「ここで渋滞に巻き込まれたくない」古い橋を恐る恐る渡る 米国6600キロ第11回
[2024/01/06 10:00]
「米国で7番目に危険な橋」を渡った後、宿泊先のカジノで15ドル儲ける。テキサス州に入りポークチョップに魅了される。
(テレビ朝日 デジタル解説委員 名村晃一)
開通70年以上 急こう配 照明、路肩なし 「7番目に危険」
予想以上に車の量が多かった。ルイジアナ州ニューオーリンズからインターステート10(I-10)を西に向かって走ってきたが、この道が南部の「大動脈」であることを、交通量が証明していた。
宿泊地である同州レイクチャールズに入ると、町の明かりが瞬いていた。しばらくすると明かりは途切れ、左手にチャールズ湖の暗闇が広がった。
前方に大きな橋が現れた。山のようにそそり立っている。カルカシュー川にかかるカルカシューリバーブリッジだ。
橋に差し掛かると、アクセルを強めに踏み込まないとスピードを保てなかった。鉄骨や柵を見ると、かなり老朽化していることが分かった。崩壊しないだろうかと怖くなった。
カルカシューリバーブリッジは全長約2キロ。1952年に架橋された。建設当時に見込んでいた耐用年数は50年だ。既に、これを20年以上過ぎている。想定していた走行車両台数は1日当たり約3万7000台だったが、現在は約2.5倍の1日約9万台が通過している。橋の耐久性は限界に近づいている。
急こう配で照明、路肩がない。橋を利用するドライバーは「橋の上で渋滞にはまって止まるのだけは避けたい」と話す。
米有力旅行誌「トラベル・プラス・レジャー」は、全米の橋の安全度を調査したが、カルカシューリバーブリッジは「全米で7番目に危険な橋」だと指摘している。
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連邦政府の優先課題でありながら進まぬ架け替え連邦政府の優先課題でありながら進まぬ架け替え
一刻も早い架け替えが求められている。「大動脈」にかかる橋であることから、連邦政府も架け替えを優先課題として考えている。バイデン政権はインフラ投資の看板政策である「米国雇用計画」の中に、カルカシューリバーブリッジの架け替えのための補助金拠出を盛り込んだ。2021年5月には、バイデン大統領自らレイクチャールズを訪れている。
しかし、架け替え計画は現在、宙に浮いている。不安な思いで橋を渡った約2週間後の2023年10月24日、地元議会の両院合同委員会は現行の架け替え計画についての採決を実施し、反対多数で却下した。新しい橋になった場合、乗り入れ車両から通行料を徴収する計画だが、トラックの通行料金が高すぎると運送会社などが反発したため、保守系議員が反対票を投じた。
米国の高速道路には約61万の橋がある。連邦高速道路局によると、そのうちの約7%に当たる約4万2000の橋が劣悪な状態だという。
宿泊はカジノホテル ルーレットで15ドル儲ける
そのカルカシューリバーブリッジのたもとに、旅6日目の宿泊先となるホースシュー・レイクチャールズがあった。レイクチャールズは精製工場が立ち並ぶ石油産業の町であると共に、カジノの町としても知られている。チャールズ湖とその周辺には5つのカジノホテルがあり、観光客が集う。ホースシュー・レイクチャールズもそのうちの1つだ。
チェックインをして早速、運試しだ。受付に行ったら、以前、ニュージャージー州アトランティックシティーの同じ系列のカジノでプレイしたことがあったため、既に名前が登録されていた。
カジノで遊ぶと言ってもポーカーやスロットマシンに興じるわけではない。ルーレットで手堅く遊ぶのが好きだ。赤黒、奇数偶数などの2択にかければ勝利の確率は50%もある。子供じみた遊び方だと笑われるかもしれないが、少ない資金で散財することもなく遊べる。この日は2時間ほどで15ドル儲けた。わずか15ドルでも円安のご時勢には大きい。この日は1ドル=148円台だったので、日本円にして約2220円になった。
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広大なテキサス州に入る 和食と日系スーパーで気分転換広大なテキサス州に入る 和食と日系スーパーで気分転換
旅7日目の10月10日、再びI-10に乗り、11番目の州となるテキサス州に向かった。テキサス州はアラスカ州に次いで2番目に広い州だ。この日のうちに、どこまでテキサス州の奥に入り込めるかがポイントとなる。
大都市ヒューストンに入るとI-10は弧を描くようなカーブが多くなる。車線が増え、他の道路との合流が頻繁になる。どこまで行っても直線に進む郊外とは異なり、運転上の注意点も全く変わる。
ヒューストン中心部を通り抜け、さらに西にある州都オースティンを目指す。途中、日本人が多く住むヒューストンのメモリアル地区のレストラン、スシジンで久しぶりに和食を食べた。米国の和食店でよく見かけるすしととんかつが一緒に入った弁当にした。和食に飢えていたのか、写真を撮り忘れて食べ終えてしまった。近くに日系のスーパーマーケットがあったので、ついでにのぞいた。日本に触れて気分転換になった。
I-10からU.S.ハイウェイ183に乗って北上し、オースティンに到着した。アイフォーンの関連商品を購入するためにアップルストアを探したところ、オースティン北部のドメイン・ノースサイドというショッピングモールにあることが分かり、向かった。このモールに隣接するラキンタイン・アンド・スイーツ・オースティンに宿泊することにした。
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ステーキの本場でポークチョップにはまる 厚切りをがぶりステーキの本場でポークチョップにはまる 厚切りをがぶり
ドメイン・ノースサイドには米国の高級百貨店、ノードストロームも出店している。地方都市でアップルストアが入居しているショッピングモールは、落ち着いた雰囲気のところが多い。ダウンタウンでなくショッピングモールをホテル選びの狙い目としてきたが、アップルストアがあるかどうかというのも、宿泊地選びのさらなる目安だ。
夕食はモールに出店しているペリーズ・ステーキハウス・アンド・グリルだ。テキサス州ヒューストンの精肉店が前身で、現在はテキサス、アラバマ、イリノイ、コロラド、フロリダ、ノースカロライナ、バージニア、テネシーの8州に展開する。ニューヨークやロサンゼルスでは食べられない味だ。
ステーキよりもポークチョップを選んだ。「7フィンガーカット」という分厚く切った肉が食欲をそそる。精肉店の心意気を示すメニューだという。肉をスモークして保存しているため旨味が強い。ビーフステーキの本場はポークチョップの本場でもある。ステーキハウスでメニューを見るときは、ポークも忘れずにチェックした方がいい。