池江璃花子、松岡修造に明かした“ネガティブ璃花子”の存在「邪魔してくるんですよ」

報道ステーション

[2024/03/27 16:19]

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池江璃花子選手が、闘病後初めてプールに入ることができた時の写真には「2024年のパリオリンピック出場」と直筆で目標がつづられていました。そして24日まで行われていたオリンピック選考会で見事、有言実行。個人種目100メートルバタフライでパリへの切符をつかみ取りました。

■悔しさにじむ言葉…松岡さんが前向きにとらえた理由

24日、オリンピック代表選考会終了直後、松岡修造さんが池江選手に話を聞きました。

松岡さん
「パリ五輪出場おめでとうございます」
池江選手
「ありがとうございます」
松岡さん
「今、どんな思いですか?」
池江選手
「正直、まだ実感はわいてないです。6、7割悔しい。3、4割うれしい。正直言うと、多分みんなが驚くようなタイムを出せたはずで。こんな結果で終わってしまったのが、すごく悔しかったです」
松岡さん
「今の話を聞いていると、ある意味前向きに聞けるなと思った。技術的な部分とか、メンタル的な部分が修正できたら速くなると思っているということ」

悔しさをにじませた池江選手の言葉を、松岡さんは前向きにとらえていました。

その理由は、去年5月、病気から復帰後初の海外遠征に臨んでいた池江選手から、こんな言葉を聞いていたからです。

池江選手
「やっぱり、まだ世界に戻れてはいないと思って。自分の弱さに対しての悔しさより、むなしさ。2018年にヨーロッパグランプリに来た時は、あんなに勝ってMVPまで取っていたのに、たった一つの大きな出来事のせいで、何も勝てなくなるんだっていう。そっちの方のむなしさが、今回すごく強くて」

かつては泳ぐ度に日本記録を更新し、世界ランキング1位になった池江選手。病気の前と今を比較してしまうことで、苦しんでいたのです。

■目標が重荷になるほど…追い込まれた時期も

松岡さん
「うまく泳げない時とか、練習できない時って、これは仕方ないことって捉えかたをできたはずなんですよ」
池江選手
「練習が楽しい、好きという気持ちは変わらなかったんですよ。だけど『やっぱり試合に出たくない』っていう気持ちが強くて。全く活躍できないとか、結果が出ないのはすごく恥ずかしい気持ちにもなった。期待をしないでほしいっていう。期待されても、結果が出ないことで、残念がられているんじゃないかなという自分もいて」

パリオリンピックという目標が重荷になるほど、池江選手は追い込まれていました。

さらには、6年ぶりに出場した世界水泳でも思い通りの結果は出ません。

去年10月、心機一転を図り、練習拠点をオーストラリアに移した池江選手。そこで、ある出来事がありました。

■もう一人自分…「ネガティブ璃花子」の存在

池江選手
「オーストラリア行ったばっかりの時の話なんですけど、(練習で)頑張ったはずなのに、頑張ったって褒めてあげられなくて、自分のことを」
松岡さん
「頑張ったからいいじゃないですか」
池江選手
「『頑張った』で終わりでいいのに、そのあとに『何を頑張ったの?どこを頑張ったの?言ってみて?』っていう、もう一人自分が出てきて」
松岡さん
「なんですか、そいつは」
池江選手
「邪魔してくるんですよ。私の頑張ったっていうことを。それで、悔しくて泣いていたんですよ」
松岡さん
「それは、“なに璃花子”ですか?」
池江選手
「ネガティブ璃花子が出てきて。すると今度はコーチたちが、すごい褒めてくるんですよ。『きょう、良かったな』って。それでまた『どこが?』ってなっちゃって。そうしたら、なんで頑張ったのかっていう理由をちゃんとコーチたちは説明してくれるんですよ」

そんなオーストラリアでの練習の日々が、少しずつ池江選手の心をほぐしていきました。

池江選手
「(もう一人の自分が)完全に消えてはいないが、『頑張ったじゃん』って思って黙っている、ちょっと出てきそうになるんですよ。だけど、そこを自分で抑えつけてコントロールしている。あまり、この言葉は使いたくないけど、自信をちゃんとまたつかむことはできているかなと思います」

■池江選手「強くなれます、私は絶対」

徐々に自らを肯定できるようになり、迎えた先週のオリンピック代表選考会。100メートルバタフライで、復帰後最速のタイムを叩き出し、オリンピックの代表権をつかみとりました。

松岡さん
「『試合に出たくない』という思いがあった。今、オリンピックには出たい?」
池江選手
「楽しみです。『どれだけ速く泳げるんだろう』って、また。苦しい思いや悔しい思いをして、パリ五輪が決まったとは言っても、決まっただけなので。この先がすごく大事になってくる。昔の自分をもう一度超えられるような。言うのは簡単なので、言ってもいいかなと思って。強くなれます、私は絶対。日本記録だって目指しているし、目指すのは自由。目標や夢を持つのも自由なので。その目標とか夢に向かって、もう一回でいいから、全力でやってみようよっていう。そういう気持ちです」

(「報道ステーション」2024年3月26日放送分より)

  • 写真:YUTAKA/アフロスポーツ

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