「バブルガムピンク」のダイナーで郷愁のアイスクリームを食べる 米国6600キロ第21回

[2024/02/17 10:00]

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 日曜日の夜、リゾートホテルは空いていた。真夏のような昼間のほてりをさますため、バーのテラスでフローズン・マンゴーマルガリータを飲んだ。

(テレビ朝日 デジタル解説委員 名村晃一)

 ニューヨークからロサンゼルスまで、途中いくつもの町に立ち寄りながら6600キロを走破して見えた米国のいま。毎週土曜日と日曜日に配信しています。

広大な敷地にコテージが点在 リタイア組が元気に働く

スコッツデール・プラザ・リゾート。敷地が広大なため部屋からレストランやバー、フロントに行く場合は、電話でカートを呼ぶことができる=筆者撮影

 横断12日目、10月15日の宿はアリゾナ州スコッツデールのスコッツデール・プラザ・リゾートにした。広大な敷地の中に平屋のコテージが点在するリゾートホテルだ。日曜日の夜だったので旅行サイトでは値ごろな価格になっていた。

 部屋の前に車を止めた後のホテル内の移動は、専用カートを利用しないとフロントに行くにもかなりの距離を歩かないとならない。宿泊客が少ないと、ホテルの広大さが一層、際立つ。

 ホテルの車両エントランスでは、シニア世代のスタッフが待ち構えていた。ホテル内を見渡すと、高齢の従業員が多いことに気付いた。

 全米5番目の都市であるフェニックスに隣接するスコッツデールは「フェニックス経済圏」の一翼を担う。メキシコからつながるソノラ砂漠内に位置するため、年間の平均気温は摂氏22.9度、365日のうち314日は晴れるという恵まれた気候だ。このため高級住宅地や観光ホテルが次々に開発され、町は急速に発展した。

 「フェニックス経済圏」の人口は480万人に迫る。フェニックスだけをみても10年前と比べた人口増加率は10%を超えている。

 それでもニューヨークやロサンゼルスなどに比べて住宅価格は割安なため、定年後の居住地として、この地に移り住む米国人は多い。年齢の垣根を超えて仕事に励むスタッフが多いのは、このためだ。

割安な住宅価格 「フェニックス経済圏」の人口増を支える

スコッツデールの夕日。砂漠なので夜になると急速に気温が下がる=筆者撮影

 夕食をとるために、ホテルの向かいにあるショッピングモール内にある和食店スシセンに行った。日本人スタッフがいる和食店だったので、久しぶりに日本酒を注文し、揚げ出し豆腐をつまみに飲んでいたら、日本語が聞こえてきた。

 「フェニックス周辺なら、2000万円ぐらいでベッドルームが2つある住宅が買えるわよ」

 近くのテーブルで会食していた、現地在住らしい日本人女性の声だった。リタイア組のホテルスタッフと話し、周辺の住宅事情が気になっていたので、その場でスマートフォンを取り出して不動産サイトを開いてみた。価格に大きな幅はあるものの、確かに日本円で2000〜3000万円台や、もう少し安い価格の2ベッドルームの物件はそれなりに掲載されていた。

 このところの円安を考えると割高になるが、この女性の話はあながちオーバーなものではなかった。「フェニックス経済圏」は住みやすい環境にあるようだ。

星空に誘われてテラスでもう1杯 砂漠の夜は気温急落

ミキサーではフローズン・マルガリータは少量ずつしか作れない。1970年代にテキサス州ダラスのレストラン経営者がソフトクリームマシンを使って作ったところ、均一で大量のフローズン・マルガリータができ、現在の専用機器の開発につながったとされる=筆者撮影

 夕食は済ませたが、せっかくのリゾートホテルなのでバーに立ち寄った。この旅ではお決まりとなったマルガリータを注文した。昼間は暑かったため冷たい酒を飲みたいと思っていたので、フローズン・マンゴーマルガリータにした。

 夜空の星に誘われて外のテラス席で飲んだが、ここは砂漠地帯だ。夜は気温がぐんと下がる。フローズンドリンクで身体が冷えてしまった。

午前の日差しはキラキラ 新鮮な気持ちで町を散策

スコッツデールの旧市街。日差しは強かったが、日よけのひさしの下は涼しい風が吹き抜けていた=筆者撮影
靴下専門店には個性的な商品が並ぶ。トランプ前大統領の靴下も=筆者撮影

 夜が明け、旅13日目の10月16日を迎えた。この日も快晴だった。早めにホテルを出て、スコッツデールの旧市街に向かった。午前中の日差しは、午後よりもキラキラとしている。この旅で午前中に町を散策することは少なかったので新鮮な気持ちだった。

