ガード固いセレブの町 公道を走ったはずも、いきなり進入規制 米国6600キロ第26回

[2024/03/03 10:00]

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 人気リアリティー番組の舞台を見たくてセレブが住む町へ。ショッピングモールの書店は漫画本が充実していた。

(テレビ朝日 デジタル解説委員 名村晃一)

 ニューヨークからロサンゼルスまで、途中いくつもの町に立ち寄りながら6600キロを走破して見えた米国のいま。毎週土曜日と日曜日に配信しています。

最終目的地のロスより西へ カラバサスは人気番組の舞台

カラバサスのショッピングモール。町の知名度を上げたリアリティー番組「Keeping Up with the Kardashians」の続編「The Kardashians」の最新シリーズのポスターがあった=筆者撮影

 カリフォルニア州カラバサスに到着したのは、旅16日目の10月19日昼過ぎだった。ロサンゼルスのダウンタウンの西北西約48キロに位置する町だ。人口は約2万3000人。旅の最終目的地としてきたロサンゼルスよりも西にあるので、物理的にこの時点で横断が完了したと自分では考えていた。ただ、ロサンゼルス周辺を走るのも旅の一環だ。レンタカーを返却するまで横断の旅は続く。

 カラバサスは高級住宅地として知られ、米国の人気リアリティー番組「Keeping Up with the Kardashians(邦題:カーダシアン家のお騒がせセレブライフ)」に出演したカーダシアン家の人々が居住していることで有名になった。3姉妹と異父の2姉妹、母親を中心に家族の生活ぶりを描いた番組で、キム・カーダシアンら家族それぞれはこの番組によって有名タレントとなり、ゴシップ記事を含めて米国の芸能メディアをにぎわす存在となった。

 番組は2007年10月〜2021年6月の14年間、NBC系のエンターテイメント専門ケーブルテレビ局の「E!」で放送された。続編の「The Kardashians」は2022年4月から動画配信サービス「Hulu」で配信されている。

家族の日常をテレビで放送 米国人の本音がわかる

「Keeping Up with the Kardashians」の撮影に向かう人気タレントのキム・カーダシアン=カリフォルニア州ウェストハリウッドで2017年3月30日、X17/アフロ

 米国ではリアリティー番組は日本より圧倒的に多く、ジャンルも幅広い。長寿番組も少なくないが、1家族の日常を追いかけたリアリティー番組としては「Keeping Up with the Kardashians」は最長寿クラスだ。セレブな生活ぶりを見てため息をつくわけではないが、米国人の本音を知るにはいい番組なので、ほとんどの回を見た。カラバサスを訪れたのは、親しんだ番組の現場を見たいという「お気楽」な思いからだ。

 町は渋滞もなく、整然としていたが、公道だと思って走っていても突然、高級住宅地に突き当り、行き止まりになってしまう。警備員がいるゲートの先には、一般人は立ち入れない。1軒の住宅をガードするのではない。区画丸ごとが進入規制されている。カーダシアン家族の居住地近くも特別な区画になっていた。

 米軍施設の近くを走ると同じような経験をするが、カラバサスの高級住宅地はプライバシー保護と安全確保のために、米軍施設と似たような形で隔離されている。

 周辺を走って不審者扱いされるのは不本意なので、近くの商業地区にあるショッピングモール、ザ・コモンズ・アット・カラバサスに入った。高級住宅地のショッピングモールだけあって、訪れる人たちの身なりは、どことなく洗練されているような気がした。

にごり酒飲みながらすしをつまむ白人カップルも

シュガーフィッシュ・バイ・スシ・ノザワは満席だった。入店まで30分ほど待った=筆者撮影
握りは小ぶりだった=筆者撮影

 米国のすしブームの中で、特に人気の高いシュガーフィッシュ・バイ・スシ・ノザワがあったので、ここで昼食をとることにした。日本人が経営するすし店だ。ロサンゼルスやニューヨークに20近くの店がある。手が出ない価格ではないので、少しぜいたくな昼食を楽しむことにした。

