涙の誓い「我々はやる」古田敦也が見たダイヤモンドバックス快進撃のウラ側

[2023/11/05 20:27]

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メジャーリーグ・ワールドシリーズ(WS)は22年ぶりの頂点を目指すダイヤモンドバックスと球団史上初の世界一を狙うレンジャーズの戦いが繰り広げられた。
レンジャーズ本拠地テキサスでの試合を1勝1敗のイーブンで終え、舞台はダイヤモンドバックス本拠地アリゾナ・チェイスフィールドへ。
ダイヤモンドバックスで臨時コーチを務めた野球解説者・古田敦也氏が現地取材を行った。
(11月5日放送「サンデーLIVE!!」より)

臨時コーチとして参加した今年2月の春季キャンプ以来のアリゾナ訪問となった古田氏はチェイスフィールドに到着すると、「まさかここで試合が見られるとは」とうれしさを口にした。WBC(3月)、オールスター(7月)に続いて今年4度目の訪米に「今年こんなにアメリカに来ることになろうとは。いろんなまさかがあるけど、これが一番のまさか。まさかダイヤモンドバックスがワールドシリーズにいくとは」と驚きを語った。

■快進撃の裏にロブロ監督“日本流”

2001年にワールドシリーズを制したダイヤモンドバックスだが、ここ数年は成績が低迷。
2021年にはシーズン110敗を喫し、西地区最下位に沈んでいた。
そんなチーム状況の中、今年は古田氏が臨時コーチとしてキャンプに参加。
きっかけは1年間ヤクルトで共にプレーしたロブロ監督からの直々のオファーだった。
日本流の緻密な野球を目指すロブロ監督に古田氏も一役を買って出た。ロブロ監督は先月29日(日本時間)の会見で「今年のチームはスピードがあり盗塁が好きな選手が揃っているからそれに合わせてマネジメントしている。バントを仕掛ける練習もしている。日本で学んだことはメジャーでもたくさん生かされている」とチームの方針について話した。

ロブロ監督が日本で学んだスモールベースでダイヤモンドバックスは今年、古田氏も予想だにしない快進撃を見せた。
今季メジャー最多の36犠打、盗塁数もメジャー2位となる166を記録しナ・リーグ西地区2位(ワイルドカード3位)でポストシーズンに進出。ワイルドカードシリーズを勝ち抜き、同地区1位のドジャースと地区シリーズを争った。
ドジャースのベンチ入り選手の年俸総額は約260億円、ダイヤモンドバックスは約109億円とその差は2倍以上。レギュラーシーズンでは16ゲーム差をつけられた相手だが、3連勝を飾り次のステージに駒を進めた。
続く相手のフィリーズはドジャースを上回る年俸総額339億円、2度のシーズンMVPを誇るハーパーや昨季ホームラン王のシュワバーなどスター選手を数多く擁している。
リーグ優勝決定シリーズでは、先に王手をかけられたダイヤモンドバックスだが、第6、7戦は敵地で2連勝、逆転でワールドシリーズ進出を決めた。
この快進撃について古田氏は「パワーが重視されるメジャーのチームが多い中、足を使って若い選手が躍動しているチーム。総力戦で勝ち上がった」とチームを評価した。

春季キャンプ以来に再開したロブロ監督

先月30日、練習日にチェイスフィールドを訪れた古田氏にロブロ監督は「フルタサン!」と気さくに声をかけ呼び止め、「もう少し早く来てくれなくちゃ」と笑いかけた。また古田氏がダイヤモンドバックスの帽子を愛用していることに触れ、「東京でファンを作ってくれているのか?」とたずねると古田氏は、「少しずつ増えているよ、俺しかファンと言っていないけど」と冗談を交し合った。

■本拠地潜入 ファンも選手も大興奮

チェイスフィールド名物のホットドッグ

先月31日、ワールドシリーズ第3戦を前にチェイスフィールドは盛り上がりを見せていた。ダイヤモンドバックスファンの親子に古田氏が話を聞くと「もちろん」と勝利を疑っていない様子だった。
試合開始前、球場グルメを食べてみたいとのことで古田氏が注文したのがホットドック。「ソーセージにベーコンが巻いてある、これでもかってぐらいいろんなものがかかっている。ガツンとくる、でもおいしい」と球場名物を堪能した。

