク班」(テレビ東京系)に主演。このドラマは、警視庁捜査一課特殊犯捜査係 (SIT) の下部組織バイク班、通称“警視庁トカゲ班”の活躍を描いたもの。トカゲの任務は隠密のため、平時は各々の所属する課で通常業務に就いているが、事件発生時に招集され任務にあたる。
「極道のあとで刑事になってということになるので、この仕事は面白いですよね(笑)」
同年、映画「イン・ザ・ヒーロー」に出演。この作品は、日本のアクション界を支えるスーツアクターたちの夢と葛藤を描いたもの。
主人公は、いつかはアクション俳優として主役を演じることを夢見ているが、顔出しでの映画出演は叶わず、25年間スーツアクターとしてキャリアを重ねてきた本城渉(唐沢寿明)。妻子にも逃げられ、さらに生意気な新人スター候補(福士蒼汰)の登場で追い詰められた彼に、命を落としかねない危険なスタントの話が…という展開。黒谷さんは、女性ながらヒーローを演じるスーツアクトレス・大芝美咲役を演じた。
「あの作品は、それこそJAC(ジャパン・アクション・チーム)にみんなで稽古に行って、トランポリンとかいろいろ教えていただきました」
――女性がヒーロー役を演じるスーツアクトレスに…というのは、特撮史上初めてだったと聞きました
「そうみたいですね。それで寺島(進)さんが女性戦士のピンク役をやってらして。みんなで並んで撮っていました」
――主演の唐沢寿明さんが下積み時代に「仮面ライダー」シリーズなどで、スーツアクターを務めた経験があるということも話題になりました。何かアドバイスされたことなどはありました?
「はい。私はあまりわかってなかったから、普通のスニーカーを履いていたと思うんですけど、それを見て『もっと足首を守るような、ちゃんとしたものを履いた方がいいよ』ということを最初にアドバイしてスいただきました。やっぱりいろいろ経験されているので、経験者ならではのアドバイスですよね。とてもありがたかったです」
歯切れのいい関西弁のセリフとヒーロー役の衣装が映えて印象的だった。2016年には映画「夢二〜愛のとばしり」(宮野ケイジ監督)に出演。大正ロマンを代表する画家として知られる竹久夢二の美人画のモデルとなった妻・たまき役を演じた。次回はその撮影エピソード、公開中の映画「ゴッドマザー〜コシノアヤコの生涯〜」の撮影裏話なども紹介。(津島令子)
ヘアメイク:藤原リカ(Three PEACE)