 平日のランチタイムが過ぎた時間帯だが店内は満席だった。地元住民が多いようだ。にごり酒を飲みながらすしをつまむ白人カップルの姿もある。

 すし店の「おまかせ」は今や英語でも「Omakase」で通じるが、この店では「Trust me(私を信じて)」とメニューに書かれている。

 握りが小ぶりだったので満腹にはならなかったが、健康のために「腹八分目」を実践して店を出た。

苦境の書店を漫画が救う ずらり日本作品

書店の漫画コーナーには「Manga」の文字が=筆者撮影
漫画コーナーは店内のかなりのスペースを占めている=筆者撮影
平積みになっていた原爆関連の書籍=筆者撮影

 ショッピングモールには大型書店があった。米国最大の書店チェーン、バーンズ・アンド・ノーブルだ。電子書籍の普及などで経営が悪化し2019年にヘッジファンドに買収されたが、新型コロナで書籍の購入が増え、息を吹き返してきた。その原動力となったのが漫画だ。日本の作品を中心に、ここ数年、米国では漫画人気が高まった。現在も市場は拡大傾向にある。

 このショッピングモールの店舗にも大きな漫画売り場があった。壁沿いにずらっと英訳された漫画本が並ぶ。「Omakase」と同じように「Manga」も英語で通じる。売り場にも「Manga」の文字が踊っている。

 バーンズ・アンド・ノーブルは約600店を全米に展開しているが、ここ数年、漫画売り場を拡大した。2023年3月には、漫画を購入すると2冊目を半額にするキャンペーンを実施し、米国の漫画ファンを興奮させた。

 カラバサスの店には、原爆開発を主導した物理学者の伝記映画「オッペンハイマー」のヒットを受けて、広島、長崎への原爆投下についての本が平積みされていた。日本をめぐる書籍が書店の「目玉商品」になっていた。

最後の夜はしんみりしたい 華やかさより「通好み」がいい

インターステート405(I-405)沿いにあるスペイン語放送局ユニビジョンの施設。米国内だけでなく中南米の放送局とも提携し、広くオリジナル番組を放送している=筆者撮影
パラボラアンテナがいくつも並んでいる=筆者撮影

マンハッタンビーチのスーパーの入口に並ぶカボチャ。ハロウィーン直前だったので大々的に販売されていた=筆者撮影
売られているカボチャの種類も豊富だ=筆者撮影

 カラバサスを出てインターステート405(I-405)を南下してロサンゼルス市内に入った。I-405は太平洋に近い市の西側を走っている。ダウンタウンはぐんと東側にあるため今回は立ち寄らなかった。

 旅最後の宿は、ロサンゼルスの西側に隣接するマンハッタンビーチのベストウエスタン・プラス・マンハッタンビーチにした。ロサンゼルス近郊の海岸沿いの町と言えば華やかなサンタモニカが有名だが、ロサンゼルス国際空港(LAX)を挟んで南にあるマンハッタンビーチは「通好み」の町だ。静かでリラックスできる。旅の終わりはしんみりといきたい。

  • カラバサスのショッピングモール。町の知名度を上げたリアリティー番組「Keeping Up with the Kardashians」の続編「The Kardashians」の最新シリーズのポスターがあった=筆者撮影
  • 「Keeping Up with the Kardashians」の撮影に向かう人気タレントのキム・カーダシアン=カリフォルニア州ウェストハリウッドで2017年3月30日、X17/アフロ
  • 店内は満席。入店まで30分ほど待った=筆者撮影
  • 握りは小ぶりだった=筆者撮影
  • 書店の漫画コーナーには「Manga」の文字が=筆者撮影
  • 漫画コーナーは店内のかなりのスペースを占めている=筆者撮影
  • 平積みになっていた原爆関連の書籍=筆者撮影
  • インターステート405(I-405)沿いにあるスペイン語放送局ユニビジョンの施設。米国内だけでなく中南米の放送局とも提携し、広くオリジナル番組を放送している=筆者撮影
  • パラボラアンテナがいくつも並んでいる=筆者撮影
  • マンハッタンビーチのスーパーの入口に並ぶカボチャ。ハロウィーン直前だったので大々的に販売されていた=筆者撮影
  • 売られているカボチャの種類も豊富だ=筆者撮影

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