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2025年5月30日 13:59

清水美砂 17歳のときに初めて受けた映画のオーディションのヒロイン役で芸能界デビュー!

2025年5月30日 13:59

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1987年、映画「湘南爆走族」(山田大樹監督)で芸能界デビューし、1989年に連続テレビ小説「青春家族」(NHK)で、いしだあゆみさんとW主演をつとめて注目を集めた清水美砂さん。映画「シコふんじゃった。」(周防正行監督)、映画「Shall we ダンス?」(周防正行監督)などに出演。カンヌ国際映画祭の最高賞・パルム・ドール賞を受賞した映画「うなぎ」(今村昌平監督)で日本アカデミー賞優秀主演女優賞をはじめ、多くの賞を受賞。2024年、映画「海の沈黙」(若松節朗監督)で演じた美しい全身入れ墨姿が話題に。7月11日(金)に映画「囁きの河」(大木一史監督)の公開が控えている清水美砂さんにインタビュー。(この記事は全3回の前編)

■芸能プロのスカウトマンの名刺は引き出しの中へ

東京で生まれ育った清水さんは、小さい頃は人見知りでひとり遊びをしているような女の子だったという。

「鍵っ子だったので、家に誰もいないし、ブツブツ言いながらひとりで遊んでいました。そうこうしているうちにひとりお友だちができたんですけど、その子がいなくなった途端にまた元のようになってしまって。ひとりで何かしている感じでした」

――テレビや映画はよく見ていたのですか

「時間が決められていて、5時から7時までしかテレビを見ちゃいけなかったんです。そのとき最初に見たのが『宇宙戦艦ヤマト』(日本テレビ系)で、それにハマりました。宇宙を眺めながら、ずっとひとりの空間を楽しんでいる…そんな感じの子どもでしたね」

――俳優になろうと思うきっかけは何かあったのですか

「特に自分で何か…というのはなかったんですけど、若いときにスカウトされてよくお名刺をいただいていたんです。あの当時は、道の角々にスカウトマンがいましたからね。私は渋谷育ちだったので、原宿とか渋谷、新宿などを普通にひとりで歩いたりしていたら、そういうお名刺をいただいて、机の中に全部閉まっていたんです。

そうしたら母がそれを見て、私が変なところに入っちゃうんじゃないかと心配して知り合いのサンミュージックさんの専務さんにお話をしたら、(専務さんが)一度お会いしたいとおっしゃってくださって。お会いしたときに『うちに入らないか』とおっしゃってくださったんですね。

でも、当時サンミュージックさんはいわゆるオーディション形式で皆さんお入りになっていたので、私もオーディションに参加させていただいて、そこからレッスン生としてお世話になることになったんです。

それで、『湘南爆走族』という映画のオーディションを受けることになって、たまたま受かっちゃって。それが始まりでしたね。

でも、私ひとりだけ芝居ができないわけですよ。江口洋介さん、織田裕二さん、竹内力さん、杉浦幸さん、皆さんお芝居はもう最初からやられていて。私は、レッスンはしていましたけど、全く芝居をしたことがなかったからカメラの前で芝居なんてできなかったんですよね。

その悔しさが掻き立てられて、『役者になりたい』というか、『芝居をもっと知りたい』と思ったのが、役者を続けるきっかけになりました」

■朝ドラヒロインから桑田佳祐監督映画のヒロインに

1989年、連続テレビ小説「青春家族」(NHK)にいしだあゆみさんとW主演。このドラマはデパートで20年働き続けた団塊世代の母(いしだあゆみ)と、漫画家志望の娘(清水美砂)がお互いを理解し成長していく様を描いたもの。

1990年には、映画「稲村ジェーン」に出演。この作品は、1965年の稲村ケ崎を舞台に、若いサーファーらのひと夏の青春を描いたもの。「サザンオールスターズ」の桑田佳祐さんが監督・音楽を担当して話題に。清水さんはこの作品など3本の出演で、この年の日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞した。