3代目が切り盛りする老舗の「温かくて冷たい」スイーツ

「バブルガムピンク」が基調の店内=筆者撮影
シュガーボウルの人気メニュー「トップハットサンデー」=筆者撮影
米国のダイナー(食堂)は、日本と同じようにレジで支払うのが一般的だ=筆者撮影

 目当ての店が一つあった。アイスクリームが評判のダイナー(食堂)だ。シュガーボウルは1958年のクリスマスイブに創業した。家族経営で、現在は3代目が切り盛りしている。

 外観も内装もピンクが基調だ。風船ガムの色に似ているので「バブルガムピンク」と言われている。バーカウンターからボックスシートまで、昔ながらのダイナーの姿がそのまま残っている。

 一番人気は「トップハットサンデー」と呼ばれるメニューで、野球ボールサイズのバニラアイスクリームが入ったシュークリームに、温めたブラックチョコレートがたっぷりとかかっている。甘さの種類の違いだけでなく、温度の違いが食べる楽しみを何倍にも広げてくれる。

 俳優のジョン・トラボルタや元プロボクサーのマイク・タイソン、映画監督のスティーブン・スピルバーグはこの店の常連だという。

 店の出入口には、かわいらしいレジカウンターがあった。米国の一般的なレストランはテーブルで支払いをするが普通だが、ダイナーでは日本と同じように伝票をレジに持って行って支払うのが主流だ。

 米国にはチップを払う習慣がある。テーブルで支払う場合は、現金にしてもクレジットカードにしても、単純に支払い額に上乗せすればいいのだが、ダイナーの場合はレジではチップを受け取らない。レジに立つ前に、テーブルに現金でチップを置いておく必要がある。米国のレストランでの支払いの方法は意外と複雑だ。

富裕層向けのモールで「目の保養」 バーガー店にほっとする

スコッツデール・ファッション・スクエアにあるテスラのショールーム=筆者撮影
展示されていたテスラの車内=筆者撮影

 スコッツデールには、富裕層向けの高級ショッピングモールがある。「目の保養」になるだろう思い、スコッツデール・ファッション・スクエアというモールに立ち寄った。ブランドショップだけでなく、高級車のショールームがいくつもあった。富裕層はブランド物の服飾品を買う感覚で車も買うのだろうか。

 何を見ても手が届かないものばかりだったが、フードコートを見付けてほっとした。お気に入りのハンバーガーチェーン、ファイブガイズがあった。レギュラーのハンバーガーでも肉が2枚入っている。ファイブガイズは、どの店舗でもピーナツが無料で食べ放題だが、庶民派の存在がうれしくてハンバーガーに夢中になり、ピーナツを取るのを忘れてしまった。

10月として最高の41度 車の温度計はもっと高く44度

10月なのに連日の猛暑だ。車の温度計はこの日、華氏111度(摂氏44度)を表示していた=筆者撮影

 この日も気温はぐんぐん上がった。車に戻り、フェニックスをドライブしていたら、車の温度計は華氏111度(摂氏44度)になっていた。米国立気象局によると、この日のフェニックスの最高気温は華氏105度(摂氏41度)。2020年の記録を上回って、10月の最高気温を観測した。

  • スコッツデールとフェニックスをドライブする。旅13日目。午後3時ごろまでの走行距離は105キロ。
  • スコッツデール・プラザ・リゾート。敷地が広大なため部屋からレストランやバー、フロントに行く場合は、電話でカートを呼ぶことができる=筆者撮影
  • スコッツデールの夕日。砂漠なので夜になると急速に気温が下がる=筆者撮影
  • ミキサーではフローズン・マルガリータは少量ずつしか作れない。1970年代にテキサス州ダラスのレストラン経営者がソフトクリームマシンを使って作ったところ、均一な、多くのフローズン・マルガリータができ、現在の専用機器の開発につながったとされる=筆者撮影
  • スコッツデールの旧市街。日差しは強かったが、日よけのひさしの下は涼しい風が吹き抜けた=筆者撮影
  • 靴下専門店には個性的な商品が並ぶ。トランプ前大統領の靴下も=筆者撮影
  • 「バブルガムピンク」が基調の店内=筆者撮影
  • シュガーボウルの人気メニュー「トップハットサンデー」=筆者撮影
  • 米国のダイナー(食堂)は、日本と同じようにレジで支払うのが一般的だ=筆者撮影
  • スコッツデール・ファッション・スクエアにあるテスラのショールーム=筆者撮影
  • 展示されていたテスラの車内=筆者撮影
  • 10月なのに連日の猛暑だ。車の温度計はこの日、華氏111度(摂氏44度)を表示していた=筆者撮影

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