ナ・リーグ新人王最有力のキャロル

試合を前にグランドに降りて取材を行うと、チームスタッフに日本人の姿があった。マニュアル・セラピスト兼トレーナーの谷沢順子さん、父は元中日で活躍、通算2062安打を放った谷沢健一さんだ。古田氏がチームの調子を聞くと「ベテランも結構打ちまくっているので、いいチームです」と答えた。
大半の選手が初のワールドシリーズとなるダイヤモンドバックス、今季17勝を挙げたギャレンは「感情的にはジェットコースターのようだ」と興奮を語った。
新人王最有力候補のキャロルも古田氏の質問に「とても興奮している。一生懸命やって試合に出る準備をするよ」と答えた。

■負けられない!古田も見守った第5戦

第3戦2ランHRを放つレンジャーズ・シーガー【写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ】

4万8000人を超えるファンが詰めかけた第3戦、本拠地で勝利を届けたかったダイヤモンドバックスだが、2020年ワールドシリーズMVP、レンジャーズのシーガーに2ランホームランを浴びるなど、試合に敗れ1勝2敗に。
続く第4戦もシーガーに2ランを許すなどレンジャーズに王手をかけられた。
そして、もう負けられない第5戦。
試合前、ロブロ監督が真っ先に古田氏にたずねたのは、ここまでポストシーズン16試合6ホーマーのシーガーと勝負すべきかどうか。この問いに古田氏は「ウォーク(敬遠)だね」と答えた。それを受けロブロ監督は「速球は厳しいコースに、低めのゴロで打ち取る」とシーガー対策を口にした。

第5戦に先発 今季17勝のギャレン【写真:AP/アフロ】

ダイヤモンドバックスの先発はこのシリーズ2度目のマウンドとなるギャレン、シーズン17勝のエース対強打者シーガーの対決は1回に早速やってきた。外角のチェンジアップでショートゴロに抑え、見事シーガー対策に成功した。
序盤から得点圏にランナーを進めていたダイヤモンドバックスは3回もノーアウト1,2塁と大きなチャンスを作った。続く3番モレノが自らの判断で送りバントを決め1アウト2,3塁とさらにチャンスを広げた。しかしポストシーズン4勝のレンジャーズ・イオバルディが踏ん張り無得点。ダイヤモンドバックスのギャレンも6回までノーヒットピッチングの好投、7回には2番シーガーとこの日3度目の勝負。ここでも外角へのナックルカーブでゴロを打たせるが、守備シフトで右側に寄っていたサードの横を抜かれ、初ヒットを許すと、その後3、4番と3連打でレンジャーズに先制点を奪われた。
試合は1点差のまま9回、ダイヤモンドバックスは再びノーアウト1,2塁のピンチを迎えるとレンジャーズのハイムがセンターへのタイムリーヒット、さらにエラーが絡み2点を許した。その後、セミエンからも2ランホームランを浴び5-0で試合終了。
快進撃を続けたダイヤモンドバックスのワールドシリーズは1勝4敗で幕を閉じた。

一方、レンジャーズはポストシーズン、敵地で11連勝、球団初の世界一に輝いた。
MVPはシリーズ3ホーマーのシーガーが自身2度目の受賞となった。

WS初制覇のレンジャーズ【写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ】

■快進撃へ導いたロブロ監督 涙の誓い

来季も臨時コーチをオファー【写真/2月 春季キャンプにて】

試合後、会見に臨んだダイヤモンドバックス・ロブロ監督は「今年、本当に素晴らしいことをたくさんやってきたと自分たちに言い聞かせようと。ポストシーズンを通じて本当に楽しい乗り物に乗ったようだった。役割を果たしきれず申し訳ない、でも私はやる。我々はやる」と涙ながらに雪辱を果たすことを誓った。
そして盟友・古田氏との別れの際には「また来年のキャンプに来てくれるかな」とオファーを出し、古田氏も「OK」と快諾した。

  • ナ・リーグチャンピオンとなったDバックス【写真:AP/アフロ】
  • 春季キャンプ以来に再開したロブロ監督
  • チェイスフィールド名物のホットドッグ
  • ナ・リーグ新人王最有力のキャロル
  • 第3戦2ランHRを放つレンジャーズ・シーガー【写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ】
  • 第5戦に先発 今季17勝のギャレン【写真:AP/アフロ】
  • WS初制覇のレンジャーズ【写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ】
  • 来季も臨時コーチをオファー【写真/2月 春季キャンプにて】

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