「『稲村ジェーン』もオーディションだったんですけど、私は朝ドラ『青春家族』の撮影をしていたんです。あの当時は、朝ドラを撮影している間はほかのオーディションを受けちゃいけないし、コマーシャルにも出ちゃいけなかった。他局と契約もしちゃいけないという噂は聞いていたんですね。

それで、桑田佳祐さんがオーディションをして、映画のヒロインを決めたいんだという

お話は聞いていたんですけど、参加できなかったんです。

でも、朝ドラの撮影がすべて終わった後で聞いたら、まだヒロインが見つかってなくてオーディションをしていると。それで、私のマネジャーさんがどうしてもオーディションに参加させたいとプロデューサーの方にお話したら参加させていただけることになって。

オーディションはすでに3次までいっていたんですけど、途中でひょっと入って、それが桑田さんには多分新鮮だったんでしょうね。『この子!』っておっしゃって。名前が清水美砂で、清い水に美しい砂じゃないですか。それも多分桑田さんが気に入ってくださったんだと思います。ぴったりじゃないかって」

――でも、最初のオーディションから参加されていた人たちはショックだったでしょうね

「そうだと思います。この中の誰かだろうと思っていたはずなので、のちのち言われました。他の作品でご一緒した方に、『あのとき私はオーディションに入っていたのよ(笑)』って言われたりしたので」

――でも、合っていましたよね。お名前の字面だけじゃなく、雰囲気も

「そうですか。本人はわからないんですよ。あのときは本当に必死でしたから」

――桑田佳祐さんが監督もされたわけですが、撮影はスムーズにいきました?

「はい。撮影に入る前に楽曲が全て決まっていて。そのイメージをそのまま追うという形ではないんですけど、最初に私たちに『ここのシーンではこの曲を使う』と話して下さって。だから、そこからイメージをみんなで膨らませて作っていったんですよね。

あと、1カット1カット、絵コンテを作っていらしたので、相当大変だったと思いますよ。撮影も夜中までかかりますからね。その後にまた次の日の絵コンテを描くわけじゃないですか。寝ずにお作りになっていたから、疲労困憊してらしたと思いますね。でも、とても優しかったです」

■本木雅弘さんとキスするシーンが…

1992年には、映画「シコふんじゃった。」が公開。この作品は、大学の卒業と引き換えに(大学の)相撲部に入ることになった大学4年の秋平(本木雅弘)が奮闘する様を描いた異色相撲コメディ。清水さんは、相撲部のマネジャー・川村夏子役を演じた。

「『シコふんじゃった。』は、本木(雅弘)&竹中(直人)組と柄本(明)組に分かれていたんですね。私は、本木さんと竹中さんがお二人で芝居の話をなさっているのを金魚の糞のようにくっ付いてずっと聞いていたりしていてすごく面白かった。

柄本さんは、役者としてもそうだし、人間としての面白さをボソボソッとおっしゃるんですね。それが本当に面白くてね。すごく勉強になりました」

――本木さんと清水さんがお二人でシコをふむシーンが印象的でした

「本当はあの後に『キスをする』というシーンがあったんです。でも、あの作品はほとんど順撮りで、キスシーンが最後のシーンの予定だったんですけど、みんなで話していたら監督も『そういう設定で僕は書いたけど、ここでは多分もうキスしないよね』ってなって。

でも、ナシにして良かったと思います。あれでキスしていたら、さらにその先が見たいってなってくるじゃないですか。まだそこまでの関係になっていない二人なので」

――結構微妙な関係でしたね。お互いに惹かれ合っているのにはっきりとは描いてないというか

「そうなんですよね。何か作りながらいろいろ変化していったという感じだったので、それもまたすごく勉強になりました。やっぱり台本で読んでいても、作っているとどんどん変わっていく…というのはこういうことなんだって思いました。

必ずしも台本通りきっちりとは収まらない。役者としてぶつかり合って一つのシーンを作っていくわけで、『こういう風になるよね』って。本当に面白かったですね。勉強になりました」

――荒井晴彦さんが昔「ヨコハマ映画祭」の授賞式で、『自分が汗水垂らして書いた脚本を監督が撮影現場で変えてしまう。だから変えられないためには自分が監督をやればいいと思って監督をやってみたら、やっぱり変えざるを得なかった』とおっしゃっていました

「やっぱりそうですよね。映画は一人の人間だけで作っているわけじゃなくて、いろんな方たちと一緒に作っているわけですから」

同年、映画「おこげ」(中島丈博監督)に主演。この作品は、男性恐怖症の女性・小夜子(清水美砂)がゲイのカップル、剛(村田雄浩)&寺崎(中原丈雄)と出会い、彼らの愛すべき姿に惹かれていく様を描いたもの。小夜子は、寺崎の妻にバレた二人が別れた後、剛が惹かれた男性によってひどい目に遭うことに…。

――当時はかなり衝撃的な作品でしたね

「そうですね。あの当時は、いろいろ言われて、『こんな作品に出るな!』と怒られたこともありました。でも、私としては、何で出ちゃいけない作品があるのかがよくわからなかった。この作品は本当に中島丈博監督の思いが詰まっている作品で、『小夜子は清水さんでいきたいな』っておっしゃってくれたのがすごくうれしかった。

ただ、ヌードシーンがあったので、いろいろ葛藤はありましたけれども、やっぱり必要なシーンではありますから、そういう意味でも覚悟が必要な作品でした」

――男性恐怖症だった小夜子は、愛し合う剛と寺崎を見て応援することにします

「はい。二人の絡みがすごく美しく見える。私も母が水商売をしていまして、ゲイの方たちが勤めていらしたので、小さい頃から(ゲイの方たちと)触れ合っていたんですね。だから何の問題もありませんでした。本当に美しいと思ったし、すごく思い出のある作品です」

――村田雄浩さんと中原丈雄さんのカップルがとてもいい感じでしたね

「でも、ご本人たちは、現場では本当に大変だったんですよ。お二人が葛藤している姿を見て、本当に私が替わってあげたいと思うくらいでした。お二人はゲイではないのでどんなに考えても理解しがたいところがあるんですよね。だから、そのたびにお二人が話し合っていて本当に大変そうでした」

――中原さんはずっと舞台でやってらして、初めて本格的な映画でしたしね

「そう。でも、すばらしかったですね。葛藤があったからこそだと思います。あの映画で中原さんは、本当にゲイだと思われたぐらいすばらしかった。やっぱり苦労と戦いというのは大事だなって思いました」

――清水さんが演じた小夜子は、純粋に二人を応援していただけなのにかなりかわいそうな目に遭うことになりますね

「『子どもを抱えて苦労して、こんな目に遭っちゃうの?』って思いますよね。でも、最後の最後にこれからは少し幸せになれるかも…という感じだったので、それは良かったかなって思いました」

清水さんは、「おこげ」で報知映画賞主演女優賞、山路ふみ子映画賞新人女優賞、日刊スポーツ映画大賞新人賞など多くの賞を受賞。若手実力派俳優として広く知られることに。次回は、今村昌平監督の映画「うなぎ」と「赤い橋の下のぬるい水」の撮影エピソードなども紹介。(津島令子)

※清水美砂プロフィル

1970年9月25日生まれ。東京都出身。1987年、映画「湘南暴走族」でデビュー。連続テレビ小説「青春家族」、大河ドラマ「徳川慶喜」(NHK)、「3000万」(NHK)、映画「うなぎ」、映画「カンゾー先生」(今村昌平監督)、映画「カムイのうた」(菅原浩志監督)、映画「BISHU〜世界でいちばん優しい服〜」(西川達郎監督)、映画「海の沈黙」(若松節朗監督)などに出演。映画「囁きの河」が6月27日(金)〜熊本県の熊本ピカデリーにて先行公開、7月11日(金)より池袋シネマ・ロサ、シネスイッチ銀座ほかにて全国順次公開される。

ヘアメイク:佐々木博美

スタイリスト:村上利香

衣装:LEONARD

アクセサリー:UNOAERRE